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第百八十一話 夏の大戦乱祭編(12) 愚劣な影

少し時を戻すこと数十分前。


各軍が激しく交戦する中、魔紅軍第三部隊は桃馬たち率いる第二部隊の優勢の報告を受け士気が上がっていた。


ジェルド「まさか、シャルの狙いが当たるとはな。」


小頼「いや~♪さすがシャルちゃんだね♪もしかして策士としての才能が開眼してるとか~。」


ジェルド「そうかもな。‥ぅぅ、なあ、小頼?そろそろ継丸を離したらだうだ?」


小頼「ふぇ?」


継丸「んんっ~♪」


さきほどから純粋ショタである継丸を抱き締めつつ、楽しそうにする小頼に少し嫉妬するジェルドであった。


ジェルド「うぐぅ‥そ、そんなにショタが良いのか‥な、なら‥え、えぇい!」


負けじと見事な"けも耳"ショタへと姿を変えると小頼に抱きついた。


小頼「ふへぇ~♪ジェルド~♪もしかしてジェラってるの~?」


ジェルド「う、うるしゃい‥、黙ってもふれ。」


小頼「はいはい♪ジェルドは甘えん坊だね~♪」


継丸「じーー、」


小頼に頭を撫でられ、嬉しそうに尻尾を振るジェルドに対して継丸は、冷めた目でジェルドを見つめた。



ほのぼのしく思える光景にまわりの同士たちは、呆れながらも微笑んだ。


しかし、その裏ではそれを嘲笑うかのように、不吉な黒雲が迫っていた。




孔真「‥何だと‥。」


男子「お話の通りです‥。麗羅を助けてほしかったら‥こちらに寝返ろ。なに、大人しく従えば悪いようにはしない‥。」


孔真「っ!信用できるか!」


激昂する孔真は男子生徒の胸ぐらを掴む。


男子「私を殴るのも手打ちにするのも構いませんが‥麗羅がどうなっても知りませんよ?」


孔真「っ、くっ‥卑劣な。」


男子「あまいですね。それより彼女に張らした式を律儀に解除してくれた陰で、色々と手間が省けましたよ。」


孔真「‥くっ、俺にどうしろと。」


男子「ですから、話した通り‥裏切ってくださいよ。船着き場から我らを導き‥そしてこの連合軍を取り込み大戦乱祭を制する。簡単なことですよ。」


孔真「‥‥くっ‥ぜってえ‥許さねえからな‥。」


男子「くくく、では‥船着き場の解放を合図に我らも動きます。三十分以内にご決断ください。では‥。」


男子生徒がそう言い残し去って行くと、

孔真は握り拳を作り自分の頬を殴った。


孔真「‥くそ‥俺は、何のために‥修行してきたんだよ。」


どうすることもできない事とは言え。

麗羅と離ればなれになるべきではなかったと後悔するのだった。




その後、第二部隊の後退と六組の反抗、両津直人率いる士道部の進攻の知らせが入ると戦局は一変。劣勢とはいかないが均衡状態へとなった。


シャル「ふむぅ‥まさか中央から士道部が攻めてくるとは予想外なのだ。」


ディノ「しかし妙ですね?攻めるならこの長斉橋(ちょうせいばし)から攻めれば良いはずなのに、わざわざ中央の大黒谷(だいこくだに)に向かうなんて‥。」


豆太「そうですね。奇襲と言っても‥下手をすれば六組と交戦してしまうリスクもあります。私なら、下流の船着き場を攻めますけど‥。」


血迷った暴走とも言える謎の行動に、魔紅軍司令部では頭を抱えた。


しかしシャルはこの機に、第一部隊を分ける事にした。


シャル「よし、こうなれば第一部隊をギール隊と京骨隊に分けるのだ!」


ディノ「わ、分けるのですか?でも、何のために?」


シャル「京骨隊は長斉橋を渡り士道部の本陣を攻める。ギール隊は桃馬の援護なのだ!」


豆太「‥な、なるほど、士道部の四天王も各地で奮戦している情報もあります。と言うことは、今の士道部本陣は‥。」


シャル「手薄なのだ!ここで士道部を押さえれば、我らの勝利も目に見えているのだ!ぬはは!」


シャルが高笑いをしていると、どこからか大きな爆発音が響いた。



シャル「むっ?なんだ今の音は?」


ディノ「‥っ!あの煙は‥まさか船着き場から!?」


豆太「ふぇ!?ま、まさかあの要塞を突破されたのですか!?」


シャル「な、なぬ!?それはまずいのだ!こうなれば‥第一部隊を急いで船着き場へ送るのだ!」


ディノ「はっ!直ぐに伝令を送ります!」


豆太「ぼ、僕、様子を見てきます!」


