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第百三十一話 この先鬼神にご注意を。

子犬の皮を被った虎を部室に残し、一人で微食会とエニカを探しに出たギール。


自慢の嗅覚ですぐに探し出すも、目の前には微食会のメンバーと春の大戦乱祭の戦犯組、二年六組新西一派が倒れていた。


現場は人があまり来ない裏校舎で、恐らくエニカを狙った新西狂季が微食会と対峙して痛み分けしたみたいだ。


倒れてる微食会は、

渡邉、近藤、番場、藤井、茂野、本間の六人。


エニカと大西、高野、星野、坪谷の姿はなかった。


だが妙だ、あの大戦の武功を見るなら一人でも倒せるはず、それが痛み分けなど考えられない。もしかしたら、第三者の仕業か‥。


ギールは近くに倒れている渡邉に駆け寄った。


ギール「おい、蒼喜!しっかりしろ!」


渡邉「んんっ‥ん‥ギール‥?」


ギール「よかった、生きてるな!一体何があったんだ?」


渡邉「‥あぁ、部室に行こうとしたら‥突然新西の馬鹿が現れて‥エニカを渡せって‥。」




二十分前のこと。


ルイを入れた十二人の微食会は、別校舎の部室へと向かっていた。その時、エニカを我が物にしようとした新西狂季の一派と遭遇していた。


渡邉「何のようだ新西?今度は多くの仲間を率いて数の暴力をしようってか?」


新西「くくく、それはお前らの返答次第だな。」


星野「呆れた話だ‥。お前の企みは予想がつく。二人を渡せと言いたいのだろ?」


新西「正解!さすが、仁だな?話が分かってくれて助かるぜ。」


エニカ「‥あの無粋な方はどなたですか?」


藤井「奴は二年六組の新西狂季‥貴族主義の変態だからあまり関わらない方がいいよ。」


藤井の言葉に、微食会の男たちは全員が頷いた。


新西「藤井‥貴様誰に物を言ってるのかわかってるのか?」


藤井「おや?それは脅しか?確か春の大戦乱祭の敗北で権力を振り回す行為は禁止されてると聞いていたが‥もう忘れたようだな?」


茂野「まあそう言うな藤井?新西は権力にすがることしか出来ないチャラ男だから仕方がない。」


再び頷く微食会男たち。


新西「ぐぐぐ、貴様ら‥庶民の分際で‥。許さん‥許さんぞ!今のを宣戦布告と捉えて貴様らをぶちのめしてやる!」


近藤「おや?いいのか?次問題起こしたら貴様ら退学だぞ?」


新西「ふっ、残念だな‥そんなのいくらでも揉み消せるんだよ!お前ら怖がることはねぇ!二人を奪った暁には好きにしていいからな!」


六組男子「おぉ!!」


約三十人はいる愚かな六組男子たちが襲いかかる。


近藤「はぁ‥馬鹿は死なないと治らないか。」


渡邉「‥いっそのこと殺るか?」


藤井「‥それもいいけど今は我慢だ。」


茂野「そうそう。表の犯罪は起こしたくないからな~。」


エニカ「わ、私も戦いますよ!」


ルイ「敵なら‥ルイもやる。」


エニカとルイも参戦しようとすると、六組の先頭が目の前に迫る。


六組男子「なにゴタゴタ話してるんだ!ごはっ!」


六組男子「ぐはっ!?」


番場「ピーピーうるさいよ!」

本間「豚は豚小屋に帰んな!」


先頭の六組男子を番場と本間で吹き飛ばすと、続いて渡邉と近藤が半分以上なぎ払う。


エニカ「あ、あう‥す、すごい‥私の出る幕がないです。」


ルイ「‥強い‥でも、ルイほどじゃない。」


エニカ「る、ルイ!?そんなこと言っちゃダメでしょ!?」


少し無神経が入っている発言にエニカは慌てて注意する。だが、それは微食会全員がわかっていた。


大西「あはは、だろうな。ルイさんに比べれば俺たちは足元にも及ばないさ。」


高野「そうそう、気迫で圧倒されてるからね。」


圧倒的な微食会の力に新西は憤りを増す。


新西「くそぉ‥役立たず共め‥あいつらは何をしているんだ。仕方ないこの俺が直々に相手してやる。」


渡邉「こいよ新西?貴様を潰して校長の前に叩き出してやるよ。」


新西「ほざけぇ!」


新西は剣を抜き渡邉に斬りかかる。

だが剣聖の称号を持つ者に対して、正面から挑むのは無謀であった。


新西の剣は軽く払われ腹部と頸動脈に峰打ちを食らわせた。


新西の無様な敗北に、残った新西一派はその場で立ち尽くしていた。


完全に勝負は決まったと思った。

だが微食会十人が前に出た時、背後から隙を見計らっていた奇襲隊が、がら空きのエニカの背後を取った。


エニカ「ひゃっ!んんっ!?」


十人「エニカ!?」


エニカの声に微食会は慌てて後ろを振り向く。


そこにはナイフをエニカに突き付ける男子生徒がいた。


六組男子「おっと、動くな!動いたら姫様に傷がつくぞ?」


藤井「てめぇ、自分が何してるのかわかってるのか?」


六組男子「あぁ、わかってるとも!貴様らを始末して二人を調教すれば、きれいさっぱり無かったことになる!」


六組男子「ナイス!よくやった!」


六組男子「くくく、さーて!お返しの時間だな!」


近藤「ちっ‥許さんぞ‥てめぇら!」


六組男子「いいね!その(つら)~♪さてと、そこのルイって子!姫様に傷をつけさせたくなかったら大人しくこっちに来い!」


ルイ「‥‥‥。」


六組男子「おい?聞いてるのか?」


