第百七十二話 夏の大戦乱祭編(3) 女の子気質0%のショタはいかが?
御前会議から翌日のこと。
朝から春桜学園は女子の騒音並みの大歓声と男子のけたたましい咆哮で盛り上がっていた。
これは、新発田孔真の登校再開に燃える女子と亀田映果による御前会議で話し合われた夏休みの宿題と補習免除についての号外に燃える生徒によるものであった。
孔真は式神"牛車"で平安貴族の様な感じで道の真ん中を通り、両サイドには血気盛んな女子が並んでいる。
もはや、源氏物語に出てくる光源氏を想像させるものだった。
少し揺れが激しいのは気になるところであるが、簾がかけられているため中の様子は確認できない。
その様子を木の影から直人と晴斗が見ていた。
晴斗「‥小学からの幼馴染みを疑う気分は最悪だね。」
直人「‥俺だって疑いたくない。でも‥あれを見たら‥。」
晴斗「あれって?何かのやりとりを見たのか?」
直人「‥まあな孔真が修行に出る前、麗羅ちゃんと二人で話していたんだよ。そして麗羅ちゃんを泣かした。」
晴斗「うわっ、それは修羅場だな‥。って、もしかして、そんな理由で警戒してるのか?」
直人「‥それは三割だ。」
晴斗「‥三割もあるのかよ。」
若干私的な感情で動いている直人に、晴斗は少し安心した。まだ完全に孔真を敵視はしていないことが何より安堵していた。
するとそこへ、一人の男が声をかけてきた。
?「おや?三組四天王の二人がこんな所で何をしてるのですか?」
晴斗「っ!」
直人「っ、あぁ、なんだ清一か。脅かしやがって。」
二人が後ろを振り向くと二年五組の土佐清一が扇子を片手に扇ぎながら立っていた。
土佐「ふーん、見たところ夏の大戦乱祭に向けての偵察ですかな?」
直人「まあそんなところだ。」
土佐「それで、三組の方針はある程度決まっているのですか?」
晴斗「いや、今回はまわりの動きを見定めてから、手を組むか組まないかを決めようと思っているよ。」
まだ何も決まっていないことを伝えると、土佐から一つの提案を持ちかけた。
土佐「それならば、士道部を主体とした軍を作るのはどうでしょうか?」
晴斗「士道部主体か。悪くはないな‥。」
直人「三組を主にして呼び込めば、六組にも対抗しやすくなる。わかった、検討してみよう。」
土佐「おお、ありがとう。士道部の力を見せつけてやろうや。」
そう言い残すと土佐は去って行った。
晴斗「意外な提案だったな。」
直人「うん、あまり意見を言わない土佐があそこまで主張するなんて珍しい。」
晴斗「三組と各クラス、そして異世界組から召集して、ざっと百人は越えるな。」
直人「うーん、微妙だな。」
晴斗「でも、赤穂浪士の四十七人よりは多いぞ?」
直人「‥それでも六組に対抗できるかな。五組もこちら側につけばいいけど‥微食会も決起しそうだしな。」
晴斗「あはは‥五組は分裂確定だね。」
直人「‥一組と二組は同盟を結ぶだろうけど、四組と六組はどう動くか。」
それから二人は孔真の偵察を続けるが、至って怪しい行動は見せず教室へ戻ったのだった。
数十分後
相も変わらず遅刻ギリギリの桃馬たちが教室へ向かうと、そこには長い女子生徒の壁が出来ていた。
桃馬「な、なんだこれは!?」
桜華「ふぇ!?こ、これは何事ですか!?」
憲明「‥孔真の影響強すぎだろ。」
小頼「ありゃりゃ~、これはすごいですね。私と桜華ちゃんは入れるけど、三人は厳しきかもね。」
ジェルド「こ、これじゃあ入れないぞ!?」
三人の男子は入室困難な状況に一時困惑する。
無理にでも入ろうなら、女子の敏感な部分に体を当て、悲痛な制裁を受けることは目に見えていた。
とは思うものの、ホームルームのチャイムが鳴れば必然的に女子の壁は崩れ教室に入れるだろうと三人の男は思った。
数分後
待ちに待ったホームルームのチャイムが学園中に鳴り響いた。
予想通り女子の壁は崩れるのだが、群れた女子たちは一斉に転移魔法や自慢の俊足で各教室へ解散した。
ようやく教室に入れるとクラスの女子たちが孔真をまだ囲んでいた。
男子たちは寂しそうにしてると思い気や、一人の男の子と遊んでいた。
男子「あはは♪継くん凄くかわいいな~♪」
男子「いいな~、孔真は~♪こんな可愛いショタと入れて~♪」
男子「継丸くん、お兄さんの弟にならないか!?」
男子「なっ!なに抜け駆けしてるんだ!」
継丸「はわわ!?///」
新発田孔真に仕える式神
金髪短髪ショタの河井継丸
ようやく学園に現れた純粋な気弱なショタである。
見知らぬ学生に囲まれた継丸は緊張のあまり、アワアワとするばかりで男子たちから大人気であった。後に"女子は孔真、男子は継丸"と言う。名言が生まれた。
桃馬「な、何してるんだお前たち。」
男子「おぉ~♪桃馬♪見てみろよこの純粋ショタを!」
男子の一人が継丸を前に突きだすと、
金髪短髪で赤面しアワアワしている。
これは‥豆太以来の大発見だ。
思わず五人は生唾を飲んだ。
目の前にいるのは、
とにかくいじめたい、なでなでしたい、触りたい、持ち帰りたい、○したいと言う犯罪心をそそらせる危険な生物であった。
そんな生物に一人の女子が抱きついた。
小頼「きゃ~♪なにこの子~!凄く可愛い~♪」
継丸「ふあっ!?」
桜華「こ、小頼ちゃん!?」
男子「おぉ!」
男子「ふあっ、だってよ!」
男子「じゅる‥はぁはぁ、おいひそぉ~♪」
一部男子では変なスイッチが入り、禁断のショタ喰いをしようとする。
桃馬「お前ら正気にもどれ!?ショタ喰いは犯罪だぞ!?」
憲明「そ、そうだ!早まっちゃいけねぇ!?やるなら、ジェルドにしろ!」
ジェルド「なっ!?憲明てめぇ!?」
憲明が友人を売り込むと一部の男子が言い寄ってきた。
男子「ならジェルド‥ショタになれよ。さもないと継くんを喰うぞ?」
ジェルド「な、なんでそうなるんだ!?」
騒がしい教室に、ロリ担任の三条美香が入ってきた。
三条「はーい、みんな?静かに静かにして席につきなさい?」
三条先生の呼び掛けに生徒たちは一斉に席についた。
一方継丸は式紙に戻り、孔真の所へ飛んで行った。
そしてホームルームが始まり、三条先生は改めて孔真に自己紹介をお願いした。
孔真は気さくに席をたち改めて名乗った。
孔真「新発田孔真、本日から陰陽道の修行を終え戻ってきました。えっと‥今年もよろしく。」
まわりを見れば顔見知りばかりで、最後は照れ臭そうに閉めた。すると、女子からの拍手喝采と男子の普通の拍手が響いた。
この様子に桃馬は安心した。
なんだ、やっぱりいつもの孔真だ。
これで直人も変な疑いはしなくなるだろうな。
従兄弟に対して牽制材料が揃うも、
これが大きな波乱に満ちた大戦の序幕となるとは誰も知らないのだった。