第百二十一話 大戦の報奨
多くの犠牲を出した帝都ノ変か三日後。
異世界"カルガナ"に蔓延っていた亜種族軍は完全に鎮圧された。
これを祝して春桜学園では朝からお祭り騒ぎであった。
町内からの提供もあり、空砲と万雷花火が高らかに鳴り響いた。
グレイム帝国万歳!
異世界万歳!
日本国万歳!
義勇軍万歳!
英霊万歳!
多種多様な旗を掲げ、取り戻した平和を喜んでいた。
桃馬「‥朝からすごいな。」
憲明「やるとは聞いてたが‥ここまでやるとは。」
ジェルド「‥下手に暴走しなければいいけどな。」
普通なら近所迷惑並みの盛り上がりに、授業を受けに来た桃馬たちは少し引いていた。
しかし、女性陣営は楽しそうに見ていた。
リフィル「みんな大勝利の感情を爆発させてるね♪」
エルゼ「わふぅ~♪お祭り見たいで楽しそうです♪」
桜華「そ、それにしても‥やり過ぎな気もしますが。」
小頼「あはは~♪このくらい賑わいがないとお祭りじゃないよ~♪」
リフィル「そうそう♪これからお祭りも多くなってくるから景気づけにいいじゃない~♪」
桜華「せ、先生たちの取り締まりが激しそう‥。」
桃馬「始業時間までが‥勝負だな。あるいは今日一日このままにするか‥。」
憲明「うわぁ‥決闘祭とか開きそう。」
ジェルド「今日は巻き込まれないようにしよう。エルゼ?変なことに巻き込まれそうだったら俺のところまで逃げてくるんだよ?」
エルゼ「は、はい!」
小さなもふもふは可愛らしく尻尾を振った。
可愛さ抜群のエルゼに、桃馬と憲明は微笑みもふり始めた。
桃馬「エルゼちゃんは兄ちゃんと違って良い子だな~♪」
憲明「こんなの反則だろ~♪」
エルゼ「んんっ~♪わふぅわふぅ~♪」
ジェルド「そ、そんなこと言うなよ桃馬~♪ほ、ほら、俺の尻尾とか、頭撫でても良いぞ!」
地味に妹と張り合う情けない兄、
桃馬はそんな可愛らしいジェルドをもっとからかい始める。
桃馬「‥じゃあ、お座り!」
ジェルド「お、おお!わふっ!」
桃馬はイケメンケモ耳男子を犬座りさせ、エルゼのもふもふタイムを見せつけた。
完全に"おあずけ見せつけプレイ"である。
羨ましそうに見つめるジェルドは、興奮し始め尻尾をパタパタと振りまくる。
ジェルド「わふぅ~。はぁはぁ。」
その様子にようやく桜華は一つの結論を見つけ出す。
桜華「‥ジェルドってもしかして‥Mなのですか?」
リフィル「そうだよ~♪もしかして今更気づいた?」
小頼「まあ、見た目はSよりなんだけどね~♪ジェルドは躾れば躾るほど可愛くなるんだよね~♪」
リフィル「でも、躾過ぎると襲われてSになっちゃうけどね♪」
桜華「だ、誰か桃馬以外に襲われたことが‥?」
さすが桜華、うまく桃馬を数に入れなかった。
小頼「うーん‥桃馬‥しかないかな?」
やはり、桃馬限定らしい。
とまあ、他の人を襲ってたらそれもそれで引くところがあるが‥。
桃馬「ふっ、珍しく大人しくできたなジェルド?」
ジェルド「はっはっ!わふわふ♪」
興奮しすぎて犬語で話すジェルド。
たまらず桃馬はもふり始めた。
桃馬「まったく‥お前は本当にかわいいな~♪」
何だかんだ言って、桃馬はジェルドが大好きなのだ。
桃馬は犬モードのジェルドをもふり始め満足そうにしている。しかも、校門前で堂々と‥。
男子「とうとう、校門でいちゃつき始めたな‥。」
女子「ジェルドかわいい~♪写メしとこ~♪」
女子「きたきた!ついに桃馬がデレたぁぁ!」
女子「校門で二人の◯門を◯し◯れして‥はぁはぁ。」
徐々に危険な外野が増え始め、桜華は慌てて引き剥がす。
桃馬「お、桜華どうした?もしかして、もふりたかった?」
桜華「ど、どうしたもありません!み、みんなが見てますから‥その恥ずかしくて。」
桃馬「‥あっ。」
我に返った桃馬は顔を赤らめ咳払いをする。
ジェルド「桃馬~♪もっと~♪」
桃馬「も、もう終わりだ!早く教室にいくぞ!」
ジェルド「じゃあ、続きは教室だな!」
桃馬「お、終わりだっての!?桜華いくぞ!」
桜華「ふぇ、あ、うん!」
動揺する桃馬は桜華と共に移動した。
女子「おしい~♪」
女子「桜華ちゃんの前では難しいか~♪」
男子「もっと蕩けたジェルドを見たかったな~。」
外野は残念がるどころか、満足そうに見届けていた。
ジェルド「わふぅ‥おあずけか~、仕方ない、エルゼ行くよ?」
エルゼ「わふぅ~♪」
エルゼは憲明から離れ、ジェルドに抱きついた。
憲明「あぁ‥うぐぅ、回収された時の虚無感がえぐいな‥。」
リフィル「あはは~♪まあ仕方ないよね~♪」
小頼「あのもふもふを触ったら最後‥極度の中毒になるからね♪」
憲明「あぁ‥手にあのもふもふの感触が‥の、残ってる‥。」
