第百五十七話 流行る犬化
ジェルドとエルゼが日課にしている小頼のお迎え。昨日はシャル絡みで色々あったが、今日もいつもと変わりのない日々が始まると思っていた。
そう‥今日も変わらない日が‥。
ジェルド「お~い、小頼~、迎えに来たぞ~?」
エルゼ「わふぅ~♪おはようございます~。」
いつも呼べば直ぐに出てくるのだが、今日に限っては出てこなかった。
エルゼ「わふぅ?来ないですね?」
ジェルド「珍しく風邪か?おーい、」
再び呼ぶと、玄関の扉から小頼の母が顔を出した。
小頼母「お、おはようジェルドくん♪もうちょい待っててね♪小頼~、いい加減部屋から出て来なさーい?」
ジェルド「えっと‥風邪ではないのですね?」
小頼母「一応そうみたいなんだけどね‥。珍しく朝から騒がしくてね。聞いても大丈夫とか言って籠りっぱなしなのよ。」
エルゼ「わふぅ~、それは心配ですね?」
ジェルド「昨日の部活で変な物でも食べたとか?」
騒がしいのはいつものことではあるが、流石に朝から騒がしいとなると心配である。
すると良いことを思い付いた小頼母が、二匹にお願いを持ちかけた。
小頼母「あっ、そうだ♪よかったら二人とも上がって説得してくれないかしら?」
ジェルド「えっ?ま、まあ、良いのですか?」
小頼母「えぇ♪」
小頼「よくなーい!」
ジェルドたちが入ろうとすると、小頼が勢いよく駆け降りてきた。
すると、三人は小頼の姿を見て驚愕した。
なんと小頼は、茶色い犬耳と尻尾を生やしていたのだ。
小頼母「あ、あらあら?ハロウィンにしては気が早いわね?」
小頼「コスプレじゃないわよ!朝起きたらこんな"もふもふ"が生えてたのよ!?」
小頼母「まさか~、昨日の夜はなかったのに、一夜で映えるものなのかしら?」
小頼母は、疑いながらも小頼の尻尾に触れる。
すると小頼は少し"ピクン"と跳ね体を震わせた。
小頼「んんっ‥。」
小頼母「それにしても良くできてるわね?」
小頼「だ、だから、本物だって‥わふっ。」
小頼の反応にジェルドとエルゼは本物だと直ぐに気づいた。演技とは思えない反応にジェルドは慌てて止めにかかる。
ジェルド「お、お母さんストップです!?こ、これは本物です!?」
小頼母「えっ?ジェルドくんはわかるの?」
ジェルド「小頼の反応を見れば分かります。これはコスプレじゃないです。」
小頼母「と、と言うことは‥ゴクリ、孫はもふもふで確定ってことね!」
ジェルド「っ、そっちを気にしますか。」
小頼母「当然よ~♪普通の人型でもいいけど、今の時代はもふもふっ子も捨てがたいからね~♪むしろ、ジェルドくんとしたいわ♪」
ジェルド「ふぇ?」
小頼「な、何言ってるのよ!?」
小頼母「冗談よ♪こんなおばさんじゃ釣り合わないもんね♪」
さすが小頼の母だ。
考え方は小頼よりもぶっとんでいた。
ジェルドは小頼のお父さんと会ったことがないため、ある意味どんな人なのか凄く気になるところであった。
ジェルド「こ、こほん、と、取りあえず学園に行こうか。その姿になった心当たりがあるからな。」
小頼「も、もしかしてオカルト部の仕業とか!?」
ジェルド「オカルト部?い、いや違うけど、いきなりどうしたんだ?」
小頼「実は昨日、例の犬の集会の噂を突き止めようとオカルト部に行ったんだけど‥盗撮がバレて摘まみ出されたんだよ~。それで、もしかしたら仕返しかと思って‥。」
ジェルド「あぁ~、確かにその噂はオカルト部から発信してるけど、実際は納涼祭で披露する怪談話が漏れて広まっただけみたいだぞ?」
小頼「ふぇ!?ガセネタなの!?」
ジェルド「まあ、そうなるな。」
小頼「じゃあ、盗撮の仕返しの件は!?」
ジェルド「‥違うと思うけど、それよりオカルト部を敵に回すようなことはするなよ。」
小頼「うぅ、ごめんなさい。でも‥どうしてこの姿になったのかな。」
ジェルド「それを確認しにいくから、早く制服に着替えて来いよ。」
小頼は今の姿を冷静に見ると下着と制服用の長袖シャツ一枚であった。
珍しく赤面するや、もうスピードで自室に戻り支度をしたのだった。
そして不安になりながらも二匹と共に登校したのだった。
