第百六十四話 犬よ永遠に
その頃、異種交流会の部室では部長にして生徒会長の新潟時奈とリフィルは、もふもふの豆太とエルゼと戯れていた。
エルゼ「わふぅ~♪気持ちいいです~♪」
豆太「はぅ~、きゅ~♪」
リフィル「はぁはぁ♪いやしゃれる~♪」
時奈「うむ、二人を並べると可愛さ二倍だな♪よしよし~♪」
エルゼと豆太は、ディノ特性のスライムベッドに寝かせられ、いたれりつくせりの純粋な"もふもふ"ライフを送っていた。
しかし、そんなほのぼのしい空間に殺伐とした桜色の雲が迫っていた。
部室の扉が開くと、そこには表も裏もない満面な笑みを浮かべ、リード片手に桃馬を連れ込む桜華の姿があった。
リフィルはやっと桜華が来たことに喜び名前を呼ぶが、予想外な光景に思わず固まった。
しかし、時奈はいつも通り話しかける。
時奈「おぉ、二人とも噂通り可愛いではないか♪さっそく"もふ"らせてもらおうか♪」
惨めな桃馬の姿は何のその。
時奈は桜華に迫った。
桜華「桃馬はダメです♪私なら良いですよ♪」
時奈「ほほ~♪ということは、桃馬は淫獣にでもなったのか?」
桜華「はい♪変態で節操なくてエロかっこいい子になりましたよ♪」
桃馬の横で笑顔で堂々とディスる中、時奈は気にせず二人を分析し話を進めた。
時奈「ふむふむ、確かに変態のオーラを感じるな。それより、じゅる‥弄りがいがありそうね。」
桃馬「っ!と、時奈先輩!?」
女すらも狂わす"けも耳桃馬"に時奈は襲おうとする。すると桜華は前に出て丁重にお断りする。
桜華「駄目ですよ先輩♪触ったら犯されますよ♪」
時奈「ほほ~♪それなら今夜はゴムを十個以上用意しないとな~♪あはは♪」
桃馬が女になってることを知らない時奈は、今宵の二人の展開に期待するのだった。
その時の桃馬の気持ちはと言うと‥。
この際先輩でもいいから助けてくれ!
時奈先輩~!気づいてくれ~!
声を出して助けを求めたいところだが、
もし助けを求めれば、桜華に殺されるであろう。
まさか、あんなに優しくて心が綺麗な桜華が犬化したことによって、こんなにも肉食系で妬み深くなるとは思わなかった。
正直‥悪くはないけど‥うーん‥‥。
色々葛藤するところではあるが、内心に秘めたる卑猥な心に火がつき始める。
リフィル「ふ、二人ともなんだか、ギャグアニメの恋人みたいだね。」
桜華「クスッそうかな~?」
時奈「うむ、この雰囲気はまさに今の異種交流会が求めているものだな。」
いや、求めてねぇよ!?
俺が求めてるのはこんな殺伐としてないって!?
結局助けはなかった‥。
桃馬は諦めてその場をやり過ごす道しかなかった。
それより、憲明たちは何してるんだよ。
早く来てくれ~!
期待はしていないが、それでも憲明たちが早く来るのを尻尾を小さく振りながら待つのだった。
それから数分後、
ようやく憲明たちが部室へ到着した。
その頃、桃馬は桜華に一方的にもふられ可愛がられていた。特にクールで姉御系美女が蹂躙され、色っぽく鳴いている光景はすさまじく、憲明、小頼、リフィルの三匹は興奮してしまい尻尾を元気良く振り始めた。
ちなみにギールは、憲明の背中でお眠であった。
時奈「おっ、ようやく憲明たちも来てくれたか。それにしても‥ふむふむ、二人も良く似合っているではないか♪」
時奈は犬化した憲明と小頼に気づくと、早速二人に駆け寄り観察を始めた。
憲明「あの、せ、先輩?ちょっとお願いがあるのですが。」
時奈「ふっ、皆まで言うな。」
憲明「えっ?」
時奈「可愛い後輩のお願いがわからない私ではないぞ。」
憲明「せ、先輩‥。」
憲明の肩に手を置き、涼しげな顔で答えた。
これも犬化の副作用なのか、普通ならこの後の展開は予想できるのだが、なぜか今日に限って期待してしまった。
時奈「私にもふられたいのだろ?」
憲明「へっ?も、もふ?」
時奈「あぁ♪沢山可愛がってやるぞ♪」
憲明「ち、違いますよ!?」
時奈「えっ?違うのか?」
憲明「違います!元の姿に戻るためにこの部室を借りたいのですよ!」
時奈「な、なんだ、そんなことか‥。しかし、早々に戻すとは勿体ない気もするが。」
残念そうな表情で、もう少しの延長を訴えるが、事の深刻さを思い知ったシャルが前に出る。
シャル「時奈よ。事は一分一秒も無駄にできぬ事態なのだ。犬の本能に目覚める前に皆を戻したいのだ。」
いつも見せる能天気な一面とは裏腹に真剣な顔で申し出た。
一瞬、冗談かと思った時奈であったが、シャルの目を見るや信じるほかなかった。
時奈「わかった。シャルがそこまで言うには、かなり深刻なのだろう。ここを好きに使うと良い。」
シャル「あ、ありがとうなのだ!」
時奈「それと後ろの可愛い子達が、編入生の神様かな?」
シャルの後ろで身を隠す二人の神様を発見し声をかけた。
シャル「うむ!二人の編入は来週からと決まったのだ♪ちなみに、部活はここに置きたいのだが良いか?」
