第百三十五話 嫁奪還任務
今日の佐渡家は不気味すぎるほど静かだ‥。
取りあえず一番近い茶の間から覗こう。
桃馬は恐る恐る薄暗い廊下を歩く。
そして、茶の間をちらりと見ると、目の前に氷漬けになった人がいた。
桃馬「ぎゃあぁぁ!!?だ、誰ですか!?」
桃馬は思わず声をあげ後ろへ倒れ込む。
しかし、よく見るとその正体は兄の蒼紫であった。
桃馬「‥ん?‥に、兄さん!?こ、凍ってる‥うぅ、か、母さん‥また何してるんだよ。」
桃馬は蒼紫を担ぎ風呂場へと向かった。
しかし、そこには更なる光景が用意されていた。
桃馬「よっと‥よっと‥ふぅ‥兄さんちょっとここで待ってて、準備するから。」
桃馬は脱衣場で兄を立て掛け、風呂場の扉を開き、そして一瞬で扉を閉めた。
一瞬見てはいけない光景が広がっていた気がした。
桃馬「うぅ、疲れてるのかな‥。なんか縛られた父がいた気がしたけど‥。」
桃馬は再び扉を開ける‥。
湯が入っていない浴槽に、干からび全裸で縛られた父がいた。
こうしてみると事件性を感じてしまう。
桃馬「何してんだ‥父。」
しかし、返事がない‥。
ただの屍か、ただの気絶のようだ。
取りあえず邪魔なので、縄をほどいて蒼紫と入れ換えた。
桃馬「湯船よりシャワーがいいかな‥最高温度にしてっと。」
シャワーを片手に蒼紫の解凍作業に取りかかった。
ほんと何があったんだよ。
兄さんは母さんを止めようとしたら返り討ちに合ったみたいだし‥、父に至っては謎‥早く兄さんを解凍して探さないと‥。
桜華から別れ話を切り出されたら‥俺生きられないよ。
不安に押し潰されそうになるほどの展開に、
桃馬はただ焦るだけであった。
三十分後‥。
桃馬「兄さん起きてよ!」
蒼紫「んんっ‥桃馬?」
桃馬「兄さん母さんはどこ!?」
蒼紫「母さん‥?‥っ!そうだ!?三人がまた母さんに捕まって‥、家にいないのか?」
桃馬「うん、どこにも見当たらないんだよ‥。」
景勝「‥‥あの部屋かもな。」
桃馬「あ、起きた‥。」
蒼紫「父さんいたのか!?‥てか、すごくやつれてるけど‥まさか母さんにしぼられたのか?」
景勝「情けないけどそうだな。全く‥暴走すると我を忘れる可愛い妻だな。」
桃馬「そんなことより父さん"あの部屋"ってなんだ?」
景勝「あぁ‥それは雪穂の秘密の部屋だよ。出入り口は知らないけど‥昔よく夜な夜な連れ込まれて愛し合ったな。」
取りあえず‥やばい部屋と言うことはわかった。
桃馬と蒼紫も今の現状が、かなりまずいと実感した。
桃馬「それ‥やばいくない?」
蒼紫「急いで探さないと別れ話を突き付けられるぞ!?」
桃馬「っ!早く探そう!」
蒼紫と桃馬は、干からびた景勝を置いて急いで風呂場を後にした。
息子たちに取って最大のピンチ。
別れ話なんて、死の宣告となんら変わらない。
二人は血眼になって秘密の部屋を探す。
しかし、さすが秘密の部屋だけあって簡単には見つからない。
桃馬と蒼紫は一番怪しい一階母の部屋を再び捜索した。
桃馬「どうしよう兄さん!?見つからないよ!?」
蒼紫「あ、慌てるな桃馬。きっとどこかに仕掛けがあるはずだ。それに母さんのことだから複雑にはしないはず‥例えば、この額縁をズラすとか‥。」
何気もなく父さんと母さんの新婚写真の額縁をズラすと"ガチャッ"と何かが開いた音がした。
すると、床がスライドし地下に繋がる階段が現れた。
桃馬「に、兄さんすごい!」
蒼紫「あ、あはは。な、なんか母さんらしいな。よ、よし、行くぞ桃馬!」
桃馬「おう!」
桃馬と蒼紫は階段を駆け下りた。
階段はそんなに長くはなく、階段が終わると目の前には拷問部屋のような扉があった。
二人は扉に耳を当てると微かに色っぽい喘ぎ声が聞こえた。
二人は生唾を飲みながら扉を開けた。
目の前には、大の字で縛られ姫騎士の格好をした桜華とエルガが、雪穂とシノンに筆の様な物でくすぐられていた。
桜華&エルガ「はぁはぁ‥はぁはぁ。」
これでも充分エロいが、桃馬と蒼紫が想像していたものよりエロくはなかったため、少しほっとした。
シノン「わふっ!?あ、蒼紫しゃま!?」
雪穂「と、桃馬に蒼紫!?ど、どうしてここが‥。」
