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第百五十四話 犬の威を支配する魔王

毎度お馴染みのシャル案件。

今回もこの魔王様に振り回されるとになるのであろうか。



前回、突然シャルに飛び付いた犬神様。

見方によっては犬神様の逆鱗に触れたシャルが噛み殺されてるように見えたり、舐め回して懐かれているようにも見えた。


そんな中、神盟宮神社の神である小京(こまち)加茂様は意を決して友達であるシャルを助けに行くのだった。



加茂「い、犬神様お止めください!シャルちゃんの罪は私に免じてお許しください!」


犬神「わふぅ?」


シャル「ふぇ?加茂?」


加茂「あ、あれ?」


もっと悲惨なイメージであったが、想像以上に無事な姿に加茂様はその場に座り込み泣き始めた。


シャル「か、加茂どうしたのだ!?」


加茂「ふぇ~ん!無事でよかったよ~。」


加茂はシャルに泣きながら抱きついた。

加茂様が見えない三匹は不自然なシャルの体勢に疑問を感じてきた。


ギール「‥か、加茂様がいるのか?」


エルゼ「えっと、演技にしてはパントマイム効きすぎてますね。」


ジェルド「‥そ、それより‥これは許されてるのか?」


犬神「くぅ~ん♪ご主人様~♪」


犬神は再びシャルに頬擦りして甘え始めた。

そして不意に飛び出したご主人様発言に全員を驚かせる。


ギール「ご、ご主人様!?」


エルゼ&ジェルド「わふっ!?」


全員「えぇぇぇ!!!?」


桃馬「うわぁ‥嫌な予感しかしない。」


桜華「ど、どうしよう。いきなりシャルちゃんが出世しちゃった!?」


桃馬「‥この世界は本当にシャルの気分次第で滅ぼされるかもな。明日から少し距離を置こう。」


桜華「あ、あはは‥離れた分、更に近寄りそうだけどね。」


この先の展開を予想するに、全世界の犬科の種族たちは、皆シャルの前に(ひざまず)くであろう。


それならば早く滅びの言葉を調べなければならない‥。


こんな最悪の事態にとある、リーダー格の三年けも耳男子は声を上げた。


三年けも耳男子「犬神様の主が‥あ、あのギールくんの妹とは‥これはすごいぞ!ギールくんを筆頭にすれば我々の計画がうまく行くぞ!」


ギール「なっ!?せ、先輩!?何勝手なことを!?」


ギールの意見は置いといて、本殿前ではギールコールが流れた。増して、計画に関係のない人も釣られてギールコールが響いた。


注意

あくまでも、この計画は春桜学園内の話なので、一般に暮らす犬科種族たちは関係ございません。



これによりギールとシャルは学園内でも、かなり位の高い地位に座ることになったが、更にこの出会いが複雑な関係を引き起こすことになることはまだ知らないことであった。



そんなこんなでギールが持ち上げられている頃、シャルと犬神様は再開を喜んでいた。


シャル「お、お主‥本当にあのポチなのか?」


犬神「わふぅ~♪そうですよ♪あと、えいっ。」


犬神様が見事なバク転を見せると、着物を着た加茂様に負けず劣らずの、茶髪のけも耳美少年が現れた。


シャル「おぉー!!その姿はまさしくポチなのだ!」


犬神「えへへ~♪シャル様~♪なでなでしてください♪」


すこぶる可愛さを武器に、犬神は見せつけるように甘えまくった。


すると不思議そうにエルゼが犬神様を見ていた。


エルゼ「わふぅ~?」


ジェルド「どうしたエルゼ?羨ましいのか?」


エルゼ「わふぅ~♪あれこそ(まこと)の忠犬ですね♪」


ジェルド「えっ?あ、あれ‥じゃなくて‥犬神様のか?」


エルゼ「はい♪純粋下心なし、そしてただ主に仕える忠実性!まさに、ハチ公様の様です!」


兄と違い、忠実な忠犬を目指しているエルゼに取ってこの瞬間はかけがえのない物であった。


一方の兄は、

あんな風に甘えればきっと桃馬は心を許してくれる。そしてその時が押し倒すチャンス!


