第百七十三話 夏の大戦乱祭編(4) 不雲な疑惑
孔真が登校を再開してから三日。
相も変わらず女子たちの人気は衰えず群がれるなか、夏の大戦乱祭の組分けが順調に進められていた。
一組は二組と各クラスの生徒と同盟を結び。
三組は士道部を主軸とし、各組の士道部とその他組する生徒が集められた。
四組はバラバラに分かれた。
五組は士道部と微食会で分かれ、主体を微食会となった。
六組は一部他の組に加勢するも、他のクラスと比べて全く劣っていない。
結果、現時点では四軍が出来上がった。
バランス的には理想とも言える配置であったが、ここで土佐から気になる情報が入る。
土佐「直人、半兵衛。面白い情報が取れたぞ。」
土佐は懐から三枚の写真を取り出した。
その写真を見て驚愕する。
直人「清一‥これをどこで手に入れた?」
晴斗「‥なんだこれは。」
写真には二人の男に制服を半分脱がされ押し倒されている麗羅の写真であった。
おそらく、雪が積もっているのを見る限り冬に撮られたのは確かだろう。
土佐「友人からもらったんだよ。しかも、雪が降ってる時の写真だし、今さら‥んっ!?。」
怒り狂った直人は土佐の胸ぐらを掴む。
直人「清一!この写真は誰から受け取った!」
晴斗「お、おい直人!?」
土佐「うぐっ、い、岩村だ‥。五組の岩村一郎だ。」
直人「‥岩村か。もしかすれば自作自演の可能性があるな。」
晴斗「確かに、自然にしても撮り方が狙ってる気がする。それより、先生になぜ報告してないのか疑問だ。」
怒りに狂う二人の勘はかなり鋭い。
悪を許さない二人の迫力はいつ見ても迫力がある。
直人「麗羅ちゃんに聞いてみたいが‥、さすがに思い出させる訳にはいかないもんな。」
晴斗「口止めされてる可能性もあるからな。近くに監視はつけさせよう。」
土佐「それなら私にお任せを、まわりに頼むにせよ忙しそうだからな。」
直人「わかった頼む。あっ、そうだ。さっきは胸ぐら掴んですまなかったな。」
土佐「気にするな。外道は許さないそれがもっとうだろ?それに、仲間を慰み物にした恨みは俺も同じだ。」
そう言うと土佐はその場を後にした。
すると直人は奏太を呼び出しあることを頼んだ。
その後、直人は晴斗は麗羅の写真を手にして五組へと向かった。
その頃
五組には数人の生徒しかおらず、そこにはちょうど岩村も居た。
直人と晴斗は、堂々と岩村の席に歩みより、麗羅の写真を机に置いた。
直人「岩村‥これはどういうつもりだ?」
晴斗「返答次第では、容赦はしないけど?」
岩村「っ!ど、どうしてこれを!?」
豆鉄砲を食らったかのように激しく動揺した。
直人「ほう?その反応‥何か心当たりあるな?」
岩村「あ、いや‥それは‥どこからこれを。」
晴斗「土佐からだよ。」
岩村「と、土佐だって!?」
直人「さて、吐いてもらおうか‥。なぜ、土佐にこれを渡したのか、なぜ先生に報告してないのか。」
直人は模造の短刀を机の上に置き圧をかけた。
岩村「‥く、口止めされてたんだよ。」
晴斗「口止め?」
直人「嘘ついてたら‥容赦はしないぞ?」
岩村「ほ、ほんとだよ!この後撮影したことがばれて、追い回されたあげく捕まって口止めされてたんだよ。」
確かにこの証言なら公に話が世に出回らない筋は通る。あとは、土佐に渡した意味だ。
晴斗「それで?なんで土佐に渡した?」
岩村「そ、それはこれについて何とかしてくれる奴がいるって言うから渡したんだ。」
直人「なるほどな‥、で、この写真の二人の男は誰だ?」
岩村「停学中の新西狂季たちだよ。」
直人「なに?」
晴斗「なるほど‥時期的にも筋が通るな。」
直人「新西たちの大量停学を機に相談したと‥そう言うことか。」
岩村「あぁ、でも、主犯らがいなくなっても残党は残ってるから中々言いにくくて‥。でも、頼んだ相手がまさか二人だとは思わなかった。」
直人「なんでだ?」
岩村「義理堅い二人だから‥騒ぎを大きくするだろ?もし、漏れたことがばれたら‥俺の身が危なくなるから。」
晴斗「そう言うことか。それなら安心しろ、何かあれば土佐が何とかしてくれる。」
岩村「だといいけど‥。」
ある程度の情報が集まると二人は三組に戻っていった。
すると入れ替わるように、二人の男が岩村に近づいたのだった。
三組教室
直人「どう見る半兵衛?」
晴斗「‥証言には辻褄は合うけど、妙に引っ掛かることがあるな。」
