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第百二十九話 兄妹愛

二年五組に真紅(しんく)の美女が転入した話は瞬く間に広がり、昼休みの学食は人でごった返していた。


小動物のように料理を食べるルイの姿は、まわりを和やかにし自然と貢ぎ物が沢山置かれていった。


もちろん、ルイは残さずもくもく食べたと言う。



その頃、太鼓と笛の音が響く屋上では桃馬たちが集まっていた。



ジェルド「なあ、桃馬?真紅の美女を見なくて良いのか?」


桃馬「気になるけど、今の学食は人でごった返してるだろうし‥。まあ小頼の盗撮術で撮ってくれるだろう。」


シャル「ぬはは!余とギールはそやつにあったぞ!」


憲明「そうみたいだな?ちなみにどんな子なんだ?」


シャル「うむ!表情が掴めない豪傑なのだ!」


返答はかなりざっくりとしていた。

桃馬たちは一応無視してギールへ顔を向けた。


ギール「‥はぁ、確かに表情豊富じゃない。見かけによらず腕も達し、小動物の皮を被った虎とでも言っておこうか?」


一同「なるほど。」


シャル「ぬわっ!?なんで余の返事を無視するのだ!?」


ギール「はぁ、ざっかりしすぎたな。」


シャル「むぅ!はぐっ!」


ギール「いててっ!?なにするんだ!?」


豆太「はわわ!?な、何してるのですか!?」


ディノ「シャル様!?また噛みついてはなりませんよ!?」


久々ギールに噛みついたシャルに、こっちはこれで和んでいた。


一人を除いては‥。


京骨「はぁ‥桃馬?俺を呼び出したのは転入生の話をするためか?」


新井田祭り神輿役の相談で、二年四組の湯沢京骨を呼び出したのだが、つい話の流れですっぽかしていた。


桃馬「あ、すまん京骨‥こほん、新井田祭り神輿役の件なんだけど、なにか集まりとかした?」


京骨「それなら来週からだな。それにしても桃馬も任命されるとはな?」


桃馬「なんか手違いらしいけどな‥。」


京骨「それなら抜ければ良かっただろ?」


桃馬「い、色々あって抜けられなかったんだよ。」


桃馬の表情から察するに良くないことがあったことは間違えなさそうだ。


京骨「ま、まあ、詳しい話は来週だ。そう気を張るな。」


桃馬「無理言うなよ‥相手は二年三組だぞ?」


京骨「そ、それは‥運が悪かったとしか言えないな。」


桃馬「京骨も道半ば諦めてるじゃないか!?」


京骨「あぁ、多分一時間超えのコースだ。終わった頃にはボロボロだろうな。」


桃馬「うげぇ‥。」


京骨でも言うくらいだ。

今回は救急車‥いや霊柩車が来る可能性がある。


ディノ「に、兄さん?確かそのお祭りって武器は使わないんだよね?」


ギール「あぁ、本来はな。でも‥相手が二年三組となるとな‥。」


豆太「ま、まさか若様が暴挙に出るのですか!?」


ギール「奇想天外な奴等だからな。神輿に対して危険になるものは持ち込まないとは思うが‥。」


ディノ「そうなると当日のお楽しみってことですか。」


ギール「そういうことになるな。」



不安を誘うような会話ばかりで、思わず桃馬の表情はしかめていた。


京骨「さてと、話は終わりなら俺は戻るよ。ルシアが心配だからな。」


桃馬「あ、あぁ、すまないな京骨。」


京骨「あいよ、それじゃあ神輿役よろしくな~。」


京骨が去ると一斉に京骨の話で持ちきりになった。


ジェルド「それにしても、ほんと"ド"がつくほどルシアを愛してるよな。」


桃馬「悔しいけど‥学園で一番仲が良いカップルだと思う。」


シャル「どうしてなのだ?桃馬と桜華も仲が良いと思うのだが?」


桃馬「そ、それは‥ほ、ほら‥えっと。‥したことないし‥。」


シャル「あぁ~♪まぐわいか~♪」


桃馬「っ、い、言うなよ!?」


ギール「すまん桃馬‥見かけは子供頭脳も子供だから。」


シャル「こ、子供言うな!?はぐっ!ふへっ!?」


ギール「ふっ、そう来ると思ったよ。お前は骨でも噛んでな!」


ギールは瞬時に自分が食べていた骨付き肉の骨をシャルに噛ませた。


その様子に、いち早く豆太と憲明は気づいてしまった。


二人が間接キスをしたことに‥。


豆太はおどおどし始め、憲明は悟られないように平然としていた。


ディノ「豆太どうした?」


豆太「はひっ!?あ、いえなんでも~♪」


ディノ「そう?何か変なのでも見えたとか?」


今まさにそうなんですけど‥。

でも、言いづらい。


豆太「あ、あはは、なんか気のせいだった見たです。」


ここは怪しまれても知らない振りをしようと試みた。


しかし‥。



桃馬&ジェルド「何間接キスしてるんだ?」


憲明「なっ!?」


豆太「はわわっ!?」


流石に平然としていた憲明もド直球なツッコミに表情が強ばり、豆太の頭の中はオーバーヒートし始め"おどおど"から"おろおろ"に変わった。


ギール「ん?間接キス?これがか?こんなの実家では日常茶飯事だけど?」


