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第百四十八話 新井田祭り編(12) 終祭

不可抗力にも加茂様の胸を再び揉みしだいた駄犬ギールは、嫉妬にまみれたシャルに殺されそうになっていた。

一時は見捨てた桃馬であったが、大切な駄犬を殺させまいと慌ててシャルの前に立った。


やはり、シャル絡みのトラブルは物凄く危険であると改めて思い知らされた。



桃馬「は、話を聞いてくれシャル!?加茂様はギールの事を好いているようだ。だ、だから、胸を触ったくらいじゃ怒らないかと‥うわっ!?」


話の途中にも関わらず、シャルは魔弾を放ち桃馬の顔をかすめた。放った先は爆発はせず、一応近所迷惑は考慮してるようだ。

って、感心している場合ではない!?


シャル「そんなの‥どうでもいいのよ。余を差し置いて‥加茂に腰を振るなど‥許せるわけないだろ??」


桃馬「は、ははっ‥な、なるほど‥シャル‥様は、ギールと加茂様に嫉妬なされてるの‥ですね。」


シャル「当然だ。余はギールを愛している。誰にも渡したくはない。」


おおっと‥これはこれは‥。

ギールの前でシャルは堂々と告白する。

完全に嫉妬心が強すぎて暴走しているように見える。(いささ)かシャルの姿が元の色っぽい姿に戻っている気がする。


ギール「‥しゃ、シャル‥。俺のことを‥そんなに。」


桃馬「よ、良かったな~、ぎ、ギール。い、妹からの愛の告白だぞ。」


あまりの恐怖から桃馬は声を震わせた。

桃馬はギールを前に差し出した。


ギール「わ、わふぅ!?な、なにを!?」


桃馬「ほ、ほら‥と、取りあえず仲直りだ。そ、それに‥シャルも襲ってほしいとか言ってたろ?いっそのこと押し倒せよ。」


桃馬はギールの耳元で一つの提案を持ちかけた。


ギール「はぁ!?そんなの無理に決まってるだろ‥今襲ったら‥肉団子にされるぞ。」


桃馬「そ、その時は‥その時‥ほら、シャルを襲うなら今がチャンスだ。」


ギール「なっ‥他人事見たいに言いやがって‥。」


シャル「二人とも‥なに話してるの‥?」


怪しい"ひそひそ"話をしている二人に、シャルはイラついていた。


桃馬「あ、いや、こほん、よ、喜べシャル♪ギールがこれから襲うそうだ!」


ギール「はぁっ!?ごふっ!?」


否定してくることを予想していた桃馬は、有無も問わずにギールの横腹を突いた。


桃馬「あ、あらあら、襲うどころか‥これじゃあ、シャルに襲われちまうな?」


ギール「うぅ‥な、何しやがる‥いてて。」


シャル「ほぅなるほど‥ギールに誰の男なのかを思い知らせるか。待つよりこちらから‥うむ、一理あるな。」


桃馬「そ、そうそう!ギールはMだから本当は襲われたいんだよ♪襲うのは自分より小さくて弱い子にしかできないへなちょこ犬だから‥躾と思って殺すのは止めてくれ。」


ギール「なっ!?また、何を勝手にふぐっ!?」


今度はシャルにみぞおちを殴られ気絶したギール。完全に元の姿に戻ったシャルは、ギールを抱えてどこかへと去って行った。



桜華「大変でしたね~。」


桃馬「桜華‥まだ寝ぼけてるね?まあ、一旦家に帰ろうか。」


桜華「ふぁ~い♪じゃあ、おんぶ~♪」


桃馬「はいはい、そらよっと。」


前から桜華は朝に弱いことはわかっていたが、ここまで弱いとは思わなかった。


二人は静かな神盟宮神社を後にするが、

新たな騒がしい犬が二人の前に現れた。


ジェルド「エルゼェェー!!!どこだぁぁ!!」


桃馬「うわぁ~、あまり会いたくない犬を見つけてしまった。」


桜華「スゥ‥スゥ‥。」


桜華は気持ち良さそうに眠っている。

桜華のためにもここは絡まれずに突破しよう。

全く、どうして俺に近寄る犬は朝から騒がしいのだろうか。


そう言えば最近二匹を散歩してないな‥。

まさか、それが原因なのか‥。いやいや、考えすぎだろう。


桃馬は下手な思い込みを捨て、ジェルドに気づかれないように遠回りだが迂回を選択した。


だが‥。


ジェルド「おい、どこにいくんだ‥はぁはぁ。」


あっさり捕まってしまった。


桃馬「うぐっ、ど、どこって家に決まってるだろ?それより朝から騒々しいぞジェルドよ?保健所に通報される前に静かにするんだな。」


ジェルド「そ、そんな静かにしてる場合じゃないよ!目が覚めたらエルゼがいないんだよ!」


