第百四十三話 新井田祭り編(7) 決戦!神輿奉納祭
これは昨日行われた二年三組守護会議の一部である。
いいか?
これは尊重派に対する最後のチャンスだ。
彼らが正々堂々と勝負をするなら俺たちも全力で援護する。
しかし‥もし不当な行為に走ったその時は容赦はいらない。俺の合図で"そいつ"でぶっぱなせ!
そして今‥。
目の前には不当にも刀を抜き、丸腰の共存派を制しようとする二年六組尊重派の姿があった。
直人「‥やはり‥救えぬ奴等だな。」
晴斗「もう‥撃っても良いよね?」
直人「まて‥もう少し‥。」
奏太「いくら待っても結果は同じだよ‥。」
直人「これは、人間観察の一環でもある‥しっかり見極めろ。」
奏太「だけどよ。どうせいつもの阿保と悪党は死ぬまで治らない理論だろ?他に何を見極めろってんだよ?」
直人「表情、仕草、口調、目付き、態度‥、行動でわかる前に相手の性格を読み取るんだよ。」
奏太「だけど‥人は見かけによらないって聞くぞ?」
直人「世間論に流されるなよ。そんなの全体の二割程度だ。人間の性格はこの五原則に出るんだよ。」
奏太「五原則ね~。どれどれ‥まあ、あいつらはほとんど似たようなもんだしな。」
少し脳筋な奏太はボヤキながら一人の尊重派を睨んだ。
晴斗「まあ一理あるよね。」
晴斗も適当な尊重派を監視する。
しかし、そう長くは観察はできなかった。
尊重派「ごちゃごちゃうるせぇよ!いくぞぉぉ!」
リーダー格の男が号令をかけると一斉に斬りかかる。
すると同時に直人から発砲の合図が送られると、二年三組の男子全員がバズーカを構えて発砲した。
更に同じくして微食会側からもロケットランチャーの制裁が始まった。
参道には爆音と爆煙と共に汚い悲鳴が響いた。
映果「おおっと!ここで両陣営からの制裁が決まった!やはり二年三組は尊重派を支持していなかったー!」
共存派は突然のことにポカンとしていた。
予想はしていたが、まさかまとめて吹き飛ばすとは予想外であった。
微食会と二年三組は、何食わぬ顔で飛び道具をし舞い込み、改めて位置についた。
桃馬「相変わらず恐れを知らないな‥。」
ギール「これで学園の危険文士に完全に入ったな。」
桃馬「だな。おーい、志道、ジレン!戻ってこいよ~!」
桃馬の呼び掛けに我に返ったのか、二人は慌てて戻ってきた。
暴走神輿が再び担ぎ上げられると、会場は大盛り上がりを見せた。
暴走神輿は一発目から勢いよく本殿へ向け突撃した。
しかし、手前に配置している相撲部、高田海洋を含む五人の壁に阻まれ摘まみ出される。
桃馬「相撲部は卑怯だろ!?」
志道「全くびくともしないな。仕方ない‥補助役を突っ込ませよう。」
ジレン「突っ込ませてもどうこうなる相手かな‥。しかも、越えても後ろに鬼がいるしな。」
ゴールは目の前にあるはずなのに、雲を突き抜ける山の頂の様に見えた。
いっそのことロケランで吹き飛ばそうと‥‥とある一部で考えたが、さすがにできるはずもなく、強引な突撃を三十分繰り返した。
状況は補助役の大半が相撲部によって蹴散らされ医務室へと運ばれた。対して守護側は三条晴斗が貧血で運ばれたくらいだろうか。
なかなか相撲部の壁を越えられない暴走神輿に本殿の守護たちはこぞって煽っていた。
奏太「どうしたどうした!全然突破できないじゃないか?」
男子「海洋~♪少し手加減してやれよ♪」
海洋「ふぅ~、これは良い稽古だ!!」
相撲部に至っては勝手に稽古感覚で鍛え始めていた。
映果「さすが、春桜学園相撲部!多くの補助役たちを張り倒し、三十分立っても崩れる気配がない!」
余裕な守護側に直人だけは深刻な顔をしていた。
直人「‥妙だな。微食会にしては大人しすぎる。何考えてやがる。」
奏太「珍しく諦めてるんじゃないのか?」
直人「‥それはそれでよくないけどな。警戒した方がいいだろう。」
直人の読みは当たっていた。
実際、微食会は相手が慢心し始める機を伺っていた。
のだが‥。
近藤「くくく、本殿暇そうだな‥はぁはぁ、」
渡邉「はぁはぁ、やっとだな‥。」
微食会はヘロヘロ状態であった。
本間「はぁはぁ、よ、よし‥あれやるか。」
近藤「よーし、桃馬!少し策があるから少し神輿を下げろ。」
桃馬「今から!?はぁはぁ、わかった。」
暴走神輿の補助役は本殿から距離を取ると、
微食会の渡邉、近藤、本間、番場、星野の五人が前にでた。
