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第百十一話 帝都ノ変(19) 戦狂と狂地

亜種族軍後衛部隊上空に一体のドラゴンが現れた。亜種族軍は得体の知らないドラゴンの出現に取り乱すも、早々に魔法や弓などを駆使して容赦のない対空戦を行った。


しかし、ドラゴンは怯まず後衛中心部に流星の如く突っ込んでくる。



近藤「だあぁっもうっ!こいつ言うこと聞かねぇ!?」


本間「近藤落ち着け!?」


藤井「そ、そうだ手綱を強く引け!」


近藤「必死にやってるっての!?」


茂野「へ、変だな‥誰かドラゴンの逆鱗見たいなの触れてないか!?」


星野「まさか‥龍の逆鱗は顎の下って聞いたことがあるから胴体にはないはず‥。」


近藤「と、取り敢えずゆうちゃんが描いたドラゴンだ。言い伝えの他にもあるかもしれないから、探してくれ!?ぐぐぐっ!!」


本間「わ、わかった!」


藤井「おーい!誰か変なの触ってないか!」


必死で手綱を引っ張る近藤に誰も手伝おうとせず、風音で聞こえるはずもない声を呼び掛ける。

だが、偶然にも犯人はすぐにわかった。


渡邉「せいっちゃん刀研ぎ終わったから龍の鱗使っていいよ。」

番場「おぉ、待ってたよ。よーし、どれだけ固いか試してやるか。」

渡邉「それにしてドラゴンの鱗は研石(とぎいし)よりも使いやすくていいな。」

番場「それはよかったな。反返って危険だったし一石二鳥だ。」


番場は瓦割りの感覚で叩く。


番場「うわっ、かてぇ‥。」


藤井「おい、おいおい、二人とも何してるんだ?」


番場「よう藤井?さっき反返った鱗を取ったんだ。すげえ固いし研石にも打ってつけだよ?」


反返った鱗。

藤井はそのワードを聞いた瞬間、一瞬で血の気が引いた。

触るだけでも相手を殺すと言う逆鱗。

それをへし折ったとなると‥そりゃ制御不能になりますわ。


藤井はペコリとお辞儀して近藤の元に向かう。


渡邉「そう言えば、さっきからスピードが上がってる気がするけど、どこに向かってるんだ?」

番場「うーん、地表に突っ込んでいる?」

渡邉「まさか~、さすがの尚弥でも神風みたいなことしないだろ。」


恐怖とは知らぬ間に訪れるもの。

まさか、この鱗が逆鱗とは夢にも思うまい。


近藤「ぐぞぉおぉ!上がれよ!」

藤井「近藤‥。」

近藤「な、なんだ藤井ぃ!用がなければ少しは手伝ってくれよ。」

藤井「‥逆鱗がへし折られていた。」

近藤「へっ‥‥。」


まさかのことに思わず手綱を離した。

微量な力から解放されたドラゴンは、狂ったかのように敵陣に突っ込んだ。


その威力は隕石の如く。

亜種族軍後衛部隊の大半が吹き飛ばされ、龍に乗った義勇軍も投げ出された。


自滅に近い特攻に誰が見ても死んだと思った。


エニカ「‥えっ?」

大西「っ、お、おいおい!?あいつら何してるんだ!?」

高野「‥あ、あれは‥えぇ!?」


囮には成功はしたものの、彼らの自滅に近い特攻に連合軍は肝を冷やす。


桜華「えっ、はわわ!?ど、どうしましょう!?皆さんが落ちてしまいましたよ!?」

桃馬「‥い、いや‥これは何かの作戦だろ。ま、まさか、死ぬなんて‥ないだろ。」


シャル「おぉ~、あれは確実に死んだな。度胸はほめてや‥んんっ!?」

ギール「ば、ばか!そんなこと言うな!」

ディノ「‥そ、そんな‥突撃するなら私がクッションになれたのに‥。」

豆太「と、特攻‥‥あ、あぁ‥。」



直人「‥まさか、あいつらがこんなところで死ぬかよ。」

リール「で、でも‥今のだと‥。」

エルン「う、うむ‥正気とは思えないくらいの特攻だったぞ。」


誰もが彼らの安否を心配する。


だが数秒後、爆音と共に爆煙が広がり、この世の者とは思えない奇声が響き渡る。


