第百十七話 帝都ノ変(25) 反抗と反攻
四星将シシキ・ジューク討死。
四星将ゴリ・ゴリポン後退。
同時の起きた出来事に、亜種族軍前衛部隊の大攻勢は一気に失速した。
連合軍はこの機に乗じて大反攻を開始。
防壁外まで亜種族軍を怒濤の勢いで押し返した。
残るは中衛部隊を殲滅させリブル公国連合軍に軍を転身させた。
グリード・マドリード
戦場外まで後退した。
ゴリ・ゴリポン
二将だけである。
グリードは、進軍途中に念を入れて親王派本部に援軍を要請。更なる大攻勢を目論んでいた。
だがこの時、シシキの討死とゴリの後退は知るよしもなく。
グリードの歯車は崩壊し始めていた。
一方‥‥戦場が代わり魔界では。
親王派四星将の大規模行軍により、親王派の本部が特定。
共存派の魔国と日本大使館、妖怪一派など連合軍が攻勢に出ていた。
戦況は圧倒的に連合軍が上回りあっという間に亜種族の総本山は崩れた。
京骨「味方が強すぎなんだけど‥。」
ルシア「まあ、各魔王様たちが本腰入れたからね。それに‥今回の功労者はエルガ先輩ね。」
京骨「純潔ダークエルフの力はすごいよな‥。ゲートの気配を追って特定するなんて‥。」
エルガ「私がどうかしたか京骨?」
京骨「いえ、ただエルガ先輩がすごいなって‥えっ?」
京骨が振り向くとそこにはダークエルフ特有の綺麗な褐色肌とさらっとした黒髪‥そして大きな胸の谷間を大胆に開き高貴なカリスマを漂わせる才色兼備。春桜学園元生徒会長エルガ・ガールンドが立っていた。
ルシア「エルガ先輩!?」
エルガ「そう驚くなルシアよ?それより二人ともしばらくだな。」
京骨「久しぶりです。エルガ先輩も元気そうで何よりです。」
ルシア「噂には聞いてましたが、亜種族軍の中枢を探っていたのですね。」
エルガ「まあな、ちょうど今回の帝都への侵攻が好機だと思ってな。準備を進めていたが‥ここを潰したとしても、亜空間を掌握することはできない。また、新たな敵も現れるだろう。」
京骨「よくそこまで頭が回りますね‥。」
ルシア「脳内メモリーがハイテクね。」
エルガ「クスッ、時期ガールンド国の長として当然だ。」
かっこよくドヤると白いもふもふと黒髪の男が走ってくる。
?「あっ!蒼紫さま!エルガ様を見つけました!」
蒼紫「でかしたシノン!こらエルガ~!」
エルガ「‥ふぅ、また騒がしい先輩が来たようだな。」
黒髪の男が迫ってくるとため息をついてボヤく。
蒼紫「全く、突然空間移動するなって言ってるだろ?護衛役についてるこっちの身にもなれよ。」
エルガ「それなら先輩が私との婚約を受け入れれば‥考えるが?」
ルシア&京骨「こ、婚約!?」
初耳のビッグニュースに二人は思わず声をあげた。
蒼紫「ん?おぉ!京骨くんとルシアちゃんじゃないか!やはり君たちも参戦してたのだな。」
この男の名は佐渡蒼紫。
佐渡桃馬の三つ上の兄である。
ちなみにエルガの先輩に当たる。
今は魔界支部日本大使館の勅使兼ガールンド国警護隊長として赴任している。
京骨「え、えぇ‥ところで蒼紫さん‥今婚約って‥。」
蒼紫「あぁ~、その事か。実はな、俺には可愛い嫁のシノンがいるってのに、エルガが勝手に婚約しようとしてるんだよ‥。身代わりで弟を出そうとしたんだけど、精霊様と良い感じだって聞いた物だから‥逃げ場がなくてな。」
ルシア「な、なんか‥皮肉ですね。」
蒼紫「言わないでくれルシアちゃん‥俺だって‥ダークエルフの夫は想像するだけで光栄だ。でも‥シノンの様にもふもふで純粋で可愛い子と出会ったら‥血の涙を流して‥シノンを取るしかない。」
