第百二十話 帝都ノ変(最終) 未来(あす)へ
多くの犠牲を出した帝都攻防戦から一夜開けた。帝都内では昨夜英霊を称える勝利の宴が開かれ、酔いつぶれて寝ている人や普通に疲れて寝ている人でごった返していた。
そんな光景を運良く宿に入り込めた桃馬と桜華が窓越しで眺めていた。
桃馬「‥やっぱり外は酷いことになってるな。」
桜華「そ、そうですね。こうして見ると昨夜の滑り込みで最後の部屋を取れたのは運が良かったです。」
桃馬「滑り込みか‥。でも‥蓋を開けたらこの量だよ。」
二人の後ろには、シャルを筆頭に強引に入り込んだ学生らが寝ていた。
もちろん、定員はとうにオーバーしている。
ちなみに、アイシュは女子たちに捕まり口には言えないくらいのセクハラを受け、リヴァルは部屋の外で門番をしていたが女子たちの謀略により眠らされ、かっこかわいい寝顔を写真に撮られていた。
桜華「‥みんなが起きるまで動けそうにないですね。」
桃馬「‥はぁ、これなら外でもよかった‥いや、まだ今がいいか。ん?」
桃馬は再び窓の方を向きため息をつくと、昨日の戦闘で負傷したはずの本多忠成先輩が一人で歩いているのを目撃する。
桃馬「あれ?忠成先輩だ。」
桜華「あっ、本当ですね?怪我をしてるのにどこに行くのでしょうか?」
桃馬「‥こんな時でも修行かな?」
桜華「そ、そんな‥話によれば重症だと聞いてましたが。」
二人小声で語っていると、
忠成の後ろから二人の女性が後を追っていた。
桃馬「あれ?今度は時奈先輩と‥あの子は誰だ?」
桜華「見たところ‥学園の生徒では無さそうですね?」
桃馬「しかも、尾行にも見えるな。忠成先輩‥何しようとしてるんだろう。」
動向が気になる二人だが、出ようにも出れない状態に諦める他なかった。
その頃、帝都宮殿では朝早くから昨日までの戦況情報をまとめていた。
日本政府の痛手としては、
亜種族に支援していた。
日本政府裏の権力者徳川家時の死。
これにより芋づる式の計画は失敗となり、
一時的な抑制にはなるが、完全解決とはならなかった。
帝都では、
四星将シシキ・ジュークが発した。
北方遠征に出ていた部隊の壊滅。
大将軍と五聖剣の討死の報に、皇帝シルバーは深く悩ました。
何故なら帝都の力が著しく低迷することは目に見えていたからだ。
象徴が弱体化すれば、それに取って変わらんと兵をあげる国が必ず現れ群雄割拠になりかねない。中世ベースの世界だからこそ考えられる時代の流れである。
中田栄角は親同盟国として協力することを約束し、両津界人ら警界官を数百名駐屯させることを決めた。
これにより、界人は広報鳥を使って直人を帝都へ呼び出した。
界人「と言うことだ直人‥明後日辺りに杏佳が帰ってくると思うが母さんを頼んだよ。」
直人「か、母さんが帰ってくるのか!?」
界人「あぁ、言ってなかったか?」
直人「何も聞いてないぞ!?」
界人「そうか、一応母さんにはエルンちゃんとリールちゃんの話しはしているけど、リグリードさんのことは話してないからうまくやってくれよ?」
直人「‥冷やかされる。」
両津直人の母、両津杏佳は、
女性公安警察を務めており、武術と共に学力明晰で完璧な美人捜査官である。しかし、完璧な一面の裏では不器用で天然な一面もあり同僚や後輩に可愛がられている。
好きな物はギールの母、リブル・フォルトである。
界人「まあ、三人嫁ができればな。おそらく、孫を期待するだろうな。」
直人「まだ俺は学生だぞ‥。さすがに気が早いだろ。」
界人「まあ、俺も早く孫が見たいがな~?」
直人「後早くても五年まてよ。」
界人「ほぅ~、五年後か‥。」
直人「早くてだよ‥。はぁ、母さんが帰ってくるのに嬉しいようで嬉しくないような。」
界人「あははそう言うな。あっ、そうそう、もうひとつあるんだけど。」
直人「‥今度はなんだよ?」
界人「直人に新しい兄さんと姉さんができたから。」
直人「‥へっ?」
界人「いや、本当は昨日の夜に言うべきだったんだけどな。ほら、嫁さんと楽しそうにしてたから言い出せなくてな。」
直人「ちょちょ、まてまて!?それは母さんに言ってるの!?」
界人「言ってない。」
直人「‥ちなみに、い、稲荷姉には?」
界人「承諾してるよ。現に後ろに‥。」
直人「えっ?」
界人は何食わぬ顔で後ろを指差すと、聞き覚えのある妖艶お姉さんボイスと共に抱きつかれた。
稲荷「久しぶり~♪我が弟兼旦那様~♪」
直人「はわわ!?い、稲荷姉!?どうしてここに!?」
稲荷「それはいいじゃない♪さあ、嫁が揃ってるわけですし‥子作りを‥はむっ♪。」
弟をからかうかのように耳をあま噛みし舐め始める。
直人「ひぃうっ!?お、親父の前でや、やめてくれよ!?」
稲荷「いいじゃない♪お父様も了承してるわ♪」
直人「えぇ!?お、親父が‥はわわ!?」
