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第百六十三話 犬化(けんか)の大変

臨時職員会議が終わり犬神と加茂のクラス分けが決まった。


シャルの要望は共に二年二組であったが果たして結果は如何に‥。



上杉「いやいや、お待たせしてすまないね。おや?シャルくんとギールくんはお疲れかい?」


はしたなくその場に寝そべるギールに、上杉校長は冷静に尋ねる。


憲明「あ、あはは、色々ありまして~。」


上杉「そうなのか?まあそのまま寝かせておこうか、こほん、それではお二方のクラス分けなのだが‥。」


加茂「は、はい!」


犬神「まあ、聞かずとも結果はわかっているけどな。」


上杉「‥えっと、非常に言いにくいのだが、お二人には一年生から始めてもらいたい。」


加茂「ふぇ?」


犬神「わふっ!?」


シャル「な、なぬ!?」


まさかの結果に、呆けていたシャルは我に返り驚いた。


シャル「上杉よ!な、なぜなのだ!?なぜ一年生からなのだ!?」


上杉「‥言いにくいのですが、お二方の基礎学力が一教科を除いて著しく低かったのですよ。良かった教科を除いて加茂様は平均二十点、犬神様は‥平均一桁ですね。」


シャル「‥ひ、一桁?」



憲明「小学生問題で一桁か‥、まあ二十点も壊滅的だけど‥。」


小頼「もしかして、簡単すぎて逆にわからなかったとか?」


校長を待っている間に憲明たちは、編入試験の基礎学力テスト用紙を見せてもらっていた。内容は小学生レベルの簡単な問題であった。


なのにも関わらず、この低学力。

上杉校長は恐る恐る尋ねた。


上杉「‥えっと失礼ですが、お二方は勉学のたしなみは?」


加茂「わ、私は‥文学を少々‥。」


犬神「神に勉学は必要なかろう?この目で世界を見通し肌で感じる、知恵など無駄に身に付けても頭でっかちになるからな。」


上杉「なるほど‥そうなるとこのテスト結果も納得がいきますね。」


シャル「‥な、何が良かったのだ?」


上杉「加茂様は国語は満点。犬神様は社会が八十点。」


憲明&小頼「おぉ~。」


思わず声が出る結果であった。

すると上杉校長が本音を漏らす。


上杉「まあ深刻そうには言ったが、学力なんて所詮はお飾りだ。どんなに頭が良くて良い大学に行っても力を発揮できない者は多い。要するに大切なのは、個々の能力と結団力をしっかり向き合い養うことだ。知識など二の次で良い、時が経てば自然と身に付くからな。」