十人は何も出来ずに(うつむ)くルイを見る。


エニカ「んんっ!!」


六組男子「この!暴れるな!」


エニカ「っ!?」


六組男子「たっく、手間かけさせやがって‥ん?」


エニカも体をよぎって抵抗するも後ろを殴られ気絶した。それを目にしたルイは激怒し、恐ろしい殺気が辺りを覆い、瞬時に六組男子に近寄り蹴り倒した。


六組男子「げはっ!?」


ルイ「お前ら‥許さない‥。ルイは怒った‥。お前ら‥全員殺す。」


ルイの瞳は赤く染まり鬼神の様な表情へと変わった。その場の全員は鳥肌を立て一瞬にして死を感じとった。


近藤「これ‥まずいよな‥。」


渡邉「あ、あぁ‥やばい‥。」


番場「‥ふっ、仕方ない、近藤行け!」


近藤「な、何で俺が!?」


本間「取りあえず行って来い!」


いつもツッコむように背中を叩くと近藤はルイに目掛けて飛ばされる。


近藤「本間!?覚えてろよ!?うっ!や、やばっ!?よ、よっとと‥‥うぅ、ひっ!?」


危うく鬼神モードのルイにぶつかりそうになるも、何とか体勢を立て直し手前で止まった。そして恐る恐る見上げると、上から眼力強く見下ろすルイがいた。


そして後ろでは知らないことを良いことに悪意ある合掌をする九人がいた。



近藤「あ、あはは‥る、ルイさんど、どうも。」


ルイ「尚弥‥エニカをお願い。」


近藤「ふぇ、る、ルイ!?うわっ!?」


ルイは気絶したエニカを近藤に託すと、瞬時に新西一派に向け走り出した。


渡邉「っ!?こ、こっち来やがった!?」


近藤「お前ら!ルイを止めろ!」


藤井「ちっ、やるしかない!止まれルイ!」


ルイ「っ、どいて。ふっ!」


藤井「ぐふっ!?」


渡邉「藤井!?くっ、すまんルイ!ごふっ!?」


ルイは止めにかかる二人を軽くあしらい、一派に向け走った。


近藤「仁くん!マッキー!エニカを頼む!」


高野「お、おう、わかった。」


星野「ま、任せろ!近藤は何としてでもルイを止めてくれ。」


近藤「たぶん無理だと思うけど‥やるだけやってやるよ!」


こうして鬼神モードのルイを止めるため、近藤、茂野、本間、番場の四人は決死の覚悟で止めにかかる。星野は大西、高野、坪谷と共にエニカを退避させた。



結局、止めにかかった六人と新西一派は壊滅。


最後は主犯の新西狂季を殺そうとしたが、突如お腹を空かせたことで正気に戻り、食べ物を探しに徘徊していたことは、まだ知らないことである。


ギール「そ、そんなことが‥ルイならこっちの部室にいるから安心しろ。」


渡邉「そうか、いってて‥見たところ誰も殺してなさそうでよかった。」


二人が安堵して話していると、退避していた星野と高野が先生方を連れ駆けつけた。


主犯の新西はその場に座らされ、吉田先生が問い質していた。



吉田「新西狂季‥またお前らか。禁止事項を破った罰は重いぞ!」


新西「ふっ‥罰?この俺にそんなことできるかな?」


吉田「ほう、やけに余裕だな?」


新西「当然だろ?俺を罰せれる者はこの学園にはいないのだからな?」


吉田「‥ほぅ。」


勝ち誇ったかのように下から見上げると敗者。

吉田は魔空間から剣を取り出し新西の目の前に突き刺した。


新西「っ、な、ななっ!?」


吉田「‥ここまで校則‥いや、人道を破った貴様を人として見るとでも?甘く見るな!」


新西「は、はひっ‥こ、ここ、こんなことして‥ち、父上に言いつければお前なんか!」


上杉校長「そこまで!」


吉田と新西の言い合いに上杉校長が待ったを掛けた。


上杉校長「新西狂季。お主らの諸行一部始終見せてもらった。」


新西「はぁ?何言ってるのですか?」


上杉校長「なるほど反省どころかシラを切るか。亀田映果君きたまえ!」


映果「はーい♪」


上杉校長の合図で亀田映果が物陰から現れた。

彼女の手には録画用カメラがあった。


上杉校長「ちょうど、映果君にカメラの使い方を学んでいた時、お主らの騒ぎを見ていたのだ。」


新西「っ!」


渡邉「おいおい、まじかよ‥。」


ギール「なら、止めればよかったのでは。」


吉田「そうです校長!?なんでそんな危険なことを!?」


上杉校長「君たちには悪いことをしたと思う。しかし、これもまた青春のイベントとしてよいのだと思ったのだ。」


吉田「‥教育的にギリギリかアウトな気がしますが。」


上杉校長「そうかの?まあ、今回はルイくんが暴走した際に吹き矢で鎮静剤を撃ち込んでいたからセーフだ。」


吉田「まるで用意してたかのようですね?」


上杉校長「年寄りはナメない方が良いぞ?さて、新西狂季‥今回ばかりは許すことはできない。厳しい沙汰を覚悟しておれよ。」


新西「あ‥ぁぁ‥。」


余裕があった新西も今では完全に心を折られ放心状態であった。


渡邉「これで少しは安泰だな。そうだ仁くんエニカをはどうした?」


星野「保健室で寝ているよ。」


渡邉「これでひと安心だな‥ふぅ。新井田祭り前だってのにハラハラさせてくれるな。」



思いもよらぬ事件は変な形で解決された。

二年六組の新西狂季及び加担した多くの生徒たちは一学期停学処分の退学候補生となった。



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