第百五十六話 "もふもふ"ところに性転換
天候に恵まれた翌朝のこと、
俺はもっふもふの何かに抱きついていた。
それはジェルドやギールの尻尾のように肌触りがよく、しかも良い香りがする素晴らしいものであった。
?「わふぅっ♪んんっ~。」
空耳だろうか、女の子の淫靡な声が聞こえた気がする。そうだ、これはまだ夢だ‥そう‥夢の‥はず。
桃馬は目を開けると、そこには見覚えのない綺麗な桜色の尻尾の様な物があった。
桃馬「‥なんだこれ。」
桃馬は寝ぼけながらも、肌触りの良い尻尾の様な物に触る。
?「ふあぁん♪」
桃馬「っ!?」
またさっきの女の子の声だ。
桃馬は声がした方に顔を向けると、そこには桜色の髪にけも耳をピコピコ動かして寝ている美女がいた。
桃馬「わふっ!?あいたっ!?」
見覚えのないけも耳っ子に驚き机に頭をぶつける。
桃馬「いってて‥ん?なんだ‥頭に何か‥。」
頭を打った所を手で擦ると、感じたことがある手の感触と、感じたことのない不思議な感覚を感じた。
それに思いの外、胸辺りが重い気がする‥。
全く母さんめ、昨日の夕飯に変なの入れたな。
後で問いただしてやる‥‥じゃない!?
まずは目の前の子は誰なんだ!?
桃馬は恐る恐る起こしてみる。
桃馬「あ、あの‥すみません。」
?「んんっ‥ふへぇ?あぁ~♪とうまぁ~♪おはよう~♪」
桃馬「‥えっ?ま、まさか桜華!?」
横顔だけではわからなかったが、しっかり顔をミルトン桜華だと直ぐにわかった。
桃馬「お、桜華大変だよ!?桜華に耳と尻尾が生えてるよ!?」
桜華「ふへぇ~?それなりゃ、桃馬も黒い耳と尻尾が見えるよ~?それに少し女の子っぽい~♪」
桃馬「み、耳?尻尾?お、女の子‥ま、まさか。」
桃馬はまずは頭、そして尻辺りを触れると確かに何か生えている‥そして、信じたくないが胸を見ると‥程よく膨らんでいた。
いやいや、落ち着け俺‥、俺は男‥し、下をさわれば‥でも‥この感じは‥。
恐る恐る桃馬は下半身のヴォルケーノに触れようとするも‥‥なかった。
何度触っても‥なかった。
桃馬は慌てて洗面所へ向かう。
桜華「わふぅ~♪すぴ~♪」
ここまで洗面所の鏡を求めたことはなかった。
だが、今は今の自分が気になってしかたがなかった。
桃馬は勢いよく洗面所に着くと直ぐに鏡を見た。
すると目の前には、黒く長く伸びた髪に、黒い犬耳、そしてもふもふの立派尻尾。そして‥女の象徴たる胸とギールの母ケトーさん見たいなクールな顔立ちになっていた。
何度見直しても変わることもなく、完全にギールとジェルドに襲われるために生まれたようなパーツであった。
あいつら‥犬神様に何吹き込みやがった!
神社から離れれば助かるんじゃないのかよ。
くそぉ‥今でも問い詰めたい‥でも‥このままだと‥昼休みと放課後には‥うぅっ!?考えるだけでも寒気がする。
ちょっと待てよ‥桜華もなってるとなる‥もしかして母さんも!?
桃馬の脳裏は朝からオーバーヒート寸前であった。取りあえず一旦部屋に戻り体勢を立て直そうと顔を上げると、鏡に映る自分の真後ろに凄い眼力で見つめる母雪穂がいた。
桃馬「わふっ!?か、母さん!?」
雪穂「あら?やっぱり桃馬なの??」
桃馬「う、うん‥。それより聞いてくれよ!朝起きたら俺と桜華がこんな姿になってて。」
雪穂「へぇ~♪そうなんだ~♪じゅるっ。」
桃馬「は、話聞いてる!?」
まずい、母さんの悪い癖が始まってる‥。
まさか息子の俺でも女体化しただけで、容赦なく襲う気かよ!?