映果「おおっと!ここで微食会の五人が神輿から離れて前に出た!何を企んでいるのだ!」
海洋「おやおや~?五人で頭を下げてハンデをもらいに来たのかな??」
近藤「いや~、さすがにその陣営では勝てませんわ。」
渡邉「そうそう、ここはハンデとして相撲部には"退場"してもらいたいんですよ。」
海洋「あはは!珍しく大人しいな?でもだめだ。まだ始まったばかりだ。二時間でも三時間でもやろうじゃないか!」
本間「いや~、さすがに二、三時間も相撲部との取っ組み合いは飽きるだろ。」
番場「穏便に終わらせたいんだけどな~♪」
星野「という事で提案なんですけど、ここは一度趣向を変えてに一騎討ちをと思います。」
海洋「ほう?一騎討ちか‥まさか、敢えて敗けの提案をするとはな。」
鬼山「海洋俺にやらせろ。」
海洋「いいだろう、力の差を見せつけてやれ。」
鬼山「おうよ!」
名乗りを上げたのは相撲部序列二位、オーガ族の鬼山であった。
映果「なんと言うことだ!まさか、異例の一騎討ちだ!今年の新井田祭りは何かが違うぞ!」
相撲部の壁に阻まれ進まない展開に会場は少し飽き始めていた。しかし、一騎討ちと映果の実況もあり再び盛り上がる。
早速鬼山が前に出ると、一人の男を指名した。
鬼山「番場!俺と相手しやがれ!」
番場はわかっていたかのように前に出た。
ここで小話
番場と鬼山は中学時代の好敵手で、とある休みの日に異世界で修行していると、そこへ盗賊団と遭遇し絡まれるも、逆に盗賊団のアジトごと壊滅させた伝説があります。
ちなみに、それが縁からか。
二人には隠し彼女を作っています。
もちろん、微食会には秘密である。
奏太「まさか一騎討ちに持ち込むとはな~。くぅ~!俺が出て真の拳聖を決めたかった!」
直人「うーん、やっぱり違和感しかない。あの消極的な近藤が頭を下げないでお願いするなんて。」
奏太「あ、そう言えばそうだな。まあ熱が入りすぎて忘れたんだろうよ。」
直人「‥ならいいけど。」
不安が募る中、一騎討ちが始まる。
番場「‥さて、ルールはどうする?」
鬼山「決まってるだろ?いつも通り全力でぶつかり合い!最後まで立ってた者が勝ちだ!」
番場「いいだろう。拳式五式"千手"!」
鬼山「っ!?お、おいいきなりそれ使うのか!?」
右足を勢いよく踏み込むと石畳が砕けて跳ね上がり、千手観音の幻が浮き上がった。
拳式五式"千手"とは、
番場誠太が使う拳式型の一から五段階ある最終奥義である。その威力は強大でのっけから使うには体へのダメージが大きいため使えないのだが‥今回はウォーミングアップもしっかりしてるので、番場は容赦なく全力で鬼山にぶつかった。
鬼山は想定外すぎる攻撃になすすべなく、本殿へ向け吹き飛ばされた。
数名の守護役を捲き込み本殿内まで転がった。
一撃必殺とはまさにこの事、会場は歓声と拍手に包まれた。
映果「これぞ秒殺!一撃必殺!鉄壁の守護の壁に穴を開けた!!」
桃馬「す、すごい。」
ギール「‥あ、あんな力を持ってたのか。」
志道「三十分も大人しかったのはこれが狙いだったのか。」
一瞬の決着に驚く神輿役たちは、ただ圧倒されていた。
海洋「‥なるほど‥今まではウォーミングアップをしてたと言うのか。」
後の祭りだが、先に海洋が微食会の狙いに気づく。すると、微食会の四人は勝ち誇ったかのようにタネ明かしをした。
近藤「思いのほか早く"半兵衛"が貧血で抜けてくれて助かったぜ。」
星野「そうだな。晴斗だとこんなの直ぐに見破るからな‥。」
渡邉「貧血持ちに棒立ちはさぞ辛いだろうな~。」
本間「さて、次の犠牲は誰かな?」
直人「やってくれたな‥。」
奏太「待て、今度は俺がやってやる。」
直人「あっ、おい!?」
奏太は退けぬ闘争心を燃やし本殿から飛び出した。
映果「おおっと!ここで四天王の燕奏太の登場だ!同じ空手部同士にして、鬼に調教された燕奏太とその強さを今まで隠していた番場誠太!勝つのはどっちだ!」
奏太「よぅ、せいっちゃん。今度は俺が相手だ。」
番場「よう奏太?てっきり最初に名乗り出ると思ったけど命拾いしたな?」
奏太「へっ、拳式五式なんて見切ってるっての!」
番場「まあまあ、強がってもかっこよくないよ?」
奏太「強がってないわ!」
直人「ま、待て奏太!?」
海洋「挑発に乗るな!?」
血が滾り暴走気味の奏太は、無策にも正面から突っ込んだのだった。