小頼「うぅ、私だけだったらどうしよう。」
ジェルド「‥小頼のお母さんが犬化してないとすると、俺の心当たりが当たってるか、やっぱりオカルト部か、あるいは、変なのを食べたかだな。」
エルゼ「お兄ちゃんの心当たりって犬神様とシャルお姉ちゃんのこと?」
ジェルド「まあな、十中八九そうだろ。ん?いや、待てよ‥もしそうなら、桃馬も犬化してる可能性があるな。」
とうとう、触れてはいけない領域に踏み込んだ。ジェルドは頭のなかであれやこれやと妄想を働かせ、最終的には交◯まで考え、興奮のあまり尻尾をブンブン振り回した。
すると、やはり運命なのか目の前に犬化した桃馬が現れた。しかし、女体化してることもあり顔立ちも少し違っているため、ジェルドは直ぐ桃馬だと認識できなかった。しかも隣には、犬化した桜華もいたため更にわからなかった。
だが、ジェルドは目の前に映る黒髪けも耳クール美女(桃馬)に釘付けであった。
エルゼ「わふぅ~?あんな綺麗な人今までいたかな?」
小頼「な、何あの二人!?す、凄く可愛い!」
ジェルド「‥あ、あぁ‥。」
な、なんだこのトキメキは‥、と、桃馬でも小頼でもないのに‥い、いかん。これでは二股を通り越して浮気だ!‥でも‥‥。
生唾をのみ、自慢のヴォルケーノを押さえ込み平然を装った。
すると、どこかで見たことがあるような桜色のけも耳美女がこちらへ振り向くや手を振ってきた。黒髪の人は慌ててるようにも見えたが、小頼とエルゼは釣られて手を振り返した。
エルゼ「桜色の人、桜華さんにそっくりですね?もしかして、桜華さんとか?」
小頼「あり得るかも!桜華ちゃ~ん♪」
人違い上等、小頼は大きな声で桜華を呼びながら駆け寄った。
桜華「小頼ちゃんおはよう♪小頼ちゃんも犬化してたんだね♪」
小頼「わふ~ん、よかったよ~♪犬化したの私だけかと思ったよ~。」
仲間がいて安心したのか、尻尾をブンブン振り回していた。
桃馬「‥小頼もか。と言うことは学園生徒を集中にしてるのか。」
小頼「わふっ?あなたもしかして桃馬?」
桃馬「あぁ、そうだよ。」
小頼「ふえっ!?う、嘘!?か、かっこよくなってるし、声も変わってる!?」
桃馬「何か失礼な言い方だな‥。」
どうやら小頼には男に見えているようだ。
これは幸い、これなら外見でばれることはない。あとは、女であることをばれないように元に戻れば万々歳なのだが‥第二の関門、ジェルドはどう出て来るか‥。
ジェルド「‥と、桃馬‥なのか?」
桃馬「そうだよ。それよりジェルド~?俺昨日言ったよな~?変なことしたら絶好だって‥。」
指の関節をボキボキならし駄犬に迫る。
ジェルド「ゴクリ‥い、いや‥し、信じてくれないと思うけど、お、俺はなにもしてないぞ‥こ、これは‥ギールとシャルと犬神様の仕業だよ。」
目の前にはジェルドに取ってドストライクな桃馬がいる。もしこれが女なら‥直ぐにでも押し倒したい。不純な駄犬は欲望に耐えるのに精一杯であった。
桃馬「やっぱり‥そうか。」
エルゼ「と、桃馬さんと桜華さんとっても可愛いです♪」
桜華「わふん♪ありがとうエルゼちゃん♪」
桃馬「か、可愛いはよしてくれよ//。」
エルゼの純粋な一言に恥ずかしがる桃馬にジェルドの理性にヒビが入る。
今桃馬に飛び付けばどうなるかはわかっている。
だがしかし、本能には逆らえなかった。
ジェルドは絶交される覚悟で桃馬に飛び付いた。
ジェルド「と、桃馬~♪」
桃馬「っ!ジェルド!?な、なにをする‥わふっ!?」
ジェルドの両手が桃馬の胸に触れる。
さらしで巻いているとはいえジェルドの手の感触が伝わる。
桃馬「な、ななっ!?この駄犬がぁ!」
ジェルド「うわぁぁっ!?ごはっ!」
桃馬はジェルドの腕を取り投げ飛ばした。
ジェルドは電柱に顔をぶつけその場に気絶した。
小頼「あはは、ジェルドも懲りないね~。」
エルゼ「はわわ、お、お兄ちゃん‥。」
桃馬「はぁはぁ、この淫獣め‥。いくよ、三人とも、今日もギリギリだ。」
四匹は気絶した淫獣を無視して、急いで学園に向かった。
この日ジェルドは妹からも見捨てられ、悲しく遅刻したのだった。