血の繋がりはないけど、事実上の近親相姦である。しかも、親父に見られて死ぬほど恥ずかしい。
界人「まあ俺と杏佳は、前から稲荷が直人のことが好きってことはわかっていたし、いつかは来るかな~って思ってたから心配するな。元気なもふもふな孫を期待してるからな~♪」
直人「か、軽いなおい!?」
稲荷「クスッ♪さあ、いきましょう~」
直人「ちょっ、稲荷姉!?待ってくれ~!?」
界人「あ、稲荷~?明後日まで家に誰もいないから好きに使っていいからな~?」
稲荷「は~い♪」
直人「止めやくそ親父ぃ~!」
こうして直人は、欲望が溜まりに溜まった稲荷に拐われ二日間蹂躙されるのであった。(がち)
その後、
魔族と妖怪の嫁が多いと命に関わります。
と、直人は語ったと言う。
ここで小話
首を跳ねられたのに生きていたことに疑問に思っていた直人は、その手のことに詳しい稲荷に相談しました。すると、稲荷はもふもふした耳を尖らせ直人に優しく教えました。
稲荷「普通なら死んじゃうけど、今回の場合は直人が死に際に三人が酷い目に合う瞬間を目にして妖気を高めたからかもね。」
稲荷「妖に取って妖気は命と同じだからね♪それを極限に高めれば‥首を跳ねられても死なないかもね♪それと‥その首を跳ねたスカラって言う奴‥許せないわね♪」
そしてその夜、
牢屋で裁きを待つスカラが無惨な姿で発見されたと言う。
淫靡な話から百八十度傾け、
視点を帝都防壁の外へと移る。
そこには仁王立ちでとある男を待ち構える手負いの本多忠成がいた。
そしてその後ろには、こっそり後をつけてきた新潟時奈とナーシャ・グレイムがいた。
ナーシャ「本多様‥まさか、本当にあのお体で昨日の約束を果たそうとしてるのでしょうか。」
時奈「かもしれないですね。でも、止めたとしても忠成は聞かないでしょうけど。」
ナーシャ「‥見守るしかないのですか?」
時奈「ま、まあ手負いと言っても、八割は治ってると思うから大丈夫ですよ。」
ナーシャ「‥残り二割が怖いです。」
時奈「フラグは作らない方が良いですよ?」
ナーシャ「ふらぐ?えっと、よ、要するに余計なことは言うなですね。」
時奈「そうそう、あっ、誰か来た‥っ、あぁ、やっぱり‥。」
ナーシャ「っ!?」
忠成の前に人影が見えると、
二人が思った通りその正体はゴリ・ゴリポンであった。
ゴリ「ウホッ。お主が見えたので来てみたが‥無茶はやめておけ。」
忠成「ご心配は無用。お主こそ手を抜いて惨めに殺られぬことを願う。」
ゴリ「ウホッウホッ!言うではないか‥なら、俺も全力で貴様を潰すウホッ!」
忠成は愛槍の柄で地面を叩くとゆっくり構えた。
忠成「本多平八郎忠成‥いざ参る!」
豪傑二人の一騎討ちは、昨日よりも激しさを増していた。衝撃波はもちろん、地面は凹み、地割れが起きた。
ナーシャ「‥本多様。」
時奈「‥また、楽しそうに戦うわね。」
ナーシャ「‥止めようにも隙がないです。」
時奈「あはは、止めなくて良いのですよ?今止めるのは‥そうですね、"お願い!沢山◯に◯◯へぇ~♪"とお願いしてるのに、す◯◯めされたあげくに、◯に◯されるくらい野暮ってものですよ。」
ナーシャ「‥え、えっと、よくわかりませんが、気分を壊すと言うことですね?」
時奈「おぉ大体正解だ!いや~、分かってるね♪」
つい下ネタ発作が出てしまい、純粋無垢な姫様に要らぬ知識を吹き込んでしまった。
しかし、ナーシャの脳内では勝手に綺麗に翻訳されるため、どんなに汚れた表現でも高性能のフィルタリングが働く限り汚れたりしないのだ。
よって、セーフである。
そして、
忠成とゴリの一騎討ちも終わりを迎えようとしていた。
ゴリの渾身の一撃を柄で防ぐと、愛槍"人間止主"が真っ二つ折れた。忠成はその反動で体を捻り、右手で持っている折れた柄で迫り来る腕を受け流し、左手にある"穂"がついた柄でゴリの腹部を貫いた。
ゴリ「ぐっ!?か、かはっ‥!?」
忠成「はぁはぁ‥。」
ゴリ「み‥見事‥‥だ‥‥つよ‥き‥‥もの‥ウホッ。」
ゴリは忠成の武勇を称賛し、
その場に倒れ込み息絶えた。
忠成は折れた愛槍を地面に突き刺し、
深々と一礼した。
忠成「‥貴公も見事な武であった。我が愛槍よ‥共に眠り黄泉へと参られよ。」
忠成が後ろを振り向き帝都へ戻ると、愛槍"人間止主"の穂が粉々に砕け散った。
時奈「‥愛槍も限界だったのね。」
ナーシャ「‥この瞬間で砕けるとは、まるで生きているみたいです。あっ、本多様が来ます。隠れましょう。」
時奈「そうね、見つかると面倒だからね。」
二人は気づかれない内に物陰に隠れた。
しかし、忠成は完治までの残りの二割が悪化、傷口が開きその場に倒れ込んだ。
なかなか通りすぎない事に疑問を感じた二人が戻ると、倒れた忠成を発見し急いで運び込み治療したのだった。
倒れてから発見まで約十分程度であった。
これにより、帝都ノ変は完全に終結した。