第百三十七話 新井田祭り編(1) 始祭
六月十六日‥ついに時は来た。
信潟県最初の祭り、新井田祭りが始まった。
梅雨の時期にも関わらず今年もまた晴天に恵まれた。
今年は畏こくも"安明天皇"こと鷹菊宮良仁様も参加なされていた。
午前七時、神盟宮神社には述べ二千人を超える大名行列の参加者が今か今かとスタンバっていた。
その頃、最後尾の暴走神輿役たちは、予定していた人数より多く集まっていた。
急遽この土壇場で六組共存派の男子たちとジェルドとギールが参加したのだ。
もちろん、尊重派も参加しており守護役についていた。
桃馬「まさか‥この新井田祭りで六組の主導権を決めるとはな。バチが当たりそうな話だ。」
志道「や、やっぱりそうだよな。でも、向こうからの提案だ。バチは向こうに振りかけるだろうな。」
ジェルド「確かに、特に直人の機嫌を損ねなければ良いけど。」
ギール「六組の尊重派を毛嫌っているからな。もし、修羅モードになったら最後は厄介だ。」
四人、いや、神輿役のほとんどがそこを気にしていた。
するとそこへ、巫女服姿の美女たちが現れる。
志道の彼女の、
金髪エルフのジャンヌ
銀髪ダークエルフのアンジェリカ
赤髪美女のアリシア
京骨の嫁
水色ボブヘアーのルシア
あとはリフィル、小頼、桜華、エニカ、ルイであった。
小頼「男たちよ見るのです!今日しかお目にかかれない巫女服美女を!」
先ほどの不安な気持ちは何のその。
男たちは巫女服美女たちを目にして大歓喜した。
禁断のスカート巫女服。
上半身の露出度は少ないがキリッとしたクール感がまたそそる。そしてお待ちかねの下半身‥特に黒、白、紺色のソックスは凶器である。
女の子たちは恥じらいなく楽しそうにしているなか、意外にもサキュバスのルシアは恥ずかしそうにしている。
もしかしたらコスプレ見たいな衣装に抵抗があるのかもしれない。
京骨は生唾を飲みながら愛するルシアを一点見つめしていた。
ジャンヌ「志道どうだ!私たちの衣装は似合うだろうか!」
アンジェリカ「わ、私としては違和感があるのだが‥どうかな?」
アリシア「クスッ♪志道はこう言うの嫌いかしら?」
志道「三人とも凄く似合ってるよ♪」
純粋なハーレム男は一言でまとめてしまった。
ジャンヌ「ほ、他にはないのか?」
アンジェリカ「そ、そうだ!その‥よ、容姿とか。」
アリシア「一言でまとめられるのは、残念ですね。」
志道「えっ!?あ、そ、そうだな。うーん。か、髪飾りとか、そ、ソックスとか‥ごくり‥え、エロいです。」
ジャンヌ&アンジェリカ「クスッ♪変態♪」
アリシア「志道は変態です。」
志道「な、なんで!?」
待っていたかのように笑顔で罵倒した。
ジェルド「向こうは楽しそうだな。あ、そう言えば小頼?エルゼはどうした?」
小頼「クスッ♪それなら豆太くんと一緒よ♪」
ジェルド「そ、そうか。うまくペアを作れたんだな。」
ギール「全く心配しすぎだぞ?ディノもついているんだ心配するな。」
ジェルド「そうだけどよ‥。ん?そう言えばシャルはどうした?」
ギール「あぁ、それなら小頼たちと‥あれ?こ、小頼?シャルは?」
小頼「ふぇ、シャルちゃん?いや、見てないけど‥。」
ギール「あ、あのバカ‥またどっかに行きやがったな。桃馬すまない、シャルを探してくる。」
桃馬「えっ?あ、うん‥わかった。」
返事をする間もなく、ギールは捜索に出た。
桜華「シャルちゃんの話になるとギール凄いよね。」
桃馬「シスコンだからな。未来の嫁が心配なんだよ。」
ジェルド「全くだ!シャルか桃馬。どちらか選んでほしいものだ!」
小頼「ジェルド~♪あなたが言える立場じゃないわよ~?」
桃馬「きれいなブーメランだな‥。お前も小頼か俺を選んだらどうだ?」
ジェルド「ふっ、小頼は嫁で桃馬はご主人、即ち俺は執事みたいな役割だ!」
ギールも同じ事を言う気がするが‥。
欲望と本能のまま生きる姿勢は、さすが駄犬である。
桜華「し、執事なら桃馬は襲えませんね?」
ジェルド「ふっふっ、執事でも隙あらば主人に甘えるのは狼の特権だ!」
桃馬「狼じゃなくて駄犬だろ‥。」
ジェルド「またまた~♪本当は嬉しいくせによ~♪くぅ~んくぅ~ん♪」
桃馬「うわっ!?こ、こら人前でやめろ気色悪い!?」
公共の面前で大胆に甘えるけも耳イケメン男子、その行為にまわりの視線を集め"仲良し"とか"じゃれてる"など、恥ずかしい声が聞こえる。
二人きりなら良いものの、人前では完全にジェルドが有利だ。変なことをする前に何とかしないと、一生物の傷をつけられてしまう。
ここは、尻尾を掴んで大人しくさせて‥。
桃馬はもふもふの尻尾に手を伸ばすが、ジェルドに手を掴まれ阻止される。