シャル「な、なら二人は一年生からじゃなくても良いのではないか?」


ちょっとした矛盾を見つけたシャルは、上杉校長に意見を投げた。


上杉「お二人には多種族交流文化を沢山学んでほしいのだよ。神様が一人でも意欲を持ってくれればこれ程まで嬉しいことはないからな。」


加茂「べ、勉学ができなくても良いのですか!?」


上杉「もちろんじゃよ。だが、そなりの知識は得てもらうぞ?一応学生のルールだからな。」


加茂「が、がんばります!」


犬神「ふん‥俺はシャル様と一緒じゃないと嫌だな。」


真面目な加茂様はやる気満々であるが、一匹だけ不満そうにしていた。


上杉「じゃが犬神様、勉学についていけなくては夏休み補習に参加させられてしまうぞ?」


犬神「勉学なんて神には不要だよ。そんなのも当然出ないからな。」


上杉「ふむぅ、そうなるとこの学園の編入は厳しいようだな。せっかく、特別に良い教室を手配してたのだがな。」


犬神「な、なんだよ‥その良い教室って?」


上杉「‥まあ、伝えるくらいは良いか。こほん、実はエルゼくんが居る教室に編入させようと思っているのだ。」


シャル「ふえっ?なんでそれが特別に良いのだ?」


上杉「うむ、あのクラスはズバ抜けて生徒間の仲が良い。それに顔見知りもいてちょうど良いであろう?」


シャル「な、なるほどなのだ。」


シャルに取って一番気持ちが分かる話であった。編入したてのシャルも、顔見知りのギールが居たお陰で今があるのだ。



すると犬神は尻尾をブンブン振り回し大きく反応した。


犬神「そ、それは本当なのか!?」


上杉「うむ、しかし‥犬神様はこの学園にはふさわしくないご様子。関係のない話ですが。」


犬神「うぐっ、す、すまない!先の非礼は詫びる‥だから‥その‥この学園に入れてくれ!」


あれほど不満になってた犬神が、今度は頭まで下げる事態になった。


憲明「すげぇ、掌返しだ‥。」


小頼「おやおや~?これはもしや~♪」


小頼はこの犬神の反応に勘が働いた。

そう、犬神はエルゼのことを気になっている、恋の予感を察知したのだった。


なぜ、上杉校長がそこまで察知していたのかはわからないが、取りあえずクラス分けは完全に決まり、二人の正式な編入は来週からとなった。



それから一行は校長室を後にし異種交流会の部室へと向かった。


廊下の突き当たりに差し掛かると横からリードらしき物を持った桜華が出てきた。


小頼「あ、桜華ちゃ~ん♪」


桜華「ん?あ、小頼ちゃん♪」


小頼の呼び掛けに桜華が笑顔で答えると、その後ろから首輪をしリードで繋がれ、ボロボロの桃馬が出てきた。


その光景にその場が一気に凍りついた。


加茂「お、桜華お姉ちゃん‥な、何してるのですか?」


桜華「‥クスッ、お仕置きかしらね♪」


涼しげな笑顔で答えるその姿は、より恐怖を駆り立てた。


シャル「お、桜華‥怖いのだ。」


小声で本音が漏れると、桜華は耳をピコピコ動かしシャルに尋ねた。


桜華「わふぅ~?なにが怖いのかな~シャルちゃん♪」


シャル「ひっ!?あ、それは‥ご、ごめんなのだ~!」



まずい‥シャルのお尻を触ったことがかなりキテるようだ。少しでも気に障ることがあれば‥桃馬見たいになる。

憲明は生唾を飲んだ。



桜華「クスッ♪それより皆さんがここにいると言うことは手続きが終わって部活へ向かってるんですよね♪」



‥‥‥。



まさかの全員桜華を恐れて誰も答えなかった。

シャルと小頼に至っては憲明任せにしており、ジーっと憲明を見ていた。


気まずくなる空間に、憲明も心の中でツッコミまくっていた。


おいおい、どうするんだよ‥。

俺も人任せにしたのは悪いけど、シャルと小頼も俺と同じ考えかよ‥。

くそぉ、今更答えようにもタイミング見失ったし‥でも、このまま黙ってたらもっと機嫌を損ねてしまう。


沈黙から五秒。


痺れを切らした桜華は、どこからか棍棒を取り出した。


桜華「ですよね♪」


棍棒の頭を廊下に"カーン"と叩き、再び問いただした。


憲明「は、はひっ!今から部室に行きます!」


桜華「クスッ♪みんな黙るからビックリしちゃったよ~♪」


びっくりしてるのはこっちなんだけど、それより桃馬はなに魂抜けた顔してるんだ!?



桜華「さぁ~♪桃馬~♪また耳を"はむはむ"されたくなかったら歩きなさい♪」


桃馬「うっ‥わ、わかってる。」



桜華はリードを引っ張り校内散歩を続けた。



シャル「ど、どうなっておるのだ‥お、桜華の性格が豹変しておるではないか!?」


憲明「シャルのお尻を触っただけでここまで変わるか‥、やばいな。」


シャル「っ、ポチ!お主はこうなることを知ってたのか?」


犬神「わふっ!?シャル様はご存じなかったのですか!?わ、我はてっきり分かった上で話していると思って‥。」


シャル「た、たた、大変なのだ!?穏やかになるどころか殺伐のしているのだ!?ポチよ!はよ元に戻すのだ!」


素晴らしいと思っていた犬化計画であったが、ここに来て重要な欠点を発見した。

天国のような"もふもふ"ライフは最初だけで、しかも他人をもふれば痴漢とあまり変わりないことがわかった。感覚に個人差はあるとは思うが、このままでは縄張り意識を持ち始め、争いの素になりかねない。やはり、今までより良い物はないとシャルは思った。


しかし‥犬神は良いずらそうに答えた。


犬神「えっと‥シャル様‥非常に言いにくいのですが‥直ぐには戻せません。」


シャル「なぬっ!?」


憲明「えっ!?」


小頼「ふえっ!?じゃあ一生このままなの!?」


犬神「そ、そうではない。お主たちのその姿は我の神力で形成されている。例え我の神力でも神力は神力、戻すのにはそうであるな‥早くて一週間はかかるな。」


憲明「い、一週間‥その間に性格が変わるかもしれないのか。」


小頼「ど、どうしよう、お母さんにもし噛みついたら。」


シャル「うぅ、ど、どうにかならぬのか?」


さすがに責任を感じ始めるシャルは、犬神に再度良い案がないか聞いてみるが、答えは同じであった。すると、加茂様が手を上げた。


加茂「あ、あの、僕の力を合わせれば何とかなるかも。」


シャル「おぉ!加茂~!手を貸してくれるのか!」


加茂「う、うん。いつもの優しい桜華お姉ちゃんには戻ってほしいからね。」


シャル「うむうむ!それではポチよ!早速取りかかるのだ!」


犬神「え、えっと‥今からですか?」


シャル「なんじゃ?異論でもあるのか?」


犬神「‥ここでは人が多いです。もし暴発すれば他の人にも伝染します。できるなら、狭いところでまとめてやりたいです。」


憲明「犬神様の意見も一理あるな。ここは魔法もバンバン飛び交うし、反射して何かあれば大変だからな。」


シャル「なら、部室へ急ぐのだ!」


一事は一週間近くそのままと宣告されるも、加茂様の意見によりその日の内に何とかできる希望が照らされたのであった。



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