京骨「今のご時世にそこまでしますか‥。別に婚約を受けても良いと思いますけどね?」
ルシア「一途に囚われすぎてますね。」
エルガ「ふっ、蒼紫よ。後輩たちもこう言っている。シノン先輩にも悪い様にはしないから‥大人しく受けてみないか?」
蒼紫「ちなみに、婚約した暁は?」
エルガ「国王の座だ。」
蒼紫「ふっ、なら断る♪」
当然のように笑顔で断った。
蒼紫はどっちかと言うと自由な生活を求めてるため、国王の様に仕来たりに縛られたり、自由が効かなくなるようなことは嫌いなのだ。
エルガも知らないわけでもないが、何にせよ蒼紫がほしいのだ。
エルガ「なぜだ!?先輩の器量なら私と共に力を会わせればやっていけると思うが?」
蒼紫「だ、だとしても、俺にガールンド国を背負うことは重いって!?」
エルガ「‥くっ、それでも頼む!私には先輩が必要なのだ!」
蒼紫「あっ、ちょっ!エルガ‥顔をあげてくれ!?」
今度は頭を下げるエルガに蒼紫は戸惑う。
そんな時、白いもふもふの白狼のシノンが声をかける。
シノン「あの、蒼紫様?私はエルガ様の婚約を受けても良いと思うのですが?」
蒼紫「‥なっ、シノン何を!?」
シノン「私の一族は一夫多妻は当たり前ですし、平等に愛してくれれば私は構いませんよ♪」
まさかの天使のような気遣いに、京骨とルシアは先輩であるシノンをいとおしく感じた。
そのため気づいた時には、可愛い人妻をもふっていた。
京骨「し、シノンさんとても可愛いです!」
ルシア「こんな可愛い子は‥食べてしまいたいくらいよ。」
シノン「わふっ!?んあっ‥くぅ~ん♪」
最初は驚いてはいたが、次第に可愛らしい人妻はご機嫌に尻尾を振っている。
蒼紫「ふ、二人とも俺の嫁に何を‥うわっ!?」
三人に気を取られていると、エルガに押し倒される。
エルガ「シノン先輩の許可も得た‥。後は誓いの口づけだけだ。」
蒼紫「おいおい!?待て待て!?今するのか!?心の準備も‥んんっ!?」
蒼紫の制止を無視してまで、エルガは本心のままに蒼紫と接吻を交わす。
蒼紫も戸惑ったが不思議と剥がすことはできなかった。エルガの柔らかな唇から感じる本気の気持ち‥、寂しさ、不安。考えすぎかもしれないが、時期一国の長として才色兼備で完璧を演じ、日々孤独な感情を圧し殺しているような感じがした。
数十秒くらいの接吻はゆっくりと二人から離れた。エルガは赤面し我にかえる。
エルガ「‥す、すまない‥私はまた取り返しのつかない‥んんっ!?」
今度は蒼紫からエルガの唇を奪いにかかった。
ルシア「‥バカップルね。」
京骨「うん、バカップルだ。」
シノン「わふぅ~♪これでエルガ様も寂しくありませんね♪」
こうして急すぎる婚約は成立した。
時期ガールンド国の長いや、女王様と婚約することに、その後の佐渡家が歓喜の大騒ぎを起こすとは今は知るよしもない。
ここで小話
意外にもシノンとエルガ先輩と後輩の中なのですが、シノンのお家は代々ガールンド家にお仕えしている"ガリューバル"家の忠犬なのです。そのため先輩であるシノンなのですが、後輩のエルガを様つけで呼んでいるのです。
また婚約の件も、大好きなエルガ様が孤独で寂しがっている姿に心を痛め、ひそかにエルガの婚約に協力していて、二人が成就すれば‥遠慮なく二人に甘えられる。そしてエルガ様も笑顔で万々歳と可愛らしい一面がある。
とまあ、魔界ではこんな感じでハッピーエンドになっていった。
これにより、グリードが放った援軍要請は完全失敗に終わる。
だがそれを四星将グリード・マドリードの耳に届くことはなかった。