第百二十七話 事後
翌日の朝。
梅雨の季節を忘れさせてくれるような素晴らしい晴天。
景勝率いる男性陣は半分寝ぼけながら朝食がスタンバっていると思われる茶の間へと向かっていた。
しかし、茶の間には朝食はない。
三人は小首を傾げた。
いつもあるはずの朝食がない。
台所に顔を向けるも人の気配もないし、何かを作ってる様子もない。
まさかの、母雪穂の寝坊である。
桃馬「母さんが寝坊なんて‥珍しいね。」
景勝「あぁ‥そうだな。」
蒼紫「‥もしかして‥ふぁ~、女子会でも開いてたとか。」
寝ぼけながら他人事のように話す三人。
取りあえず導かれるように台所へ向かった。
景勝「‥さて‥さすがに、俺たちの分だけって訳にはいかないよな。」
桃馬「俺たち入れて七人分‥そして米は時間的に間に合わない。食パンにベーコンエッグを乗せて完成させよう。」
蒼紫「時間もないからな。やむ終えないな。」
景勝「よーし、早速取りかかるぞ。」
佐渡家朝食男飯!
ベーコンエッグパン
材料(一人前)
食パン
卵 一つ
ベーコン 二切れ
サラダ油 少量
塩コショウ 少量
景勝「さて‥運良く揃えられた。後はパンをトースターにかけ、ベーコンエッグを作るだけだ。」
蒼紫「父さん、エッグは目玉焼きですか?それとも、スクランブル的な物でしょうか?」
桃馬「あるいは両方ですか?」
景勝「うーん、俺は○た‥いて!?」
無意識に下ネタを言いかけると両サイドから腹パンをくらう。パンだけに‥。
蒼紫「取りあえず、材料も考えて‥全部目玉にしよう。」
桃馬「了解‥。」
蒼紫「父さんはパンを焼いててくれ。。」
景勝「わ、わかった‥。」
意外にも佐渡家の男たちは、簡単な料理ならお手のものである。
桃馬「ねぇ、兄さん?」
蒼紫「どうした桃馬?」
桃馬「‥昨夜の母さんの強行、止めた方が良かったかな?」
蒼紫「‥止めた方が良いことに越したことはないけど‥リスクがな。」
桃馬「だ、だよね‥。酒も少し入ってたし、止めたら氷漬けにされるよね。」
蒼紫「そうそう、よっと。父さんパンは?」
景勝「おぉ、ちょっと待ってろ。まさかここで、食パンが七つ入るトースターが役に立つとはな。ほらよ。」
桃馬「‥そんなのどこにあったんだよ。」
蒼紫「どうせどっかの叩き売りに絡まれて買ったんだろ?」
景勝「うぐっ、す、鋭いな‥。」
蒼紫「はぁ、父さんは○平かよ‥。」
桃馬「いつか本当に卵割り機を買うかもな。」
蒼紫「本当にあったらウケるけどな。」
二人は景勝を哀れんだ目で見つめた。
景勝「そ、そんな目で見るな!?ほ、ほら、早く玉子乗せて女の子達を起こしに行くぞ!」
苦し紛れの切り替えに息子たちは引き続き哀れんだ目で見つめ、ベーコンエッグをパンの上に乗せた。
朝食を完成したのは良いが、雪穂たちはまだ起きてこない。
三人は不躾だが蒼紫の部屋へと向かった。
午前六時五十分。
そろそろ支度をしないとまずい時間帯に差し掛かっていた。
景勝は扉をノックして起こしに掛かる。
景勝「雪穂~?みんな朝だぞ~?」
しかし、反応がない。
景勝はドアノブに手を伸ばして中に入ろうとすると、桃馬と蒼紫が不安にしていたことを発した。
桃馬「これは、やっぱり何かあったな。」
蒼紫「あるいは、夜遅くまで何かしてたか。」
景勝「‥そ、そう言うと開けずらいんだけど。」
蒼紫「気にせずはよ開けろ。」
景勝「わ、わかった。雪穂入るぞ?」
ガチャっと勢いよく開けると、媚薬と"何か"が混ざりあった様な甘ったるい香りが一気に広がり、部屋の中は淫靡な光景で広がっていた。
エルガと桜華は色っぽく肌蹴て寝込んでおり、雪穂は全裸のシノンに抱きつき幸せそうに寝ていた。
三人の男たちは目をそらして、黙ってドアを閉じた。
景勝「‥桃馬。桜華ちゃんは今日風邪を引いたことにしておくよ。」
桃馬「う、うん‥。学校に行く準備してくるよ。」
蒼紫「お、送ろうか?」
桃馬「あ、大丈夫だよ‥あはは。部屋に言ってくるね。」
蒼紫「そ、そうか‥じゃあ、俺はトイレに‥。」
その後、二人の息子は下半身の暴走"ヴォルケーノ"を静め、桃馬は朝食を済ませ春桜学園へ久しぶりに一人で登校した。
景勝と蒼紫は仕事を休み四人の看病をするのであった。
通学道河川敷より
違和感しかない‥。
いつも側にいてくれた桜華がいないだけで、ここまで不安になるとは夢にも思わなかった。
それに加え、桜華の淫靡な姿が頭から離れない。昨日まで何かを考えていた様な気がするが、全く思い出せない。
再び桃馬の"ヴォルケーノ"が復活。まわりにばれないようにポケットに手を入れ前屈みで歩いた。
が~。
後方よりあの白髪の駄犬が飛び付いてきた。
ジェルド「おっはよ~♪桃馬~♪昨日はよく眠れたか~♪はぁはぁ♪」
桃馬「なっ!?ジェルド!?や、やめろって!?」
桃馬は焦った。
今ジェルドに"ヴォルケーノ"の存在を知られるとかなりまずい。八割方性的に喰われる可能性がある。
だが、抗議をしても離れないことはわかっていた。だって‥駄犬だから。
小頼「全く~、ジェルドは飽きないわね?最近私より懐いてるわね?」
エルゼ「わふぅ~♪狼として主へのスキンシップは生命線です♪」
小頼「むぅ‥彼女の私は主じゃないのね‥。うぅ~悔しい!写真を撮ってやりたいわ。」
昨日の約束により、小頼は桃馬絡みの盗撮を一切合切禁止されているのだ。
しかし、情報の制限をしていないため、もしここでヴォルケーノがばれれば‥変な話、ジェルドに好意を持ち始めていると広められ、弱い立場に逆戻りである。
結果、朝から大ピンチである。
ジェルド「ん?そう言えば桜華はどうしたんだ?」
桃馬「っ、か、風邪だよ。」
ジェルド「か、風邪?精霊でも風邪引くんだな?」
桃馬「い、生きてれば風邪くらいは引くさ。」
ジェルド「ふむぅ、あ、それより神輿役どうする?今日から特訓でもするか??」
桃馬「神輿役?あっ!?そ、そうだった!」
ようやく思い出した桃馬は声を上げた。
ジェルド「わ、忘れてたのか!?昨日あんなに渋ってたのに?」
桃馬「ま、まあ色々あってな。」
ジェルド「色々‥ま、まさか桜華としたのか!?」
桃馬「ち、違うぞ!?なに言ってるんだ!?」
ジェルド「そ、そうか‥。そ、それなら良いんだけど。」
目の前の駄犬は、まるで乙女の様な仕草で言い捨てた。
やばい‥前からわかっていたが、この犬はがちで俺の穴を狙っている。
最近のスキンシップにも勢いが増している。少しでも油断したら押し倒される可能性がある。
そんな恐怖を背負いながら桃馬は春桜学園へと向かった。