第百六十九話 家族の形
朝日が登る早朝のこと。
ギールが目を覚ますと目の前には加茂様が横たわっていた。
その寝顔は不思議と妹のシールを思い出す様な可愛い寝顔をしていた。
ギールは優しく加茂様を撫でると洗面所へと向かった。
するとそこには‥、
父ケトーを再び襲っている母リブルの姿があった。
リブル「んはぁっ♪あなた~♪」
ケトー「んんっ~♪りぶりゅ‥んちゅ‥。」
慣れた光景にギールは無言で扉を閉めた。
全く神様が居ると言うのにこれだけは変わらないんだな。
親の淫靡な日課に呆れていると、ギールの脳裏に、先週女体化した桃馬にキスされた事を思い出す。
あの時の桃馬は、少し母さんの属性に似ていた。それにシャルも元の姿に戻れば、姉御とは言わないが姉属性が強い女性になる。
も、もしかして俺って‥年上気質の人が好きなのか!?父さんが母さんに襲われるみたいに、俺も襲われたがってるのか!?
最近のギールを振り返ると、桃馬に襲われる回数が増え、反撃もできずにいつも無様な醜態を晒している。
更には父を振り返ると、
両津直人の父両津界人にもふられている様に、
ギールも桃馬に甘えることから、完全に父の遺伝を受け継いでいることに気づいた。
ギール「はぁ‥俺は受けなのかな‥。」
加茂「何が受けなのですか?」
ギール「何ってそれは俺の性癖‥ん?なっ!?か、加茂様!?お、おはよう。」
加茂「お、おはようございます♪す、すみません、驚かせてしまいましたね。」
ギール「え、あっ、いや、大丈夫だよ♪そ、それにしてもまだ四時半だよ?まだ寝てても良いんだよ?」
加茂「大丈夫です。いつもこの時間には起きてますから。」
ギール「加茂様も早起きなんだな。」
加茂「はい、神務の朝は早いですからね。」
ギール「神様も大変だな。」
加茂「それも定めですからね。あっ、そうです、洗面所をお借りしても良いですか?」
ギール「うん、好きに使っていいよ。」
加茂「ありがとうございます♪」
ギールと加茂が笑顔ですれ違うと、ギールは歩みを止め何かを忘れているような気がした。
後ろを振り向くと加茂様が洗面所の扉に手をかけていた。
その瞬間ギールは重大で肝心な事を思い出した。今洗面所には淫靡な日課を勤しむ親がいる。ギールは急いで止めようとするが時既におすし‥。
加茂様は都合の良い防音扉を開いた。
加茂様の目に広がるのは、姉御スタイルのリブルを押し倒して腰を振る少年ケトーの姿であった。
リブル「あぁん♪あなた~♪激しい~♪」
ケトー「はぁはぁ!お返しだリブル!」
上級レベルの光景に純粋な加茂様は硬直した。
ギールは慌てて扉を閉め、加茂様を回収した。
ギール「加茂様!?加茂様!?しっかりしてください!?」
加茂「ぼ、僕、な、ななっ、何も見て‥ないよ~。な、なにも~。」
放心状態から脳内混乱を引き起こし加茂様は、表情に覇気はなく魂が抜けた顔で一点を見つめていた。
廊下での二人きりは、本来は喜ばしいことなのに、夜中の件に続いて上手く喜びを感じられない加茂様であった。
するとそこへ、寝ぼけたシャルが歩いてきた。
シャル「うぅ~、トイレ~。」
ギール「あ、シャル?」
シャル「うぅ~?ギールか‥ここで何してるのだ?」
ギール「えっ、あっ、いやその‥か、顔を洗ってたんだよ♪でも、洗剤こぼしてな~、今掃除中だから入るなよ~。」
シャル「そうなのか~、余はトイレなのだ~。」
ギール「お、そ、そうか~♪いってらっしゃい♪」
シャル「うむ~♪」
かなり寝ぼけている様だったけど、トイレなら忠告しなくてもよかったかもな。
さてと、加茂様をリビングに‥。
リブル「あぁん♪だめよあなた~♪そんなにしたら妊○しちゃう~♪」
ケトー「はぁはぁ、リブルが悪いだよ!俺をこんな風に挑発するから!」
リブル「あぁん♪素敵よ~♪あな‥。」
バタン!っと、ギールは急いで扉を閉めた。無言でシャルを見ると不意を突かれたせいか、加茂様と同様に魂が抜けた顔で一点を見つめていた。
ギールはシャルをトイレに投げ込み、加茂様をリビングへ送りソファーの上に寝かせた。
そしてギールは、洗面所兼風呂場の扉を一時間近く見張ったのだった。
リブルとケトーが出て来るとギールは直ぐに二人を捕まえ苦情をぶつけた。
ギール「父さん!母さん!盛るならいつも部屋でやれって言ってるだろ!?」
ケトー「す、すまん‥でも、盛ったリブルを抑えられないんだよ。」
リブル「あはは、そう細かいこと気にするな♪朝も早かったし見られちゃいないよ♪」
ギール「なっ!?」
おいおいマジかよ!?