桃馬「エルゼちゃんが?先に帰ったんじゃないか?」


ジェルド「そう思って家に行ったけどいないんだよ!ど、どうしよう。エルゼは可愛いから誘拐とかだったらどうしよう!?」



桃馬「‥自慢の鼻はどうなんだ?」


ジェルド「そ、それが‥他の匂いが混ざってわからないんだよ。」


桃馬「‥うーん、小頼はどうなんだ?」


ジェルド「今手分けして探してもらってるんだよ。」


桃馬「うーん、となると豆太くんと帰ったか。誰かに保護されたか。」


ジェルド「うぅ。保護って‥ほとんど誘拐じゃないか‥。わおぉーん!」


弱々しく悲しみ溢れる遠吠えを吠えた。


桃馬「わ、わかった。俺も探すから泣き止めよ。」


ジェルド「すまん頼む!エルゼぇ~!」


ジェルドは再び捜索に戻った。


あの様子だと昨日のことを完全に忘れているな‥。

それよりエルゼちゃんが心配だ。

何とか探し出せる術はない物か‥。


そんなこんなで考えていると、次は二人の美女が現れた。


ルイ「あっ、桃馬‥。」


エニカ「ふぁ~、あれ桃馬~?何してるの~?」


桃馬「ん?あ、エニカさんにルイさんおはよう。俺は今帰るところだけど、二人もまだ帰ってなかったんだな。」


エニカ「えへへ~♪この世界のお祭りが楽しくてね♪つい転た寝しちゃった♪」


ルイ「この世界の食べ物美味しい‥もっと食べたい。」


物凄くこの世界を謳歌している二人、恐らく近いうち元の世界に帰りたくないとか言う日が来ると思った。


エニカ「そうそう♪いっそお城ごとこの世界に移城させたいわ♪そうすれば戦とかなくて平和に暮らせるのにな~。」


ルイ「うんうん、ルイも賛成。ここなら安全に暮らせる。」


おいおい、思った早々に言うのかよ。

しかし、良い案かもしれないが、城ごととなるとリブル公国が日本領域の中に入り込むことになるため流石に無理がある。


桃馬「二人からそう言ってもらえると嬉しいのですが、流石に城ごと日本領域に入れるのは難しいと思いますよ?」


エニカ「わかってるわ、そんなことしたら世界のバランスが崩れちゃうからね♪」


ルイ「ふぇ、できないの?」


流石リブル公国の姫様だ。

冗談でもこの国が安全であることを証明してくれた。この関係がずっと続くことを祈りたいところだ。


ちなみに、ルイだけ本気だったようだ。

少し残念な表情を仔犬のように可愛く見えた。

そう、彼女の後ろで白い尻尾が左右に動き‥。


尻尾?


桃馬は幻かと思い二度見すると、確かにルイの後ろにあるはずのない、白いふわふわとした尻尾がある。


桃馬は不思議そうにルイに尋ねた。


桃馬「ん?んんっ?ルイさん?その尻尾は?」


ルイ「尻尾?あぁ‥エルゼちゃんのこと?」


ルイは背中で寝ている行方不明だったエルゼを見せた。


桃馬「エルゼちゃん!?え、えっと、一体どこで?」


ルイ「昨日の夜、迷子になってた。」


エニカ「そうそう、桃馬と話してたら忘れてたよ♪ジェルドって見てないかしら?」


桃馬「えっ?それなら今叫びながらエルゼを探してるけど‥聞こえなかったか?」


エニカ「あぁ~、さっきからかすかに聞こえるこれってジェルドの声なのね?」


ルイ「ジェルド、エルゼをすごく心配している。桃馬、すぐに呼び出せない?」


桃馬「えっ?まあいいけど。」


桃馬はスマホを取り出し"ゲイン"よりジェルドを呼び出した。すると、一分足らずで駆けつけた。


ジェルド「はぁはぁ!はぁはぁ!え、エルゼ~!」


ジェルドは妹との感動の再開に涙を流していた。


ジェルド「はぁはぁ‥よかった‥よかった~。」


桃馬「ほら、ジェルド?二人に礼を言えよ。」


ジェルド「あ、あぁ!エニカ、ルイ!妹を保護してくれてありがとう!」


さっきまで保護=誘拐と言ってきたのに、都合のよい犬である。


エニカ「これからははぐれちゃダメだよ?」


ルイ「エルゼは凄く良い子。だから、しっかり見てないとダメ。」


ジェルド「わ、わかった。二人とも本当にありがとう。早速小頼にも伝えないと。」


桃馬「全く‥騒々しいな。」


桜華「ふにゅ~♪」


これにより、大まかな騒ぎは完全に幕を引くことになる。本祭が終わり出店だけの今日は平和的に盛り上がったそうな。


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