第百三十二話 就寝小動物
先の騒動に少しだけ巻き込まれたギールは、無事エニカと微食会の捜索に成功した。
ギールは急いで部室へ戻りルイをエニカの元へ連れていこうとした。
だが‥戻ってみると。
ディノ特製スライムベッドで眠る
ルイ、シャル、豆太、エルゼがいた。
ギール「‥な、何してるのだ?」
リフィル「しー、静かに。今ルイちゃんたちが寝ているから起こしちゃダメよ?」
ディノ「すみません兄さん、ルイさんお菓子を食べたら眠くなったみたいで、今寝かせているんですよ。」
小頼「はぁはぁ、すごくかわいい‥写真にもっと納めないと‥はぁはぁ。」
桃馬「桜華に動画越しでしか見せてやれないから残念だな‥。」
ジェルド「エルゼ~♪やっぱりこの中にいると引き立つな~♪」
時奈「うーむ、どれか一人持ち帰りたいな。」
憲明「ど、同感です。」
このように異種交流会の部室では、
四人の可愛さに盗撮本能とお持ち帰り本能の爆発で大変なことになっていた。
ギール「はぁ‥エニカは保健室で寝てるし‥こっちは満腹で寝てるし‥収集つかないな。」
桃馬「まあまあ、ギールも見てみろよ♪目の保養になるぞ♪」
ギール「め、目の保養か。うーん、こんなに可愛らしいのに‥。渡邉たちと新西たちを一人で倒すなんて信じられないな‥。」
桃馬「えっ、渡邉たちと新西たち?なんの話だ?」
ギール「話せば少し長くなるけど‥。」
ギールは、先程起きた騒動を桃馬に話した。
桃馬「‥直人が聞いたら大喜びする話だな。それより微食会の六人を倒すなんて‥ルイさんって強いんだな。」
ギール「あぁ、話を聞くと直人と似たような類いだ。」
桃馬「‥確かに大切な人に危害を及ばせば見境なくなるのは共通点あるな。」
ギール「もしかして六人目とか?」
桃馬「いや、それはないだろ?ルイまで娶ったら、今度こそ殺される可能性あるからな。よくても食べ物を与えるくらいだろう。」
その頃道場では、
直人「へっくしゅ‥。」
エルン「だ、大丈夫か直人?」
直人「あ、あぁ‥。」
リール「あはは~♪風邪でも引いたのかな~?」
晴斗「あるいは噂されてるとか?」
直人「‥うーん、心当たりしかない。」
転入生が来てから、やたらと周囲の視線が痛く非常に肩身が狭い。
直人は明日も殺されないように慎ましく過ごそうと胸に刻むのであった。
そして視点を戻す。
桃馬「まあ取りあえず、時間ギリギリまで寝かせておこう。」
ギール「そうだな‥ふっ、それにしてもシャルの寝顔はいつ見ても可愛いものだな。」
桃馬「‥ふっ、本音を漏らしたな?このシスコンめ。」
ギール「う、うるせぇ‥はふっ!?。」
桃馬「そんな可愛い犬には‥ご褒美だな。」
あまりにも可愛いギールの素振りに桃馬の変態スイッチが入った。桃馬は上質な黒毛の尻尾を掴みもふもふし始めると、ギールは赤面して喘ぎ始める。
ギール「と、桃馬‥くぅ‥こ、こんなところでやめ‥。」
桃馬「ふっ、ほんとにギールはジェルドと違って恥ずかしがり屋だよな~?こう言うところで触られるのは嫌かい?」
ギール「ち、ちがっ‥俺は‥ペースを乱されたくないだけで‥くぅ‥触られるのが嫌って訳じゃ‥くひっんんっ!?」
思わず声を出し掛けた瞬間、桃馬に口を塞がれた。
桃馬「おっと‥声を出すなよ?大人しくしてたらこのまま可愛がってやるからよ。」
いつも素っ気ない桃馬であるが、実際のところ二匹の駄犬を服従させたいと言う気持ちがあった。(もふもふ的な意味で)
しかし、桃馬も思春期な年頃もあって、上手く気持ちが噛み合わない限り素直になれないのだ。以前校門近くでジェルドをもふり倒していたのも偶然気持ちが噛み合ったからだ。
桃馬のいやらしいもふり方に赤面し、涎を滴、涙目になるイケメン狼の姿に、桃馬の心の闇を刺激した。
尻尾の付け根から先端。
そして、けも耳の付け根から先端まで蹂躙し、時間いっぱいめちゃくちゃにもふり倒した。
三十分後‥。
シャル「んんっ、ふぁ~♪よく寝たのだ~♪」
ディノ「おはようございますシャル様♪」
小頼「おはようシャルちゃん♪よく眠れた?」
シャル「うむ、最高だったのだ♪」
シャルが目を覚ますと、次々と小動物たちが起き始める。
エルゼ「わふぅ~。」
豆太「んんっ~、お姉ちゃん‥どうひたんでひゅか~。」
ルイ「ふぁ~。」
まだ寝惚けているのか、三人の目は"うとうと"していた。神がかった瞬間に時奈たちは一斉にカメラに納めた。
シャル「お、お主たち何をしておるのだ?」
小頼「四人の可愛い寝顔を撮ってたんだよ♪」
シャル「なっ!?そ、そんなの撮らなくてもよいのだ!?」
リフィル「でも、可愛いですよ?」
シャル「そ、それでも寝顔だけは撮られたくないのだ‥うぅ‥ちょっと、見せるのだ。」
やはり気になる様で、シャルはリフィルのカメラを見た。
画面には幸せそうに眠るシャルの姿があった。
リフィル「ねっねっ♪可愛いでしょ?」
シャル「う、うぅ///‥うむ///。」
憲明とジェルドは癇癪をあげると思ったが、シャルは赤面して頷くだけであった。
桃馬「へぇ~♪まるでお姫様じゃないか♪」
憲明「確かに、お転婆姫様みたいだな♪」
ジェルド「あはは♪じゃあギールは王子‥って、ギール!?」
ジェルドはギールをネタに後ろを振り向くと、そこには蕩けた表情で腰を抜かすギールがいた。
桃馬「おや?どうしたギール?」
白々しく訪ねる桃馬。
ギールにはもふもふの最後に、
俺の名を口にしたら‥絶交だよ?
