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第百四十六話 新井田祭り編(10) 大制祭

新井田祭りの本祭が終わり、人々は後夜祭を楽しんでいた。特に祭りに参加した全カップルたちは加茂様の神力によって進まぬ恋路を進展させ、愛ゆえの行為に発展した例もあった。


その頃、早朝から桃馬の唇を奪い、色々あって撤去させられた駄犬ジェルドは、見知らぬ子供たちにもふり倒されていた。


ジェルド「わ‥わふぅ‥くぅーん。」


犬の姿でぐったりとし、そこには本人自慢の凛々しい狼の姿は全くなかった。

もとあと言えば、迷子になった女の子を慰めるために犬の姿になったのが運の尽き、子供たちは容赦のないもふり攻撃を仕掛けたのだった。


小頼「姿が見えないと思ったらこんなところに居たんだね~♪」


ジェルド「わふぅ‥はぁはぁ‥」


小頼「ありゃりゃ、これは完全に落ちてるね~♪」


小頼は蕩けてジェルドにトドメのもふもふを仕掛けた。


ジェルド「わふぅ~♪」


されるがままの駄犬には威厳もなかった。


小頼「だらしがない彼氏ね~♪エルゼちゃんが見たら幻滅ね♪」


ここでカメラをパシャりと撮ると、完全にジェルドは小頼の奴隷となった。


その頃、妹のエルゼは迷子になっていた。


エルゼ「わ、わふぅ‥桜華さん‥豆太くん‥お兄ちゃん‥どこ~。」


小さな白いもこもこは一人寂しく必死で顔見知りを探していた。

まわりを見渡すと自分より大きな人たちが密集し孤独と恐怖が一気に押し寄せて来る。


エルゼは思わずその場にうずくまってしまった。


目には涙を浮かべ、仔犬のように震えていた。


するとそこへ、大量の出店飯を持った赤髪の女の子が声をかけてきた。


?「君‥大丈夫?」


エルゼ「うぅ‥わふぅ?」


エルゼは恐る恐る顔をあげると、そこには不思議そうな顔をしている巫女服姿のルイがいた。


ルイ「君‥迷子?」


エルゼ「わふぅ‥うぅ、ルイしゃ~ん!」


安心したのかエルゼはルイに飛び付いた。

しかし、ルイは目の前の子がエルゼであるとは認識していなかった。


ルイ「どうしてルイを知ってるの?」


エニカ「こ、こら~ルイ!?また勝手に離れて!朝から目を放せばあっちこっちへと‥神輿奉納とやらが見れなかったではないですか!」


ルイ「エニカ‥怒るの良くない。これ食べて機嫌直して。」


マイペースなルイは、焼きそばを差し出しご機嫌を取りにかかった。


ここで小話。

実は朝から参加していたお二人ですが、現実世界に慣れていないルイはあちらこちらへ行列から離れては、興味がある物を見たり、出店があれば食いあさり、自由気ままに行動していました。それに加えエニカも多少なりはめを外していましたが、ルイの暴走は加速していくばかりで徐々に振り回され、ろくに楽しめなかったとそうです。