リフィル「これは重症だね~♪じゃあ、私の胸でも触ってみる?」
憲明「なっ!?い、いきなり何言ってるんだ!?」
リフィル「あはは~♪冗談だよ~♪」
リフィルは笑いながら走り出すと憲明は後を追いかけた。
小頼「‥クスッ。」
小頼は笑みを浮かべて茂みの方を見ると、カメラを持った亀田映果がひょこっと現れグッジョブサインをした。
そして、先行した桃馬であったが、玄関付近で衝撃的な光景を目の当たりにする。
それはげっそりと痩せこけた従兄弟の両津直人が、また磔にされていたのだ。
一応帝都ノ変では大いに活躍した一人なのだが、またハーレム規定に引っ掛かったのだろうか。
桜華「はわわ!?な、直人さん!?」
桃馬「おいおい、今度は何したんだよ。」
あまりにも酷い扱いに二人は心配していると、目の前に直人を心配そうに見上げるリールとエルンがいた。
桜華「リールちゃん、エルンちゃん?」
リール「ん?あ、桜華~!ど、どうしよう!な、直人が吊るされちゃったよ~。」
エルン「ちょうど桃馬もいたか。頼む、直人を弁護してくれ!」
桃馬「お、落ち着け二人とも!?一体何があったんだよ?」
桃馬が訪ねると二人は見つめ合い言いにくそうにしていた。
リール「じ、実は‥。」
二十分前‥。
校門前‥。
男子「な、直人!?どうしたそんなにげっそりして!?」
男子「わ、悪い物でも食べたか!?」
直人「だ、大丈夫‥気にしなくていいよ~。」
少し気の抜けた声にまわりは更に心配する。
だが、直人は大丈夫の一点張りで真相を話そうとしない。
それもそのはず、帝都ノ変が終わり稲荷姉に拐われリール、エルン、リグ姉に二日ぶっ通しで蹂躙され、生命源の妖気が一滴だけになるまで搾られたことは‥口が裂けても言えない。しかも、一昨日久々に帰って来た母親の両津杏佳にも四人を大いに受け入れ、終いにはアイシュ姉さんまでも嫁に進めるという暴挙に出た。これで昔はクールだったとか‥到底信じられない。
女子「ねぇねぇ、リールちゃん、エルンちゃん?何かあったの?」
リール「ふぇ!?あ、それは‥えっと、何もないよ♪」
動揺しまくりリールに同級生は何かあると確信した。リールとエルンには一応口止めはしているが‥嘘がドヘタなリールは案の定隠しきれていない。
エルン「ま、まああったと言えば、リールはが作った飯に当たったくらいかな?」
リール「ふぇ!?そんなことないよ!?だってあの時エルンも美味しい美味しいって言ってたし、今回のはみんなして直人を襲うから‥んん!?。」
エルン「ば、ばか!?」
エルンは慌ててリールの口を塞ぎにかかるが、手遅れであった。
女子「みんなして?も、もしかして二人以外にも‥ごくり。」
男子「リールさん!今の話は本当か!?」
耳の良い男子たちがこぞってリールとエルンに集まった。
まずい‥今日は早退しよう。
直人は、こっそり逃げようとする。
そんな時運悪く登校してきた奏太に声をかけられた。
奏太「よう、直人~おはようって、結構やつれてるな?どうした?」
直人「ばっ、奏太!?うわっ!?」
男子「確保!」
男子「直人~♪ちょっと話を聞かせてもらおうか??」
直人「な、なんだよ、話って‥あ、いたた~、お腹が痛くなった~、帰らないと~。」
直人も嘘がドヘタであった。
男子「お前ら!磔準備!祝祭の生け贄だ!」
男子たち「おぉぉ!!」
その後全てを話せば許してくれると言われ、全部話すもスケールが予想を越えていたため、結局磔にされたのだ。
桃馬「そんなことが‥それよりよく生きてたな‥。」
逆に四人相手に生きていたことに称賛する桃馬。普通人間ならともかく、魔族や妖怪に捕まれば大半は長い賢者タイムに入るのだが‥。直人の精力が強いのか、それとも殺さず生かさずにされていたのか‥。探るのは止めておこう。
桜華「で、でも、自供しちゃったら助けようにも‥助けられない気が。」
リール「だ、だから、桜華ちゃんには桜華様になって、みんなを説得してほしいんだよ。」
桜華「ふぇ!?おか‥うぅん、桜華様を?」
リール「うんうん!」
エルン「私からも頼む、この通りだ!」
桃馬「‥桜華、頼めるか?」
桜華「うーん、」
少し悩んでいると脳内に母藤霞が語りかけてきた。
なに考えてるの桜華?
あ、お母様‥どうしましょう。
直人さんを助けたいのですが、
力を貸してくれませんか?
クスッ、私に任せなさい♪
でも‥桃馬くんと少しキスしても良いかしら?
うぐっ!?うぅ、仕方ありません‥。
恥ずかしい条件に桜華は苦渋な思いで了承した。
桜色の髪がパープル色へと代わり、カリスマ溢れる桜華様の再臨により、直人は解放されたのだった。
その後、何事もない平和な日々が数日間続いたのであった。