エルガ「‥なっ!?ななっ///み、見るな二人とも!?」
桜華「ふへぇ‥はうっ!?と、とと、桃馬にお、お兄様///」
恥ずかしい姿を夫と彼氏に見られ、二人の美女は赤面し取り乱した。
蒼紫「母さん!また懲りないで何してるんだよ!」
桃馬「そうだよ!俺と兄さんの生活ライフを壊す気かよ!?」
さすがの雪穂でも、秘密の部屋がばれるのは予想外であった。それに昨夜の今となると言い訳も難しい。ここは慎重に切り抜けようと雪穂は考えた。
雪穂「えっと、そう怒らないで二人とも♪これは二人が初夜を迎えるための訓練なのよ♪」
物凄く無理のある言い訳であった。
蒼紫はため息をついて、会心の一言を食らわす。
蒼紫「嘘だったら‥孫が出来ても見せに来ないからな?」
雪穂「っ、あ、蒼紫!?な、なんてことを!?」
蒼紫「嘘じゃなければ見せに来るよ?」
嘘の手応えがあると分かると、鬼の形相で母に更に問う。
蒼紫の孫‥白髪のケモ耳っ子、そして褐色の美形っ子‥そんな孫たちと触れ合えないなんて‥地獄である。
雪穂はその場に腰を下ろして、簡単に白状した。
雪穂「‥ごめんなさい。三人が可愛くて‥我慢できなかったの。だから‥お願い‥孫を取らないで~。」
シノン「わふぅ‥お母様‥あ、蒼紫様‥ど、どうかお母様を許してください。」
蒼紫「だめだ。昨夜から朝までならまだしも‥懲りずに再び暴走するとは許せないよ。」
シノン「そ、そんな‥でも、お母様のお気持ちはお二人をこう言うのに慣れさせようと思って‥。」
蒼紫「‥シノン。母さんを庇うのは嬉しいけど。エルガと桜華ちゃんが嫌がることを率先するのは‥母さんの個人的なエゴだよ。」
シノン「そ、それは‥わふぅ。」
桃馬「まあそれは実際二人がどう思ってるかだよ。よっと外れたよ桜華♪次はエルガ姉さんだね。」
桃馬は雪穂が腰を下ろして隙に二人の拘束をほどきにかかっていた。
桜華「‥えっと、私は‥は、恥ずかしいだけで‥その嫌では‥。」
エルガ「‥わ、私も‥同じく‥あ、蒼紫に同じことされたら‥嬉しいと思った‥。」
まさかの返答に蒼紫と桃馬はキョトンとした。
別れ話でも、嫌がる話でもない。
むしろ満更でもない様子であった。
桃馬と蒼紫は再び生唾を飲んだ。
蒼紫「‥えっと、わ、別れ話とか‥しないよね?」
エルガ「そ、そんなことするはずがないだろ?そ、それより‥こ、今夜‥その‥えっと‥。」
顔を赤らめて"もじもじ"し始めるエルガに、シノンが代弁する。
シノン「わふぅ♪蒼紫様♪今夜私とエルガ様を可愛がってください♪」
エルガ「こ、こらシノン!?」
蒼紫「か、可愛がるって‥ま、まさか。」
シノン「はい♪こうんんっ!?」
エルガ「な、なんでもないぞ♪可愛がると言うのは‥ほら、なでなでだ!」
話を勝手に進めるシノンの口を塞ぎ、恥ずかしがりながら誤魔化した。
蒼紫「そ、そうか。まあ、それくらいならいいぞ。」
蒼紫もシノンの言いかけたセリフを受け流し、なでなで路線で受け入れた。
ちなみに、蒼紫の理性は限界である。
今すぐに縛り直して二人を可愛がりたいと思っていた。
それは桃馬も同様であった。
桃馬「お、桜華‥えっと‥その衣装似合うな。」
桜華「ふえっ!?そ、そうでしょうか‥?」
桃馬「うん、かっこよくて可愛いぞ♪」
桜華「え、えへへ~♪と、桃馬に言われると嬉しいです。」
まずい‥俺は地雷を踏んでしまった。
気を紛らわせるために声をかけたのだが、余計意識してしまった。
誰もいなかったら‥とうに襲っている。
結局二人の息子も雪穂の子供、性癖はそっくり受け継いでいた。
その頃桜華の心の中では、母藤霞が表に出ようとしていた。
藤霞(桜華~?またやられっぱなしじゃないの~?ちょっと体を貸しなさい。雪穂って子、とても私好みだし味見したいわ。何なら今夜桃馬くんとしてもいいわよ?)
桜華(だ、ダメですよ!お母様が出てしまったら収集がつかなくなります!そ、それと桃馬を狙わないでください!)
藤霞(クスッ♪私の娘ながら可愛いわね♪なら、体を取られないように集中してなさい♪できるなら、雪穂ちゃんを調教して見たいけどね♪)
桜華(も、もう!やめてくださいよ!)
両家の母はとても個性豊かな変態であった。