ご覧の通り汚れていました。




加茂「シャルちゃんと犬神様がお知り合いだとは驚きです。」


シャル「ぬはは、世界はぜんぜん狭いのだ♪」


犬神「はぁはぁ♪シャル様と離れて幾百年、魔界に戻ればシャル様は居なく、やむ終えず宛のない旅を再開しました。そしてまた数百年経ち、この融合した世界が生まれやっとお会いできました~♪」


加茂「そ、そんなにですか!?」


犬神「うむ!そして余は色んな世界を見てきたのだ。やはり、犬科の種族が一番素晴らしいと気づいたのだ!そして、一月前に若き犬の声を聞き入れこの地に舞い降りたのだ!」


半ば強引にまとめられた感じはあるが、事の発端は何となく理解できた。


すると、一人のリーダー格のけも耳男子が本題に入った。


三年けも耳男子「犬神様!恐れながら申し上げます!」


犬神「わふっ?うむ、申してみよ。」


三年けも耳男子「は、はい。先ほど犬神様は我ら種族が一番と仰いました。されば、我らの人類犬科計画にお力をお貸しください。」


犬神「ほほう~、それは最終的には全ての種族を犬科にするのだな?」


三年けも耳男子「その通りであります!」


犬神「それは出来ぬな。」


三年けも耳男子「な、何故ですか!?」


まさかの受け入れ拒否に、犬科の種族たちは驚いた。しかし、次の犬神の言葉にみんな納得した。


犬神「犬の主は犬にあらずだよ。例え我らが一番と言っても、今ある秩序を壊すことは混乱を生むだけだよ。」


三年けも耳男子「‥わ、私たちの考えは浅はかでした。」


リーダー格の三年けも耳男子が落ち込むと、犬神は一つの提案を持ちかけた。


犬神「だが、全てではなく、一部になら力を貸そう。犬の気持ちを知ってもらうのも大切であるからな。」


まるでプチ講習会みたいな感じで話す犬神に、犬科の種族たちは遠吠えで称賛した。


桃馬に取って最悪な展開であった。

一部なら、すなわちピンポイントで犬にさせられジェルドとギールのおもちゃにされる可能性がある。


桃馬「まずい、ここにいたら何されるかわからない‥桜華逃げるよ。」


桜華「ふぇ!?あ、ちょっと~。」


桃馬は桜華の手を取り神社から逃げるように去った。


シャル「なるほど、その者の気持ちになれば更にわかり合えると言うことだな!うむうむ、余も賛成だ~♪明日から余も犬になるぞ~♪」


ギール「なっ!?何勝手なこと言ってるんだ!?お前が犬になったら、めちゃくちゃになるだろうが!?」


ギールが猛反対していると、さっきまで絡みがなかった犬神がキリッとした顔立ちで威嚇した。


犬神「‥おい、お前、ご主人様になれなれしいぞ?」


ギール「わふっ!?」


シャル「こら犬神やめるのだ。このギールは一応余の兄なのだ。危害を加えることは許さぬぞ?」


犬神「っ!こ、こんな犬がですか!?(はっ、さっき加茂にもふってもらった時も‥ギールって言ってたような‥。わふっ!わ、わかったぞ!ご主人様と加茂はこいつに(そその)されているんだ!こ、この身の程知らずの駄犬め‥許さないぞ。)」



