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第百七十八話 夏の大戦乱祭編(9) 決起案

ようやく晴斗と直人が待つ本陣に土佐が帰陣した。大戦乱祭前日と言うのにも関わらず、軍律違反である交戦に出た罪は、果たして"泣きの馬謖(ばしょく)"が入るか‥。



直人「とぉ~さぁ~?何勝手に交戦してんだ~?」


晴斗「話は聞いているけど‥どういうつもりなのかな?」


二人は少しきつめに問いかけると、

土佐は扇子を開き扇ぎながら語り出す。


土佐「まあまあ、お話を聞いているのでしたら内容の通りです。詳細を言うなら、明日に向けての肩慣らし、言わば興奮状態に入った味方のガス抜きみたいなものですよ。」


晴斗「ガス抜きね~、ちなみに、仕掛けたのはどちらからだ?」


土佐「それについてはこちらからです。ですが、ご安心くだされ。微食会の一部隊の合意の上ですから。」


直人「不意打ちはしてないのだな?」


土佐「もちろん、不当な不意打ちは士道に反しますから。」


土佐の言い分には筋が通っている。


闘争心が暴走すれば判断力が鈍り、声も届かなくなる。


そして、一部微食会の合意。

おそらく、準メンバーによる独自の判断だろう。


晴斗「わかった。でも、これ以上の勝手な戦闘は避けるんだいいな?」


土佐「はい、わかりました。あと、この場を借りてお願いが。」


土佐は扇子を閉じると先端を額に当て、要求をする。


直人「交戦は許可しないぞ?」


土佐「いえいえ、少しの間鉄砲の訓練をさせてもらいたいと思います。」


直人「ん?‥それは構わないが間違っても相手を撃つなよ?」


土佐「わかっています。後は、編成についてですが、奏太を第三部隊に加えてもらいたい。」


ここに来て編成の変更意見を提案した。


しかし晴斗はこれを断った。


晴斗「土佐、それはできないよ。奏太には重要な役割があるからね。もちろん、他の仲間も同じことだよ。」


土佐「‥わかりました。しかし、先の小競り合いで、微食会は予想以上に強敵です。もう一度考え直してもらいたい。このままでは微食会の総攻撃に合い第三部隊は壊滅するでしょう。」


土佐は最後のだめ押しを進める。

しかし、これに直人は冷静に返す。


直人「もし、その事があれば‥土佐には悪いがこの小競り合いが原因と捉えるぞ。」


土佐「っ!」


晴斗「土佐、勝ちたい気持ちは分かるが、何を焦っているんだ?」


土佐「当然‥夏休みを謳歌するためですよ。では、私はこれで。」


土佐はそう言い残すと足早に去って行った。


直人「‥晴斗。」


晴斗「あぁ。」


直人「‥夏休み、楽しく過ごしたいよな。」


晴斗「そうだな。」


直人「‥編成を考え直そうか。」


晴斗「そうだな、どうせ一人や二人‥変わっても変わりはないからな。」


こうして二人は土佐の気持ちを()み、筋の通った意見を取り入れた。

奏太を第三部隊へ送り、他は微調整でまとめた。



その頃、

一組、二組連合軍では‥。


シャルが全力で鼓舞(こぶ)をしていた。

それはそう、手がつけられないほどに‥。


シャル「ぬはは!この(いくさ)は夏休みを平和に過ごすための重要な一戦なのだ!ここで無様に負けて、夏休みの魔物に夢を壊されるか!それとも、ここで勝利を納めて謳歌するか!どちらが良いかは目に見えているのだ!」


シャルの演説は想像以上にウケがよく、一人一人の(とき)の声は上がるわ、拍手喝采になるわで、軽く暴走していた。


桃馬「す、すごいな‥。さすが元魔王って感じがする。」


桜華「シャルちゃん、凄く輝いていますね♪」


ギールから"夏休み"を学んだシャルは、燃えに燃えていた。


シャルに取って宿題は簡単かもしれないが、それでも無いことに越したことはない。

むしろ面倒で邪魔な代物である。


何も考えず一ヶ月間、遊び呆けれるためにも、ここは本気で取り組まなくてはならない。



一時は勝つために、隠れて何かを召喚しようとしていたが、ギールたち兄弟に止められ未遂で終わっている。


危うく、軍を巻き込む一発退場は免れた。



ギール「はぁ‥鼓舞するのはいいけど、何をしでかすか分からないから、目を離せられないな‥。」


ディノ「そ、そうですね‥。また暴走して変なことをするかもしれませんからね。」


豆太「‥あんなお姉ちゃん初めて見たかも‥。」


兄と弟たちはこぞってシャルをディスる中、

監視の目を強く光らせる。


兄弟に注視されてることは露知らず、

シャルは無限の演説を続けた。


まわりの同士も完全にシャルのペースに乗せられ盛り上がっている。


そんな様子を見ながら桃馬たちは、一つのビジョンが脳裏を駆けた。


それは、来年の生徒会選にシャルが出馬することであった。


仮に出馬するとなると、確実に次期生徒会長になるのは確実である。


今のシャルが生徒会長になったとして、悪い方には進まないと思うが、破天荒でぶっ飛んだ提案を出しまくり大改革を進めることは目に見えている。


まだ先の事ではあるが、できるなら大人しくしてほしいと願うのであった。


そんな中、

人を操るようなシャルの演説を聞いた孔真は、

ただ驚くばかりであった。


孔真「あのシャルって子は何者なんだ‥。」


憲明「簡単に言えば元魔王だ。」


孔真「なにっ!?あんな子、一年の頃に居たか!?」


孔真がシャルを知らないのは当然であった。


シャルが編入した時は、ちょうど孔真は休学中だったため、復学してから今までシャルを他クラスの生徒だと思っていたのだ。


憲明「いや、一年の頃はいなかったよ。シャルは四月の新学期早々、こっちの部活で色々あって異世界から連れてきた子だ。」


孔真「‥そうなのか、それにしてもよく校長は許したな。」


憲明「許すも何も、あの時の校長は大歓迎だったな。他にも一年には神様とか、沢山編入したな。」


孔真「か、神様だと!?」


憲明「あぁ、犬神様と神盟宮神社の神様とか。」


孔真「た、たった五ヶ月でかなり変わったな。」


憲明「まあ、個性的な仲間が増えたってことで考えろさ。あぁして、場に溶け込んでるんだからさ。」


孔真「そ、それもそうだな。」


たった五ヶ月でこの変わり様、なんだか自分だけが取り残されているような気がする孔真であった。



それからシャルの演説は昼の正午まで続き、昼食後はようやく陣を取り始めた。



気づけばシャルが総大将に持ち上げられ、部隊もシャルの一存で大編成を決行した。


第一部隊、京骨、ルシア、ギール、

第二部隊、桃馬、桜華、憲明、リフィル

第三部隊、孔真、小頼、ジェルド

第四部隊兼総司令部シャル、ディノ、豆太


総勢百五十六名である。


シャルの突然の大編成は、当初の編成より的確にまとめられていた。そのため同士たちは更にシャルを持ち上げ、シャルコールと共にこれを支持した。


まずい‥。

これがきっかけに変な生党(せいとう)が生まれなければいいが‥。


桃馬を筆頭に理解ある男たちは、不安を抱えたのだった。



シャル「よ~し!お前ら!明日の大戦は必ず我らが勝つのだ!ぬはは!」



シャルの学園征服の第一歩であった。


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