三回も扉を開け閉めしたのに気づかなかったのかよ!?どんだけ、夢中に盛ってるんだよ!?
衝撃的な発言にギールは言葉を一瞬失うも、すぐに態勢を立て直して言い返す。
ギール「だ、だとしても、万が一があるだろ!?げ、現に俺は見たんだからよ。」
ケトー「なっ//」
リブル「なんだ~、見てたのなら声をかけてくれればよかったのに?」
ギール「か、かけられるわけないだろ!?バカか!?」
リブル「‥ほぉ~♪言ってくれるな♪」
や、やばい‥つい口が滑ってしまった。
好戦的な母さんに取って暴言は、宣戦布告の合図‥。いつもの展開なら制裁拳がおよ‥ごふっ!?
綺麗にみぞおち辺りに拳が入り一瞬体が浮いた。午前六時付近にも関わらずギールは泡を吹いて二十分近く気絶した。
少し時を進め午前六時四十分。
朝食を済ませ制服に着替える学生たちに、リブルはカメラを構えて涎を垂らしていた。
リブル「はぁはぁ、六人の兄弟~♪たまらないわ~♪」
ケトー「三ヶ月で一気に兄弟が増えたな。」
加茂「六人?えっと‥いち、に~、さん、よん、ご、あれ?もしかして僕も入ってるのですか?」
リブル「当然だよ♪加茂ちゃんも私の子供よ♪」
ケトー「うん、細かいことは気にしないで、いつでも家に来るといいよ。」
加茂「っ!あ、ありがとうございます♪」
シャル「よかったな~♪加茂よ~♪」
加茂「うん!」
フォルト家の家族に迎えられ、何より大好きなギールと暮らせる喜びが大きく、加茂の神生で一番嬉しい展開であった。
するとギールが一つの問題を切り出した。
ギール「なら、この家に居ても神務に差し支えないような方法を考えないとな。」
シャル「ふっふっ、そんなの簡単なのだ。」
ギール「‥ちなみに安全なやつだよな?」
シャル「安心するのだ。神社とこの家に魔空間を通せば解決なのだ!」
シャルにしては大胆で筋が通っていた。
ギールたちは思わず"おぉ~"と声を漏らし拍手した。
犬神「さ、さすがシャル様!鋭い機転を利かせた打開策!お見事です!」
シャル「うむ!最近の余は冴えているのだ!」
犬化計画を崩壊させて以来、かなり頭の回転が良くなっている。いつもの悪ノリはあるものの、外れた答えは出さずしっかりとまともな決断を出している。
ギールからして見ればこれは逆に怖い。
そんな不安にかられていると、リブルから六人にお呼びがかかる。
カメラの三脚も立て本格的に家族写真の準備を整えていた。
リブル「おーい、学生達よ。ちょっと、全員で写真撮るからこの辺りに並んでくれ♪」
ケトー「タイマーは三十秒にするから早く頼むよ。」
シャル「おぉ~♪写真なのだ~♪写るのだ~♪」
シャルを先頭に次々と並び始める。
春のから変わった梅雨の時期も幕を下ろし、
カメラのシャッターが切られると共に季節は夏へと変わる。