時奈「もちろん♪むしろありがたい話だ♪おっと、それなら自己紹介をしなくてはな。こほん、異種交流会部長兼生徒会長の新潟時奈だよろしく♪」
時奈は二人の目線に合わせて手を差しのべると、加茂様は友好的に握手をするが、犬神はツンデレモードに入り一度握手を拒否したが、シャルの一喝により、渋々握手をした。
しかし、この対応が犬神に取って悪い方へ流れる。
犬神の塩対応とも言える行為に時奈は、生意気けも耳ショタ属性としてレア認定しようとしたのだった。
時奈は一度我に返り、落ち着いたところで最後の試験を持ちかけた。
時奈「い、犬神くん!頼みがあるのだが、その‥もふもふしてもよいかな?」
犬神「なっ!?こ、この無礼者!我の体は人間の小娘ごときが気安く触れて良いものではない!我に触れて良いのはシャル様と‥い、一部の者だけだ。」
時奈「では、私もその一部に~♪」
犬神「だ、だめだ!な、何なのだお主は!?」
時奈の謎の気迫を恐れ、犬神は女々しくシャルの後ろに隠れた。
これにより時奈は、犬神を生意気けも耳ショタに認定したのだった。
時奈「はぁはぁ、犬神くん怖がらなくて良いんだよ?私は神様とお友だちになりたいだけなのだ~♪」
犬神「う、嘘をつくな!へ、変なことを考えているだろ!」
時奈「おやおや、それは心外ですね?でも、これ以上したら嫌われるかもしれませんから今日はこの辺にしておきます。」
犬神「い、今やめたとて、か、変わらぬぞ!」
時奈「クスッ♪さてと、憲明とシャルよ。何から始めれば良いか?」
憲明「取りあえず机を片付けましょう。あとは、シャルと加茂様、犬神様が何とかすると思います。」
時奈「うむ、それなら直ぐにできるな。よし、動ける者は速やかに取りかかるぞ。」
時奈の迅速な対応により、十分足らずで儀式の準備が終わり、あとは、犬化した五人を並べるだけであった。
憲明「うーん、誰か忘れてる気がするけど、取りあえず俺たち五人でいいか。」
小頼「まあ思い出したら、すぐに戻してあげれば良いだけだし大丈夫だよ~♪」
リフィル「わふぅ~、これで少しは落ち着けます~。」
犬座りをしながら気が抜けたリフィルは、純白な下着が丸見えにも関わらず、白いソックス付きの綺麗な美脚で首筋をかき始めた。
小頼「わふっ!?リフィルちゃん!み、見えてるよ!?」
リフィル「わふっ?はっ!?はう~//」
桜華「ふんふ~ん♪この姿も良かったんだけどな~♪」
桃馬「わふぅ~。早く‥元に戻りたい。」
五人の犬化も徐々に進行が早まっている。
早々に戻してあげないと、ある意味手遅れになる可能性が考えられる。
犬神と加茂は、両手をかざした。
犬神「上手くいくと良いけどな‥。」
加茂「スゥ~ハァ~、行けます。」
犬神「うむ、スゥ~ハァ~!」
加茂「ハァ~!」
二人から流れ出した金色のオーラは、五人を包み込むように纏った。すると五人は眠るように倒れ込んだ。
犬神「さ、さすが我の神力‥解けない~。」
加茂「こ、これは‥想像以上に体力が‥はぁはぁ。」
くっ、やっぱり神米の加茂には厳しかったか。
でも、ここで止めたら‥五人が戻らなくなるかもしれない。シャル様にもお願いしたいが、魔力と神力が混ざれば‥爆発する可能性もあるから‥頼れないし。
くそ‥どうすれば‥。
想像を越える消費量に犬神は追い込まれた。
シャル「ポチ!余も手伝うぞ!」
犬神「だ、だめです!?神力に魔力を混ぜたら暴走するかもしれません!」
シャル「なぬっ!?」
犬神「くっ‥まずい‥。」
加茂「うぅ~、もう‥限界‥。」
二人は限界を感じ諦めそうになったとき、
後方から一匹の声援が聞こえた。
エルゼ「犬神様!加茂様!頑張って下さい!」
犬神「っ!」
加茂「エルゼちゃん‥」
犬神「よそ見するな!集中しろ!」
加茂「は、はい!」
犬神&加茂「はあぁぁっ!」
渾身の神力を注ぎ込むと五人に纏った金色のオーラが強く光輝くと、五人のけも耳と尻尾がみるみる内になくなっていった。
犬神「はぁはぁ‥成功‥かな。」
加茂「ふにゅ~。」
神生でここまで疲れることは初めてであった。
しかも不思議だったのが、予想以上に疲労と神力の減少スピードが早いことであった。
犬神自信、これより過酷な戦いを繰り広げ幾度の強敵を屠って来た。それなのに、こんなちゃちなことで諦めかけるとは不思議でならないのであった。
溢れる疑問に考えていると後ろからシャルが抱き締めた。
シャル「ポチ!加茂!よく頑張ったのだ!ありがとうなのだ!」
加茂「シャルちゃん‥えへへ~♪」
犬神「はわわ!?こ、光栄でしゅ!」
こうして、世にも危険な物語は幕を閉じた。
心配であった桜華の性格は無事いつもの穏やかな性格に戻り、桃馬も男へと返り咲いた。
しかし、犬化していた記憶は消えず、桜華は赤面し桃馬に謝り続けた。
その後は、犬神と加茂の歓迎会が開かれ下校時間まで楽しんだという。
その頃‥二年一組では‥。
ジェルド「わふぅ~。寂しいよ‥。」
ジェルドは悲しくも下校時間ギリギリまで忘れ去られることになるのであった。