と、卑怯な手で口封じをしたのだ。
一方間違えれば、くそ主人公である。
ギール「はぁはぁ、す、すまん‥きゅ、急に体が熱くなって‥。」
ジェルド「で、出来上がってるな‥。」
桃馬「もしかしたらシャルに欲情したのかもな~?」
シャル「な、ななっ!?なんだと!?」
ギール「ち、ちがっ!?誤解するなシャル!?」
あぁ~♪この犬‥めっさ可愛いぞ!
今すぐにでも飛び付きたい桃馬は必死で堪える。しかし、こう言うことに関して勘が良いジェルドは桃馬を睨んでいた。
ジェルド「‥桃馬~?やけに楽しそうにギールを陥れてるな?」
桃馬「っ、そ、そうかな?」
ジェルド「‥ギールを調教したな?」
シャル「むっ?調教??」
やばい‥シャルに聞かれてしまった。
桃馬「ちょ、調教~?な、なんのことかな??」
動揺しまくりの桃馬に、憲明はため息をついて諭しにかかった。
憲明「はぁ、諦めろ桃馬‥もう悪い癖が出てるぞ?」
桃馬「‥うぐ‥ギールが可愛かったから‥もふりました。」
シャルとジェルドの報復を恐れてあっさり降伏した。
ギール「と、桃馬‥。」
ジェルド「‥桃馬‥ギールを襲うなら俺を襲えよ!?」
桃馬「‥あ、あの時はギールが可愛かったからつい。」
ジェルド「がーん!っ、うぅん!くぅーん♪」
一瞬くじけそうになったが、ここは切り替えてプライドを捨てた激甘アピールをし始める。
桃馬「こ、こらジェルド‥くっ、卑怯だぞ‥。うぅ、ギールもおいで。」
ギール「わ、わふっ!」
二匹の駄犬は桃馬にすりより甘え始め、桃馬は罪滅ぼしにもふり始めた。
時奈「全く、結局三人はこうなるんだな?」
時奈も少し呆れるもいつも通りである。
シャル「こ、こら!?私を置いていくな!?」
リフィル「はーい、シャルちゃんはこっちだよ♪」
小頼「三人の邪魔しちゃダメだよ♪」
シャル「うわぁ~、離すのだ~!」
若干無視されたシャルは、桃馬にドロップキックを見舞おうとするが、リフィルに羽交い締めにされ阻止された。
エルゼ「お、お兄ちゃん?」
豆太「は、はわわ!?兄さんがただの犬に‥。」
ディノ「ゴクリ、み、見てはいけない‥見てはいけない。」
ルイ「‥ ??」
エルゼとルイは小首をかしげて三人の戯れを見物し、ディノと豆太は顔を赤くしてちらっと見ていた。
シャル「むう‥あの三人は変態なのだ‥。」
リフィル「あはは♪今更だよシャルちゃん♪」
小頼「そうそう♪私たちから見ればシャルちゃんも同じだよ~♪」
シャル「ぬわっ!?余は変態ではないのだ!?」
変態を否定するシャルであるが、徐々に"そっち側"に染められていることは知るよしもない。
それから数十分。
ルイを連れて来ないギールを心配した星野仁と大西雷音が異種交流会の部室を訪ねた。
すると二人の目に入ったのは、蕩けた二匹の駄犬と近くでお菓子を食べているルイであった。
時奈「すごい大食いだな?部室のお菓子が無くなってしまったぞ?」
リフィル「ふぇ!?そんなに与えてましたか!?」
小頼「それでこのスタイル‥う、羨ましい。」
エルゼ「わふぅ、沢山食べる人は強くなれるのですね!」
女の子たちはルイの凄さを崇めていた。
星野「あ、あの‥。」
桃馬「よう仁くんに大西。さっきまで大変だったみたいだけど大丈夫か?」
星野「えっ、あ、あぁ、何とかな。」
大西「と、桃馬?ここにルイが来た時ってどんな感じだった?」
桃馬「えっ?どんなって、今と変わらないけど?もしかして鬼神モードのことか?」
大西「あぁ、そうそう。ギールから聞いてたようだな。それより、元に戻っててよかった。」
星野「ギールから直ぐに連れて来ると聞いてたんだけど、なかなか来ないから心配してたんだよ。」
桃馬「そうだったのか、すまない‥その時丁度寝てしまってな。起こそうにも刺激しないようにそっとしていたんだよ。」
星野「そうだったのか。それなら仕方ないな。」
大西「それはそうと、ギールはどうして蕩けてるんだ?」
桃馬「さ、さぁ?」
憲明「‥さすがに言えないか。」
その後、星野と大西は満腹のルイを連れエニカがいる保健室へと向かったのだった。