エニカ「そ、そう言う問題じゃありませんよ!?うぅ、みんなの活躍見たかったのに‥。」


ルイ「戦いよりご飯がいい‥はむはむ。」


残念そうなエニカを尻目に、ルイはたこ焼きを食べ始めた。


エニカ「うぅ、全くあなたは食べ物しか興味ないのですね‥。ん?あら?エルゼちゃん?」


ようやくルイにしがみついたエルゼに気づくと、しゃがんで声をかけた。


エニカ「エルゼちゃんどうしたの?もしかして、みんなとはぐれた?」


エルゼ「エニカひゃん‥うん‥。」


エニカ「ひゃう!?」


守ってあげたい感のある小動物に、エニカのハートは一瞬にして貫いた。怯えた姿が可愛さを引き立たせ、男女とはずメロメロにする破壊力だ。


エニカ「こ、こほん、えっと‥、取りあえず一緒に行動しましょうか♪」


エルゼ「い、いいのですか?」


エニカ「当然よ♪エルゼちゃんなら大歓迎よ♪」


思いもしない神からの贈り物。

もはや、神輿奉納の儀はどうでもいい。

目の前にいる小動物と戯れればそれで十分と思う単純姫様であった。


その後、エルゼは餌付けされ、丸一日デロデロに甘やかされたと言う。


結局ヴラント兄妹は、狼ではなく犬であった。

果たして誇り高い狼として認められる日が来るのだろうか。




そして‥とある広場には。

決着のついた二年六組の主導権争いに不服を唱えた尊重派がアリシアを人質に共存派を呼びつけていた。


志道「貴様ら‥結果が気に入らないからってアリシアを人質に取るとは卑怯だぞ!」


尊重派男子「卑劣は貴様らだろ!二年三組と微食会を買収しやがって!」


尊重派男子「そうだ!こんなの向こうに決まってるだろ!」


ジャンヌ「よくそんなことが言えるわね?無防備な共存派に対して武器を手にしたくせに。」


アンジェリカ「ほんと‥醜い負け惜しみね。」


勝てばそれで良い尊重派に何を言っても無駄であるが、あまりにも滅茶苦茶な言い分につい口を出したくなる二人であった。


尊重派男子「黙れ!この売人共め!」


尊重派男子「庶民と同じ道を歩むなどあり得ない!」


尊重派男子「弱き者は強き者にひれ伏す!これが通りだろ!」


心まで腐り果てた貴族たちの考えは到底理解できるものではなかった。

尊重派の男子は、アリシアに刀を向け強引に主導権をねじ曲げようとしていた。


志道「お前ら‥俺を怒らせるなよ。‥警告する‥今すぐアリシアを解放しろ。さもないと‥。」


大切なアリシアに刀を向けられ、志道は握り拳を作り尊重派を睨む。


尊重派男子「おっと、そう睨むなよ?別に俺たちは鬼じゃない。こちらの要件を大人しく飲めば解放してやるよ。」


ジャンヌ「そんなの信じられるわけないでしょ!」


アンジェリカ「そうそう、どうせ掌返しで騙す気でしょ?そんなの古いわよ?」


二人の反論に続いて共存派が反抗する。

すると、尊重派の一人が笑みを浮かべアリシアの巫女服を刀で切り、花火の灯りで可愛い下着を露にした。


アリシア「んんむっ!?」


志道「っ!アリシア!」


アリシアは声を出そうにも口を塞がれ、もがくしかできなかった。

卑劣な行為にキレた志道が単身殴りかかろうとする。


尊重派男子「おおっと動くな!それ以上来たら可愛い肌に傷がつくぞ?」


志道「っ!くっ‥貴様ら‥。」


尊重派男子「あはは!いいねその顔!たまらないよ!」


尊重派男子「弱き者をいたぶるのはたまりませんね~♪」


なにもできない志道に尊重派は高らかに笑い、要件を告げた。


尊重派男子「さてさて、早速要件を告げようか~♪」


尊重派男子「まずは土下座だ!ここまで俺たちに逆らったことを詫びろ!そして忠誠を誓え!」


志道「っ!」


ジャンヌ「そ、そんなの私情じゃないの!」


アンジェリカ「この外道‥め。」


尊重派男子「あはは!さぁ、やれよ!」


尊重派男子「いや、それは最後にしようぜ!ここは袋叩きにして、立場を思い知らせてからの方が効果的だと思うぜ。」


尊重派男子「それもいいな!」