シャル「なんじゃ?間接キスとは?」


まさかの日常と無知‥。


憲明もツッコミに困ってしまった。


豆太「はわわ‥に、日常茶飯事‥。」


ディノ「もしかして豆太?さっきから落ち着かないのは今のを見たから?」


豆太「う、うん‥。ごめんなさい。」


ディノ「ゴクリ‥か、可愛い‥。」


フォルト家のダブル男の娘は乱されやすい。


桃馬「日常茶飯事さ‥。ジェルドはどうなんだ?」


ジェルド「ま、まあ‥家庭それぞれだと思うけど、比較的には多いかもな。」


桃馬「‥間接キスか‥。」


一瞬ありかと考えたが、現実的に考えたら仕組みは気持ちが悪い‥。こう言うのは不可抗力が大事だ。うんうん。それがいい。それがいい。


桃馬は自分の心に言い聞かせ、過ちの行動を抑えるのだった。


シャル「ギールよ?間接キスとさなんだ?」


ギール「あぁ、簡単に言えば俺が口にした物をシャルが口にする行為だ。」


シャル「へぇ~、そうなのか~。全くそんなことで心が揺らぐとは子供なのだ。」


シャルに言われると皮肉にも聞こえるが、冷静に考えればシャルの歳はこの中ではずば抜けておい‥ぶふっ!


ドガッ!ボキッ!グサリ!



ピンポンパンポーン!


しばらくお待ちください。


シャルのありがたい言葉は最もだ。

長きに渡って得た知識と経験から見れば間接キスなど子供のじゃれあい程度のレベルである。見かけだけではない真のお姉さんの威厳を見せつけたのだ。(言わされています。)



桃馬「ふーん、なら普通のキスはできるのか?」


ジェルド「そうだな、間接キスが子供ならキスはどうなんだろうな?」


追い討ちをかけるかのように質問をする。


シャル「そんなの魔界では挨拶なのだ。だから簡単よ~。」


余裕を見せる元魔王様、ならお手並み拝見だな。


ギール「お、おい二人とも!?何言ってるんだ!?キスの相手は誰がやるんだ!?」



桃馬&ジェルド「そりゃあ、決まってるだろ?」


二人はギールを見つめた。

言葉なんて要らない。


どうせ、妹とか言いながらシャルのことが好きなんだろ?


二人の心は珍しくシンクロしこの後の展開に期待した。



シャル「よーし!ギールよ!余とキスをするのだ!」


ギール「い、いやいや!?何言ってるんだシャル!?」


シャル「遠慮するな♪それとも恥ずかしいのか?」


見た目は子供なのに仕草は大人っぽく、妖艶溢れる雰囲気でギールに迫った。


豆太は思わず手で顔を隠してちらっと見ている。

憲明とディノは気になるのか黙々と見ていた。


ギール「い、妹ととするのは‥抵抗があるだけって!?」


気づけばシャルが上に股がり、可愛い顔が目の前に迫った。


シャル「にしし、さあ、童貞ギールの口に教え込むのだ♪」


ギール「ちょ、ちょっまっ!?」


ギールの顔を押さえ込み、シャルは目を閉じてゆっくりと口を近づける。

ギールも目を食い縛り意識しないようにしている。下手をしたらみんなの前でシャルを襲いかねないからだ。


しかし、あと五センチのところで突然ストップした。


どうせ、ギールが目を開けたらすると言う、典型的な攻めをしようとしていると誰もが思った。


しかし、シャルは突然顔を真っ赤にして徐々にギールから離れた。


桃馬「えっ?な、何が起きたんだ?」


ジェルド「も、もしかして高速でしたのか?」


シャル「や、やめじゃ!興ざめなのだ!ディノ、豆太教室へ行くぞ!」


ディノ「ふぇ!?シャル様!?」


豆太「あっ、でも‥兄さんが‥。」


シャル「よ、良いのだ!ギールは桃馬たちに任せるのだ!」


豆太「あう、あの‥兄さんをよろしくお願いします!」


まるで嵐が過ぎたかのような出来事に、残された三人はポカンとしていた。


桃馬「な、なんだ?急に恥ずかしくなったのか?」


ジェルド「やっぱり、まだ子供ってことだな。」


憲明「それにしても切り替えがすごかったな?」


一言ずつ感想を言っていると、ギールの様子が少し変であった。


ギール「‥はぁはぁ、」


顔を赤らめ息が荒く目が蕩けている。


完璧に発情の予兆である。


はまさかシャルに欲情しているのではと三人は思った。


その証拠に‥ギールの"ヴォルケーノ"が浮き上がっていた。



豆太「お姉ちゃん待ってよ!?」

ディノ「シャル様!?急にどうしたのですか!?」


シャル「う、うるさいのだ!」


よ、余ともあろう者が‥どうして逃げているのだ。うぅ、でも‥あの感触‥間違いなくギールの‥よ、余に意識していたのだ。あ、あのままでは‥余の理性が壊れそうだったのだ。

こ、これが恋と言うものなのか‥。

う、うぅん、そんなはずはないのだ!たかが、触れただけではないか!


シャルの脳内では予想だにもしない大混乱に陥っていた。


その後、放課後までギールとシャルは互いに意識し始め、授業に集中できなかったと言う。




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