桃馬は初めて女性目線で母の恐ろしさを痛感した。
見たところ母さんには犬耳や尻尾は無さそうだ。やはり、シャル、ギール、ジェルドが原因だと思った。
しかし、犯人を特定しても今置かれているピンチに変わりはない。
桃馬は抵抗を見せるが、結局救いはなかった。
雪穂は容赦なく息娘である桃馬の胸を揉みし抱き、女の快楽を教え込んだ。
いつも桜華はこんな風にされていると考えると‥、次から全力で止めようと思うのだった。
桃馬「うぅ、もうお嫁にいけない‥。」
雪穂「いや~♪桃馬も可愛く鳴くわね~♪今日はジェルドくんとギールくんに気をつけないとね♪」
桃馬「今日は心に傷を負ったので休みます。」
雪穂「だーめ♪」
雪穂は桃馬に忘却魔法をかけ、襲われた記憶を綺麗に消したのだった。
桃馬「はぁ、ん?あれ、俺何してたんだっけ?」
雪穂「桜華ちゃんのとこに行くんでしょ?」
桃馬「あっ、そうだった!」
桃馬は急いで部屋へと向かった。
雪穂「クスッ‥血は争えないわね♪受けは私似ってところかしら。」
雪穂は息子の意外な素質にちょっとした期待をするのであった。
部屋に戻った桃馬は、自分のもふもふの尻尾を触りながら悩んでいた。
ど、どど、どうしよう‥。こんな姿‥みんなに見せられないよ‥。
ほんとあの駄犬め‥変なことしたら絶交だって忠告してたのに‥俺を力技で押さえ込んで堕とす気だな。くそぉ‥ここに来てエ◯ゲーあるあるかよ。ここで堕ちたら元に戻っても‥うぅ、な、何想像してるんだ俺は‥。
と、取りあえず今日は‥あの駄犬に女ってことがばれなければそれで良い。
桃馬が必死に作戦を立てるなか、朝に弱い桜華はまだ眠っていた。
桃馬はその隙に少し自らの体を堪能した。
※母に弄ばれたことは、魔法で記憶を消されてます。
数十分後
桃馬と桜華は登校準備を整え、朝ごはんを食べに下に降りると、案の定雪穂は桜華にメロメロになりもふり始めていた。
雪穂「ふぁ~♪桜華ちゃん可愛い~♪このもふもふたまりゃない♪」
桜華「わふぅん♪くすぐったいですよ♪」
桃馬「‥‥もぐもぐ。」
薄々気づいていたが、どうやら性格も行動も少し犬化しているようだ。
俺に至っては声すら女の子みたいに変わっている。しかも、気が緩んだら"わん"やら"わふっ"とか言いそうになる。
桃馬「ごちそうさま。桜華も早く食べろよ?」
桜華「わふぅ~♪」
だめだ‥完全に母さんに毒されている。
今の時間は七時五分。人目を避けるためにも、早く家から出たいところだが‥。いつも通りになりそうだ。
その後予感は的中、
桃馬と桜華はいつも通りの時間、つまりジェルドと鉢合わせする時間帯である。
桃馬は、まわりを警戒しながら登校した。
それに比べて桜華はルンルン気分であった。
桜華「わふっわふっわふ~♪それにしてもこの姿はどうなってるのかな~♪」
ピンク色の尻尾をブンブン振り回し、朝に弱い桜華であるが、今日だけはテンションが高かった。
桃馬「十中八九、あの駄犬二匹とシャルのせいだよ。」
桜華「あはは♪やっぱりそうだよね~♪でも、それより~♪」
桜華は楽しそうに桃馬に近寄ると、
じっと顔を見つめ始める。
桃馬「ん?ど、どうした?」
桜華「桃馬って女の子になってもかっこいいな~っ♪」
桃馬「わふっ!?あっ、こ、こほん。か、からかうなよ。」
クールな顔立ちに少し男っぽい佇まいに、桜華は惚れ込む。
桜華「ねぇ桃馬~♪出来ればずっとそのままで‥、」
桃馬「それは嫌だ。」
見事な即答拒否。
桜華は更にお願いするも、桃馬の意思は変わらなかった。
するとそこへ‥‥、
問題の白い駄犬が現れるのだった。