第百八十五話 夏の大戦乱祭編(16) 逸物の絆
次々と戦場に響く男子生徒のけたたましい奇声。浅瀬の川で脱力して倒れる者、抵抗むなしく服を脱がされ半裸で倒れる微食会の同士たち。
このままでは壊滅の可能性がある中、
微食会幹部近藤尚弥は、昼休みの停戦まで劣勢の原因であるガチムチ部の主将ベリー・レリフソンと対峙していた。
近藤「おいベリー!なに六組に加担してるんだよ!」
ベリー「あぁん?尚弥か、お前最近だらしねぇな?」
近藤「そのキャラはいいから答えろ。」
ベリー「‥こほん、プロテインと筋トレ用具の見返りだ。」
近藤「っ、物で釣られるとは‥お前も相当だらしねぇな?」
ベリー「ふっ、言っていろ‥。それに、お前には"ガッポイ"の借りがあるからな。」
それは一年前のこと。
裸の打ち合いでは天下無敵と言われたベリー・レリフソンを倒そうと言う、男子の間で一時注目されていたイベントがあった。
多くの男たちが彼に挑むも返り討ちに合い、
無様に奇声や悶え声を上げる男子の姿を見て、多くの男子を盛り上げていた。
だがそんな時、当時観戦程度で楽しんでいた近藤が前に出されると、なんと小学生の頃に流行った"ガッポイ"術が火を吹き、今や名シーンとなった"アァァーッ!"っと言う、けたたましい奇声が一年棟を響かせた。
この敗戦からベリーを倒せる者は、数える程度であるが現れ始めたのだった。
いわばベリーに取って近藤は因縁の相手。
つまり近藤が負けた際は、立ち直れないくらいの仕返しが来るであろう。
近藤「ふぅ、まあいい‥、来るならさっさとかかってこいよ。」
ベリー「ふっ、いくぜぇ!植え付けを行う!」
近藤「相変わらず空耳が卑猥だな!」
昼休みまで残り二十分、
人生のプライドをかけた一騎討ちが始まった。
二人は円を書く様に回り、
相手の同行を探った。
時間稼ぎ目当ての近藤に取っては、
都合が良い物であった。
近藤「‥‥(相変わらず隙のない男だな)。」
ベリー「そりゃぁ!」
突然ベリーがタックルを仕掛けて来ると、
直人は交戦せずにひらりと交わす。
しかし、ベリーはすぐに体勢を変え近藤を追尾する。
近藤は、一回、二回、三回と避けるが、
それに対してベリーのスピードも徐々に上がり飛び回り始めた。
近藤「くっ、最初に決めるべきだったか‥。」
目で追えないくらいの俊足に比例して、
自らの危機を感じる。
こういうパターンは大半は後ろから攻めてくるのが鉄則。二秒近く動かないで直ぐに後ろを向いて攻撃しよう。
一、二‥。
近藤「ここだ!げはっ!?」
振り向こうとした瞬間、まさかの正面タックルを食らった。
近藤はそのまま勢いよく押し倒された。
この光景を見た微食会の男たちはこぞって合掌した。
近藤「くっ!力つえぇ‥。」
左腕と胴体をがっちりホールドされた。
幸い右腕はホールドされず、必死に抵抗するが、
ベリーは、全く怯む素振りを見せない。
近藤は咄嗟にベリーのブリーフに手を伸ばそうとする。
対してベリーは服を破こうとしている。
"ビリビリ"と破ける音は恐怖を掻き立てさせ近藤を焦らせる。
ここで小話。
一見、如何わしい事が起こる様に見えますが、
実際ベリーは、駄犬ジェルドとは違って男のケツに興味はなく、むしろ体を密着させる戦いを好むだけで、一応安全圏に属する人物である。
しかし、最後にトドメを刺す時に問題があり、相手に敬意を払う行為で、男子のチ○○○を握ると言う余計な行為があることは玉に瑕である。玉だけに‥、
近藤「くっ!も、もう少し‥。」
ブリーフまで、あと二センチ。
ベリー「おぉ~!あうっつ‥はぁはぁ。」
近藤「お前変な声出すな!?この!」