尊重派男子たちは、ぞろぞろと志道の元へ歩み寄った。志道はなすすべもなく黙って要件を飲もうとした。


尊重派男子「くくくっ!そらよっと!」


志道「ぐはっ!」


一発目は腹部に拳が入り、志道はその場に膝をついた。


尊重派男子「おや?もうへばったか!」


志道「ぐあっ!」


次は横腹を蹴られ完全に倒れ込んだ。

あっけない姿に尊重派は高笑いし、次々と袋叩きにした。

ジャンヌとアンジェリカたち共存派たちも何することも出来ず悔しくも目を背けた。

するとそこへ一人の男子が声をかけた。


?「二人とも目を背けてはなりませんよ。」


ジャンヌ「えっ?」


アンジェリカ「っ、な、尚弥?」


近藤「しー、どうも。」


その男子の正体は微食会の近藤であった。

その後ろには、微量の闇に紛れて武装している二年三組がいた。


近藤「二人もこれを‥。」


近藤は坪谷勇二郎作、レイピアを二人に渡した。


ジャンヌ「で、でも、尚弥‥これをもらってもアリシアが人質では‥。」


近藤「安心しろ‥ほら、前を見てみろ。」


アンジェリカ「えっ?前?」


二人は言われるがまま、前を見るとスザクと四風椿がアリシアを救出していた。


これにたいして尊重派のバカ共は、志道に気を取られ気づいていなかった。


近藤「なっ?安心だろ?」


ジャンヌ「そ、そうですね。って、それなら早く志道を助けないと。」


アンジェリカ「そ、そうです。今から制裁を!」


近藤「それはもう少し待ってくれ‥そろそろかな。今年はスカッとする祭り締めだな。」


近藤が不適に笑うと、四方八方から怪しげな人影がぞろぞろと現れた。


尊重派男子「くくくっ!ほら、今どんな気分だ?」


尊重派男子「ほらほら、靴でもなめて許しを声よ!」


尊重派男子「許してくだひゃい。弱々しい子羊をお許しくださいって言えよ!」


直人「そうそう、俺たちは群れをなさないと何もできないくそ雑魚ゴミ虫ってな。」


葵「いやいや、肥溜めに群がるハエが良いだろう?汚い物を食らう害虫ですとね。」


尊重派男子「あはは!お前らうまいこと言うな!」


渡邉「売人は学園追放ものだよな。」


尊重派男子「ちがいねぇな!あはは!」


映果「いやいや~♪無様な姿は良い特ダネですね~♪」


尊重派男子「おう!もっと撮ってやれ!情けねぇ共存派を晒してやろうぜ!」


晴斗「いいや♪晒されるのは‥お前ら尊重派だよ。」


尊重派男子「あぁ?誰だ変なこと言った奴は‥っ!?」


弱い者いじめを楽しんでいた尊重派たちに強い光が照らされた。


尊重派男子「な、なんだ!この光は!?」


尊重派男子「ちっ、共存派の仕業か!おい!アリシアを痛めつけろ!」


アリシアを奪還されてることも知らずに声をあげる。

しかし、返って来たのは絶望であった。


直人「二年六組尊重派のゴミ虫に告げる。我ら二年三組、二年五組、他一部。二年六組の尊重派に宣戦布告申し上げる。」


葵「以下、拒否を認めることはない。往生(おうじょう)しやがれ!」


四方八方囲まれ、春桜学園の生徒他、他校の義憤に感じた生徒たちも参加していた。

ちなみに、デート中であった相川葵とシェリル・フェンリルは、直人に誘われ義によって参加していた。


志道「はぁはぁ‥来るなら‥もっと‥早く来てくれよ。」


晴斗「すまない、証拠を撮るために仕方がなかったんだ。」


志道「ふっ‥全く‥抜かりないな。」


直人「さぁ‥始めよう‥貴様らの最期に相応しい夜だ。」


直人が刀を抜くと、蒼い炎を纏い二本の鬼角に三本の金色の狐尾を生やした妖怪の姿へと変えた。

それに続いて、まわりも武器を手にした。


尊重派はさっきまでの威勢はなく、迫り来る恐怖に駆られていた。


いざ制裁の時、怒りに満ちた志道、ジャンヌ、アンジェリカに続いて共存派も武器を取り、一斉に尊重派に大制裁するのだった。





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