ジェルド「ククク、桃馬の考えは手に取るようにわかるよ~♪」
桃馬「こ、この離せよ!?こ、これ以上は洒落にうわっ!?」
桃馬は暴走状態のジェルドに押し倒された。
そしてあろうことか、首筋から上へと舐め始めた。
ジェルド「ぺろっれろっ♪」
桜華「はわわ!?な、何してるのですか!?」
小頼「おお!きたぁぁ!!」
映果「特ダネぇぇ!!」
桜華「うわっ!?映果ちゃん!?」
特ダネの匂いを嗅ぎ付けた亀田映果が颯爽登場。その後ろには小頼商会を支援するファンが二人を囲み外部から遮断した。
朝から壮絶な撮影会にファンたちは涎を垂らしまくっていた。
桃馬「くっ、んんっ!こ、こら!映果見てないで助けろよ!?」
映果「クスッ♪心配しないで見えてるのは私たちだけだから♪」
桃馬「そう言う問題じゃ‥んんっ!?」
駄犬に決して隙を見せてはならない‥。
ジェルドも隙を見れば甘えると言っていた。
俺は一瞬の隙を見せてしまった。
そして‥こ、こんな駄犬に唇を奪われてしまった。
腐女子たちは、感極まってシャッターを押しまくり、歓喜を上げた。
しかも、すぐに離すと思ったら舌まで入れてく暴挙‥。このままでは犯されるのも時間の問題である。
そんな時、みかねた桜華がジェルドの尻尾を強く握った。
ジェルド「わふっ!?ふにゅぅ~。」
小頼「お、桜華ちゃん何してるの!?」
桜華「そ、そこまでです!神聖な場所でやる行為ではありません!それに、小頼ちゃんは嫌じゃないの!?」
小頼「え、えへへ、その‥ここまでしちゃったら嫉妬もないかな~って。」
桜華「もう!都合がよすぎるよ!」
小頼「あ、あはは‥ごめんなさい。」
映果「いや~♪良いのが撮れた~♪桜華ちゃんにも後で送るね♪」
桜華「はう!?え、映果ちゃん!」
映果「あはは♪みんな!かいさ~ん♪」
腐女子たちはその場から逃げるかのように解散した。
桜華「と、桃馬大丈夫!?」
桃馬「うぅ、このバカ犬め‥。」
京骨「はぁ、朝っぱらから元気がいいな?」
桃馬「う、うるせぇ‥。」
ジェルドの接吻により桃馬の表情は暗くやる気も削がれ、まわりの神輿役も見て見ぬふりをしていた。
するとそこへ、桃馬ラブの聖籠忍が主催者本部から戻ってきた。
忍「やあやあ君たち、まもなく大名行列が始まるから準備したまえ。」
無駄にオペラ向けの美声に、神輿役の勇姿たちは気合いを入れて位置につく。
忍「さぁ、女の子たちも定位置に戻りなさい。」
女子一同「はーい。」
小頼「さあ、桜華ちゃんも行くよ~♪」
桜華「で、でも、桃馬とジェルドが!?」
小頼「大丈夫大丈夫~♪気にしないの~♪」
心配のあまり動きそうもない桜華の腕を引っ張り、定位置にもどった。
忍「おや桃馬とジェルドは何寝ているのだ?」
桃馬「す、すみません‥い、今位置につきます。」
桃馬は忍の行動を警戒してすぐに立ち上がったが、まだジェルドは寝たままだ。
忍「こら、ジェルド?土壇場の参加者が寝てはだめであろ?起きるのだ。」
ジェルド「わふぅ‥しゅ、しゅみまへぇん♪」
おそらく敏感なところを強く握られたのだろう。表情からしてかなり蕩けていた。
忍「全く、そこの君。悪いけどジェルドを医務係まで連れていってくれないか?」
忍は神輿役の補助員を呼びつけ、ジェルドを撤去させた。
シャルを探しに行ったギールもまだ戻ってこない中、新井田祭り大名行列開始の花火と共に、ホラ貝と太鼓が鳴り響いた。
先頭から天狗様と玄武、白虎、青龍、朱雀の旗持ちと二十人ほどの刀を拵えた和服姿の先陣が神盟宮神社の鳥居から出た。
その後ろから
神社の旗を持った一般の子供達。
巫女服と旅人風の和服を着た地元の保育園児(保護者つき)
生後零歳児を抱える母子方。
子供神輿に山車
巫女服や和服に刀を拵えた小学生。
小学生様の神輿と山車。
巫女服や和服に刀を拵えた中学生。
中学生様の神輿と山車。
黒毛槍、白毛槍衆
籠、箱衆(医療、水分等)
巫女服集団。(高校一般)
白装束に烏帽子を被り、弓、槍、鉄砲などを持つ高校生と一般参加。
白馬の馬車(安明天皇)(皇后陛下)
四方八方警察官系二百人
菊紋章の御旗、日章旗持ち
黒毛槍、白毛槍衆
籠、箱衆
白装束に烏帽子の杓持ち衆(一般、佐渡景勝、両津界人お忍びで参加。)
大型山車五台。
神盟宮神社の三神を祭る大人神輿、三基
巨大太鼓。
笛奏者
白馬に乗る宮司。
他二百人の御供番
神盟宮神社の本神を祭る暴走神輿
大型太鼓
笛奏者
白馬に乗る神主
五十人の御供番
以上である。
結果、暴走神輿の出発までは約二十分あるので、その間にギールが戻ってくればいいのだが‥。
それでも桃馬はギールが戻ってくるか不安であった。