状況が読めない連合軍は、少しの間様子を伺った。



近藤「そりゃぁ!全く死ぬかと思ったぞ。」


藤井「みんな死んだと思ったろうな。」


本間「仁くんがいなかったら終ってたな。」



ここでタネ明かし、


隕石の如く地表に迫った一行らは誰もが死を感じた。だが、ぶつかる手前で唯一の魔法適応者である星野仁が渾身の防御魔法を(ほどこ)した。結果、ドラゴンは消えたが乗員は無傷。更に死からの緊張によりアドレナリンとドーパミンが大量に分泌、少数ながら一騎当千の如く攻勢に出たのだった。



直人「全く心配させやがって‥。」

リール「‥あはは、"微食会"恐るべしだね。」

エルン「彼らが開いた好機を逃しては行けませんね。」

リグリード「うむ、攻めるなら今だな。」


晴斗「さぁて、じゃあ僕らも行きましょうか。」


奏太「おう!」

海洋「遅れはとらないぞ!」


二年三組は抜刀し合図を待つ。


直人「‥で、誰が号令かけるのだ?ちなみに俺は嫌だよ?」

晴斗「‥うっ、でたよ~。ここはノリで直人がやればいいのに。」


リール「そうだよ!今が見せ所だよ?」

エルン「クスッ、相変わらず目立つのが嫌いだな?」

リグリード「なんだ、恥ずかしがり屋は今も健在か?」


直人「うぐっ、何年経っても頭張るのは嫌いだよ。そ、それよりリブル公国の姫様を差し置いて号令するのはちょっと気が引ける‥。」


二年三組は大笑いする。

男子「いいじゃないか♪俺たちは義勇軍なんだぜ?」

男子「むしろ俺たちが先行してこそ士気が上がるってもんだろ?」


至極もっともな意見だ。


ここでプチ情報

両津直人は変な気遣いをする癖があるため、こう言った事をさせるには、勢いに任せて変なことを考えさせないようにする必要があります。


直人「うぐっ、わ、わかった!こほん、我らが目指すは平和に(あだ)なす亜種族軍!皆抜刀!突撃!!」


若武者の号令に応えるように、二年三組を主軸とした部隊は混乱状態に陥っている亜種族軍に怒濤の攻勢をしかけたのだった。


彼らに先行を取られたことに、リブル公国のエニカも急いで攻勢に出た。

その後、残された桃馬たちも少し遅れて攻勢に出たのだった。



戦況は連合軍の圧勝し、後衛部隊を壊滅させた。


だが、主戦力を前線に集中させていた亜種族軍に取っては、蚊に刺された程度であったことは誰も知らないことであった。



桃馬「‥変だな後衛にしては手応えが無さすぎる。」

桜華「た、確かに‥昨日まで戦った奇襲部隊より弱い気がします。」

桃馬「‥うーん、寄せ集めか。それとも実戦がないか。あるいは前線に集中か。」

桜華「ぜ、前線に集中はまずいですね。」


あまりにも呆気ない戦果に疑問を持っていると、犬化したかっこよくも可愛いジェルドが走ってきた。


ジェルド「桃馬!今さっき捕らえた敵から情報を吐かせたんだが、かなりこの戦面倒だぜ。」


桃馬「面倒?なんだ陰謀絡みとかか?」


ジェルド「まあ、下っぱの話だから本当かどうかわからないけどな。」


ジェルドは吐かせた情報を手短に話した。


日本国政治家、徳川家時の介入。

昨夜起きた派閥争い。

主力部隊が前線に集中していること。


三件の情報が入る。



桃馬「それが本当なら‥かなり面倒だな。」

桜華「それなら私たちも早く前線に向かいましょう!」

桃馬「そうだな。ジェルドみんなはどうしている?」


ジェルド「三組とリブル軍はもう前線に向かったぞ。」

桃馬「は、早いな。なら、俺たちも急ぐぞ!」


後衛を破った連合軍は、その勢いに乗じて敵の前線に向かう。だがその先には、後衛襲撃の報を聞き待ち構える一人の四星将がいた。



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