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第百二十八話 深紅の腹ペコ女神

登校時の春桜学園は今日も朝から賑やかだった。新井田祭りに向け、心踊る笛太鼓の音が響き渡っていた。


話によれば、あまりにも笛太鼓を奏でたくて一部の生徒が朝の五時から同じ音を繰り返していたらしい。


それから奏者は増え、最終的にはプチ決闘祭が開かれ小さなお祭り騒ぎになっていた。


シャル「ギール三連勝なのだ~♪もっと腕に自信があるやつは前に出るのだ♪」


ギール「あ、煽るなよ!?俺はそろそろ教室に行きたいんだけど!?」


どうやら決闘祭の引き金はシャルらしい。

豆太とディノが見当たらないのを見ると、二人は先に教室に行ったか‥逃げたかのどちらかである。


桃馬たちは捲き込まれないように、こっそりと抜けるのだった。



ギール「うぐっ‥みんなもそろそろ片付けろ!?ホームルームが始まるぞ!?」


男子「ここで終われるかよ!」

男子「ギールが倒れるまで終わるわけないだろ!」

ギール「いやいや!?倒れるも何も‥誰も来ないだろ!?」


ギールの諭しの声も届かず外野と揉めていると、一枚の大きな紙を持ち、少し大きめなあんパンを咥えてのうのうと歩く赤髪短髪の女の子が来た。


一年生か異世界の転入生だろうか。

一応、春桜学園の制服を着ているからここの生徒であるようだが見覚えのない子である。

特に、一際目立つ薙刀に見覚えがない。


表情から見てもわかる無口大喰らいタイプ。

そして小動物みたいな可愛さである。


まるで恋○無○の呂○の様だ。

一部の分かる外野は当たり障りなく観察した。


しかし、分からない一部は行く手を阻んだ。


男子「おっと、待ちな!何年生かは知らないが、今は決闘中だ。悪いが迂回してもら‥へぶっ。」


?「邪魔‥はむはむ。」


案の定一撃。

これは本物だ。


生徒たちは道を開いた。


しかもそのまま通せばよいものの、当然シャルは食って掛かった。


シャル「おい、待つのだ!そこの赤いの!」

ギール「お、おいばか!?何引き止めてるんだよ!?」


?「‥??」


一応"赤いの"で通じた赤髪の女の子は、振り向き小首を傾げた。


シャル「ふっふっ、余が開いた決闘に堂々と通過するとは言い度胸なのだ!」


ギール「だから煽るなって!?す、すみません!何でもないので先に行っていいですよ♪」


シャル「な、なぜ通らせるのだ!」


ギール「今の見ただろ!あんなの勝てないって!」


シャル「それは戦ってみないと分からないのだ。」


ギール「俺を殺す気か!?あれは天星に恵まれた人間だよ!普通に勝てないって!」


ギールの言葉は道理が通っていた。

外野も徐々に理解し始め、撤収し始めていた。


?「‥ねぇ、そこの獣人‥。」


ギール「は、はい!なんでしょうか?」


?「‥エニカ様はどこにいるか‥教えて。」


ギール「え、エニカ?あぁ、編入して来たお姫様か。知ってるけど、どんな関係で?」


?「‥家臣?」


まさかの疑問系で返って来た。

まあキャラを見る限りそうなるとは予想はついていたが‥。

そうか、家臣となるとおそらく公国からのボディーガードであろう。


それより、どうして一緒じゃないんだ。

まさか、一人で来たのだろうか。


ギールは分析をしているとスッポかされていたシャルが動いた。


シャル「お主、名はなんと言うのだ?」


ルイ「ルイは、ルイだよ?」


シャル「ルイと言うのか。お主我が兄と一戦勝負‥んんっ!?」


ギール「また、お前は勝手に!?」


ギールは急いでお喋りなシャルの口を塞いだ。


ルイ「‥?」


ギール「な、何でもないんだ♪そ、それより、エニカに会いたいんだよな?案内するよ~♪」


ルイ「うん‥。」


シャル「ぷはっ!おいギール!?戦わないのか~!?」


ギール「大人しくしていろ!?この戦闘観戦マニアめ!」


ギールは暴れるシャルを抱え、ルイと共に二年五組へ向かった。



その頃二年五組では。


映果とエニカが、ルイの話で盛り上がっていた。