大袈裟な声を出すベリーに恥ずかしくなり、
勢いよくブリーフに手をかけ引っ張った。
ブリーフはケツの谷間に食い込み、
ほぼ丸見えの状態であった。
するとベリーの聞いたら忘れない奇声が響いた。
ベリー「アァァーッ!おぉ~う、あぁ~。」
ブリーフを引っ張れば引っ張るほど悶え苦しむ声を上げ、ベリーのホールドは緩んでいった。
その隙に抜け出すわけだが、
直ぐに逃げればいいのにプロレスみたいに絡み始めた。
本間「うわっ、始まったぞ‥。」
渡邉「と言うことは、勝ったのか?」
本間「まあ、一応は‥。」
本間が双眼鏡で様子を見ていると、
そこへお裾分け作戦で出陣した大西と星野が到着する。
大西「よう二人とも戦況はどうだ?」
渡邉「あぁ、雷音と仁くんか、今は尚弥がベリーを抑えてるところだ。」
星野「ベリーと!?そ、そうか、また調子に乗り過ぎなきゃいいけどな。」
大西「でも、あの二人が取っ組み合うなんていつものことだろ?」
本間「それはベリーが"オフ"の時だよ。さすがに、戦闘モードのベリーを相手する奴はいないよ。」
大西「それもそうか。」
渡邉「それはそうと、二人はこれからお裾分け作戦か?」
星野「あぁ、これから迂回して六組にこれを届ける予定だ。まあ、心苦しいけどな」
本間「‥今更だけど、これを女子にも飲ませるとなると罪悪感があるな。」
本間の一言で幹部たちは思い止まる。
確かに、高貴で生意気な者はいるが‥、清楚で可憐な良い子に"これ"を飲ませるとなると気が引ける。そのため一工夫が必要だと考えるのだった。
渡邉「‥仁くん、魔法で男子だけ飲めれるようにできないか?」
星野「ま、また都合の良い注文だな。そうだな‥うーん、限定式使用術を水筒にかければ、女子が飲むことは防げるけど‥。全部かけるとなると‥今日分の魔力が空になるな。」
無駄に魔力を費やす魔法であることに、
幹部たちは唖然とする。
渡邉「すげぇ、燃費悪いな。」
本間「ちなみに、一本だけでもどれくらい魔力を食うんだ?」
星野「‥そうだな、ファイアーボール十回分くらいを基準にして‥、水筒が五十個‥うん、五百回分だな。」
まさかの数字に唖然から驚愕へと変わる。
渡邉「本来なら却下するところだけど‥罪のない女子を泣かせる分けにはいかない。背に腹は変えられない‥か。」
大西「攻撃魔法よりコスト高いってどう言うことだよ‥。」
本間「‥多分限定にして細かくするからダメなんだろうな。」
四人がそうこう話していると、
昼休みを告げる休戦合図の花火が鳴り響いた。
四人は急いで、お裾分け作戦に取りかかった。
結局、ベリーと近藤の一騎討ちは勝負が着かず、やや近藤優勢で一幕を下ろした。
午前中までの戦局について、
魔紅軍は再編した第一部隊、ジェルド、ギール、率いる部隊は、六組の藤原志道率いる部隊と交戦。
第二部隊、孔真、京骨、ルシアの部隊は、三人の逃亡者の捜索兼長斉橋の守りについていた。
壊滅状態の士道部第三部隊に、葵、シェリル率いる第二部隊が援軍に駆けつけるが、大きな戦闘が起きる前に停戦。
スザクは麗羅、椿と共に本陣に留まり、今回の件で憤りを感じた三条晴斗は、徹底した指揮のもと周辺の強化、三人の逃亡者の捜索に打ち出した。
微食会では、二方面攻略にやや有利に進攻している。しかしそんな時、総大将であるエニカは退屈のあまり出陣しようと、こっそり計画を企てていた。
六組軍は、二部隊に分けて攻撃をしかけていた。
志道率いる一部隊は、魔紅軍と交戦。
二条、三条率いる公家衆とベリー率いるガチムチ部は微食会と交戦した。
いよいよ、大戦乱祭も後半戦。
その前にお昼休みをどうぞ。