直人「俺もそう思う。新西の事だ、たった一回で終わるはずがない‥。これが最初なのか‥それとも継続してるのかもわからない。今まで麗羅ちゃんの様子を見る限り変な様子もなかった。」
晴斗「あとは、孔真が戻ってきたこのタイミングだね。もし、これに裏で動いてる者がいるなら、真相が全く意味がわからないね。」
ここまでの謎。
孔真の早期の帰還。
麗羅の強姦を疑わす写真。
過去の新西との関わり。
土佐と岩村の動向。
土佐については対新西に貢献した一員でもある。
そのため今回も新西が動いていると想像がつく。
麗羅を人質にして孔真を味方につけ、再起を図ろうとしているのか。あの男ならやりかねない。
晴斗「六組を警戒した方がいいかもしれないな。隠れた寄生虫なら過ごしやすい環境だからね。」
直人「そうだな。」
麗羅に真実を聞く線もあったが、確信が得られない以上真実を聞くことができなかった。
もし無理をして平然を装っていたら自尊心を傷つけてしまうと思ったからだ。
しかし、直人はリールに頼んで然り気無く懐に入ろうと考えた。
ここで小話。
先ほどから麗羅と言う女の子の名前が出ていますが、ここでご紹介します。
彼女の名は妙高院麗羅、特徴は雪のような白い肌と長髪。胸は小ぶりでバランスの取れたスタイルである。
性格も温厚でがんばり屋である。
新発田孔真とは幼少期からの幼馴染みで、恋人以上夫婦未満と言う微妙な関係である。
その時のやり取りをどうぞ。
早速直人は、麗羅の冷気で涼んでいるリールを呼び出し、麗羅に"最近何か起きなかったか"と聞くよう頼んだ。
直人「いいかリール?然り気無くだからな?」
リール「えぇ~?詳細な説明なしで"最近どう?"見たいな感じで話すのはきついよ~?」
さすがにあの写真は見せることができない。
取りあえず悩みを聞き出すだけでも十分であった。
直人「今の"最近どう?"は腹立つが‥。そうじゃなくて、最近悩みとかないか聞くだけだから。いつも楽しそうに話してるリールにしか頼めないんだ、頼む!」
直人は合掌しながら頭を下げた。
リール「うーん、わかったよ。その代わり‥。」
直人「そ、その代わり?」
リール「今度一日二人っきりでデートしよ♪」
直人「で、デート?ま、まあいいけど。」
リール「よーし♪言質取ったからな♪忘れるなよ~??」
リールはルンルン気分で麗羅の元へ戻ると早速問題が発生した。
リール「お待たせ~♪早速だけど麗羅ちゃん♪なんか最近悩みとかある??」
然り気無くと言ったのにも関わらず、ドストレートな質問を投げ掛けた。
麗羅「ふえっ?な、悩みですか?そ、そそ、そうですね‥。」
リール「もしかして折角の孔真に接近できないとか?」
麗羅「あ、あはは、それは大丈夫だよ。孔真とは登校と放課後、いつも一緒だからね。」
麗羅は苦笑いしながら少し困ったかのように答えた。
だが、悩みはこれではなさそうだ。
リール「なんだ~もう接触してたんだね♪じゃあ他にはないの?」
麗羅「‥うーん、でも‥。リールちゃんに言うことでもないかな~?」
リール「お家事情??」
麗羅「ううん、そうじゃないの。」
悩みはあるようだが、リールに伝えるか伝えないかを迷ってるようだ。
リール「遠慮しなくていいよ~♪出来る範囲なら直人も力になるから♪」
麗羅「う~ん‥実は、一ヶ月前から誰かに見られてる気がするの。」
リール「ふぇ!?」
リールの驚きの声に直人たちが反応する。
やはり、何か言えない事を抱えていたようだ‥。
麗羅は慌てて驚愕するリールを静めると、二人の話を続ける。
麗羅「し、しーっ!リールちゃん静かに!?」
リール「ご、ごめん、でも、そ、それってストーカーって奴だよね!?」
麗羅「うん‥私もそう思って修行中の孔真に連絡を取ったの、そしたら一ヶ月も早く終わらせて帰ってきてくれてね。」
リール「おぉ!それはさすがだね♪でも、よく一ヶ月も耐えてたね?」
麗羅「‥それが不思議なことに何もしてこないだよ。」
リール「ふへぇ~、完全に盗撮の類いだねこりゃ‥。」
麗羅「‥あの時以来、変なことは起きないと思っていたのに‥。」
リール「ふぇ?あの時って?」
麗羅「っ!」
麗羅は"しまった"と、言わんばかりの慌てた表情になると、リールは質問した。
リール「麗羅ちゃん‥もしかし何かされてるの?」
麗羅「‥うぅ、リールちゃん‥これから言うことは誰にも言わないでほしいの。」
リール「う、うん、わかった。」
麗羅は心の隅に置いていた五ヶ月前の出来事をリールに話した。