映果「へぇ~♪今日エニカちゃんの国から護衛が来るんだ~♪」


エニカ「えぇ、公国の中でも最強の家臣よ♪」


映果「最強!?す、すごい!で、でも、一緒に来なくて良かったの?」


エニカ「大丈夫♪私とルイが学園の編入手続きの時に一度学園に来てるから場所は分かるわ♪」


映果「なるほど~、土曜日の時に来てたんだね~♪でも、どうして時間差で編入なの?」


エニカ「えーっと、あの後亜種族の残党が公国領で決起してね。その討伐でルイが出陣しちゃってね。」


映果「な、なるほど!」


二人の話は、近くにいた渡邉と藤井の耳に入った。


当然、そんな子あの大戦にいたっけ?と他のメンバーに伝達されて行った。


しかし十人の内、誰一人も心当たりがなかった。


強いて印象があるのは大戦前の頃、リブル公国のとある店で昼食を取ってる時に、華奢(きゃしゃ)な赤髪の女の子が成人男性の何倍もの料理を食べていたくらいだ。


藤井と近藤はそれを見て、

まさかな、ゲームのキャラと似てるけど都合よくいるはずがない、と語っていた。


しかし、それが現実の物になるとはギールが現れるまで夢にも思わないことであった。



ギール「おーい、エニカいるか?お客さんだぞ?」


エニカ「あ、おはようギール♪もしかしてルイを案内してくれたの?」


ギール「お、おう、それより学園に慣れてない子を一人にさせるなよな?」


ルイ「エニカ‥。」


ギールの後ろからひょっこりと姿を現すルイに、エニカは駆け寄り、クラスメートは注目、微食会の十人は固まった。


あの時の大喰らいが‥公国最強!?

いやいや、あの大戦の時どこに行ってたんだ?

など、ツッコむ所はあるが‥不思議とにかく何かを与えたくなる様な魅力に惹かれる。


近藤と藤井は、何故か早く肉まんを与えて餌付けたいと考えていた。


ギール「それじゃあ、俺はこれで後は頼むよ。」


エニカ「ありがとうギール~♪さぁさぁみんな紹介するね♪私の家臣ルイ・リーフよ♪ほら、ルイもあいさつ♪」


ルイ「ルイは‥ルイ‥よろしく。」


無表情で自己紹介をし一礼した。


すると、クラスメートたちはルイに駆け寄ってコミュニケーションを取り始めた。


ルイも思わず少し驚いたような表情をしていた。


女子「ルイちゃん!スタイルいいね!写真撮らせて!」

女子「も、モデルに興味ない!?」

女子「あ、ずるいわよ!ルイちゃんを先に撮るのは私よ!」


ルイ「しゃしん?もでる?とる??」


異世界出身のルイには、女子たちの声が呪文にしか聞こえなく思わず小首を傾げる。


この仕草が更にクラスメートの心をヒートアップさせた。


近藤「また、すごい子が来たな?」

藤井「あぁ、それよりエニカの家臣ってことは微食会に入るんだよな?」

近藤「‥まずい。」


二人だからこそ分かる予感。

おそらく学食は荒れるだろう。



その後担任の先生が来るまで、ルイ包囲網は続き、更にその後ルイとエニカは校長室へと連行された。



上杉「ルイくんにエニカくん、忘れてたのかもしれないが、初日は私の元へ来るように言ってたはずだが?」


エニカ「す、すみません。」


ルイ「エニカどうして謝る?ルイは、エニカを守るため、先に向かうのは当然。」


上杉「まあ気持ちは分かるけど、席とか色々あるのだよ。」


ルイ「せき?ルイは、エニカの隣であればそれでいい。」


上杉「その調整のためにも来てもらう必要があったんだよ?」


上杉校長は優しく教えた。

どんな相手でも分け隔てなく接する。

教師の鏡だ。


ルイ「‥調整‥うん、理解した。」

エニカ「上杉先生、今回は私の不手際です。ルイのことはお任せください。」


上杉「うむ、ルイくんには武人以外の生き方を学べる良い機会だ。二年生には頼れる子がたくさんいるし、色々と触れ合うといいさ。」


エニカ「は、はい!わかりました!」


上杉「私からは以上だ。それじゃあ教室に戻りなさい。」


エニカとルイは、教室へと戻った。


これがお転婆腹ペコ女神伝説の始まりである。

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