ディノは大急ぎで第一部隊へと向かった。



シャル「‥一体何が起こっているのだ。」


あのシャルでさえも予期せぬ戦局。


転々と変わる波乱に満ちた戦場に、もはや作戦などは有りはしなかった。



この四つ巴の戦いに真に求められたのは、

作戦ではなく臨機応変な統率力であった。





そして魔紅軍船着き場では、一人の男によって悲惨な戦狂渦(せんきょうか)に陥っていた。



魔紅軍男子「くっ‥なんで‥だよ。」


魔紅軍男子「‥な‥ぜ‥な‥ぜ‥‥だ。」


船着き場を押さえていた男子たちは、ほとんど戦闘不能に陥り、土ぼこりが待っていた。


話せる力のある者は、

一人の黒い高貴な着物を装った男子に尋ねる。


その男子は、握り拳を作り目を閉じ顔をそらした。


?「‥すまん‥こうするしか‥ないんだ。」


するとそこへ、騒ぎを聞きつけたジェルドと小頼の部隊が駆けつけた。


そこにはまわりの仲間が倒れている中、一人寂しく立っている孔真の姿があった。


小頼「こ、これは‥ど、どうなっているの!?」


ジェルド「‥っ、こ、孔真?‥まさか、お前がやったのか?」


継丸「ふぇ!?ご、ご主人様が‥ま、まさか‥そんな‥何かの間違いですよね!?」


信じがたい光景に、式神の継丸は孔真を擁護する。しかし、孔真はこれを否定した。


孔真「継丸よい‥これは俺がやったことだ。」


弱々しい声にその場にいる魔紅軍の生徒は愕然とした。


小頼「そ、そんな‥、こんなのあなたの意思じゃないわ。何か訳があるんでしょ?」


継丸「そ、そうです!答えてくださいご主人様!」


心優しい孔真がこんなことをするはずがない。


それは誰もがわかっていた。


その証拠に、孔真は泣いていた。


孔真「‥すまん‥俺はもう‥こっち側だ。」


涙を流し悔しそうに話すと、舞った土ぼこりが徐々に薄れ、孔真の背後には鉄砲を構えた生徒と十数隻の船が現れた。


その数は百を超え旗印には六組の旗を掲げていた。


この光景に第三部隊の全員は目を疑った。


共存派のリーダーである藤原志道(ふじわらのしどう)がやるにしてはあまりにも非道であったからだ。


影の件に全く情報がなかった魔紅軍に取って、精神的にもダメージが大きかった。


小頼「そ、そんな‥ま、まさか‥志道がこんな酷いことを‥。」


ジェルド「こ、こんなの‥規定違反だろ!」


生徒間に疑心暗鬼をもたらす卑劣な策に、

ジェルドは異議を申し出た。


しかしそこへ、鉄扇を掌に"パシパシ"と叩いて歩み寄る一人の男が現れる。


?「おやおや、規定違反とは人聞きが悪いですね?これはれっきとした策、離間(りかん)の計ですよ?」


ジェルド「‥っ!お、お前は‥士道部の土佐!?な、なんで六組と‥。」


六組の旗を見る限り、本来ここにいるはずのない土佐清一の姿があった。


土佐「おやおや?一から話さなければわかりませんか?まあ、いいでしょう。そもそも、私は、どの軍にも属していません。」


ジェルド「はぁ?な、何言ってるんだ!?」


土佐「くくく、強いて言えば俺自信が軍であり、六組は身を隠すための殻とでも言おうか。」


ジェルド「‥な、何てやつだ。じゃあ、今までの悪事も六組に擦り付けられる分けか‥。」


土佐「その通り。さてと‥薩摩、長州!麗羅をここに。」


薩摩&長州「はっ!」


土佐の呼び掛けに二人は縛られた麗羅を前に出した。


その光景に第三部隊は孔真が裏切った理由を察し怒りが込み上げた。


孔真「れ、麗羅!」


麗羅「んんっ~!」


土佐「‥私に取って約束と言うのはとても価値があって(とうと)い物だと思っている。それ(ゆえ)滑稽(こっけい)で面白い!」


土佐は卑劣(ひれつ)にも、

孔真のみぞおちに拳を入れその場に倒した。


すると、長州と薩摩が追い討ちをかけるように袋叩きにする。


孔真「がはっ!ぐはっ!」


麗羅「んんっ~!」


長州「おらおら!このあまちゃんがよ~!」


薩摩「いい様だな~!あはは!」


見るに耐えない光景に、我慢の限界を迎えた第三部隊の大半が一斉に突撃をした。


魔法と鉄砲が飛び交う苛烈な戦闘をするも多勢に無勢、第三部隊はほぼ壊滅に追い込まれたのだった。




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