犬神は更にギール対して敵意を剥き出しにする。


対するギールは襲いかかる殺気に堪えていた。


その様子を察したのか、身の危険を感じた春桜学園のけも耳生徒たちは、直ぐにギールをいつもの位に戻した。いや、むしろ下げたのだった。


犬神「よ、余は決めました!余はご主人様と暮らします!」


シャル「ふぇ!?い、いきなりどうしたのだ?!」


犬神「よ、余はご主人様に近寄る害獣を駆除しなければなりません!」


ギール「が、害獣って‥。」


シャル「し、しかし、今余が住んでるところは、ギールの家だしな‥母上にも許可もとらねばならないし‥難しいぞ?。」


犬神「なっ!?なら、この犬を追い出せばいいではないですか。」


ギール「ちょっ!?なんで俺が追い出されるんだ!?」


身勝手な発言に、さすがのギールも犬神に噛みついてしまった。


犬神「犬神である余に歯向かうとは良い度胸だな!」


ペットは飼い主に似る。

今の犬神は約二ヶ月前の傲慢なシャルと同じであった。そのせいか、罪悪感がなく歯向かえれたのだった。


この堂々とした姿にギールの低迷した株が回復し、ギール対犬神へと話が大きくなった。


加茂「あわわ、シャルちゃん!?見てないでギール様を止めてくださいよ!?」


シャル「うーん、もう少し様子を見るのだ♪」


加茂「ふぇぇ!!?」


睨み合う二匹の展開にシャルは微笑み楽しんでいた。


ギール「ふっ、いくら世界を見てきても常識は学ばなかったようだな?俺より長く生きてるのに、歳は見かけだけのようだな?」


犬神「な、なんだと!?」


ギールの渾身のストレートが犬神の心にヒットする。更に攻めては容赦なく襲いかかる。


ギール「俺から見ては、さっきの甘え方は品もなくて駄犬ぽかったですよ?まるで、お花畑にでも放たれた犬のようでした。」


犬神「うぐっ!」


ギール「最後にはっきり言おう俺たち犬はな、駄犬であることを誇りに思ってるんだよ!だからこそ、真の忠犬なんかじゃないのか!」


犬神「うぅ。」


ギール「威厳と力に囚われきゃふん!?」


犬神「わふっ!?」


頃合いと見たシャルが二匹の尻尾を強く握る。

すると二匹の力は抜けてその場に倒れ込んだ。


シャル「二人ともそこまでだ!ギールは少し頭を冷やせ!ポチもこれ以上喧嘩するな!」


ギール「うぅ。」


犬神「でも‥このままでは‥示しが‥。」


シャル「余と暮らしたいのなら、そんな神の思想は捨てるのだな。」


犬神「わふっ!?そ、そんな!?うぐぐっ。」


犬神は苦虫を噛み締めたかのような表情でギールを睨んだ。

するとそこへ犬神に取ってもう一人顔見知りが現れた。


豆太「あ、あの犬神様‥。」


犬神「ん?あっ!豆太ではないか!?草津の温泉地から出てきたのか?」


豆太「は、はい♪社外勉強でシャルお姉ちゃんと一緒に暮らしています。」


犬神「なっ!?シャル様と一緒‥と言うことは。」


犬神はまたギールを睨み、あることを悟った。


このギールと言う犬は自分が望むものは全て奪い去る天敵であると。


そこで犬神は覚悟を決めた。


犬神「わ、わかりました。僕は‥い、犬神ではなく、ぽ、ポチとしてシャル様にお仕えします!」


シャル「うむ!大歓迎なのだ♪」


ギール「‥勝手に決めて、母さんと父さんが許すと思うか?」


徐々に話はフォルト家の事情へと変わり、人類犬科計画の話は薄れていった。


その代わり外野では、慣れたような展開に学生たちは興奮していた。


けも耳女子「は、はわわ!?こ、これは三角‥いや、四角関係です!」


女子「はぁはぁ、けも耳ショタ神様がギールと張り合ってる‥かわいい~♪」


男子「こ、これはすごい!ギールのやつ神様と張り合ってやがる!」


だが、むしろ犬神様がギールの家に住み込めばいつでもこの計画が実行できると、けも耳生徒たちは思った。


その後は残念ながら、すぐに一般生徒たちが、けも耳と尻尾を得られることはできなかった。


計画の序盤は失敗したと思えたが、それ以上に良いものが得られたと喜ぶ犬たちであった。

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