第百九話 帝都ノ変(17) 最強と希望
帝都付近のとある街。
三年義勇軍は、新潟時奈、聖籠忍を主とした部隊と合流し次なる決戦に備え鋭気を養っていた。
忠成「ざっと二百人近くか‥意外と集まったな。」
時奈「校長の許しが出たことに、迷っていた同士たちが一斉に手を上げたからね。」
忍「誰一人も欠けることなく終わることを願いたいな。」
時奈「そうだな‥‥だが、全国から勇姿が立ち上がってる‥犠牲は避けられないだろうな。」
忠成「戦には犠牲は付き物だ。皆は覚悟があると思うが、最善の努力は武功を立てつつ生きて帰ることだな。」
時奈「‥皮肉なものですね。異世界を救うために立ち上がったのに、人の命を惜しくなるとは。」
忠成「その感情も戦ならではだな。」
三人が戦の理に考えさせられる中、
外野の同士たちは宿の取り合いになっていた。
三年男子「忠成、不味いことになったぞ。」
忠成「ん?どうした?」
三年男子「義勇軍の人数が増えたことで宿がパンクしている。割り振りに手伝ってくれ。」
忠成「‥やっぱり、旅館みたいな大きなところじゃないとダメか。」
三年男子「的が外れたな。この街は冒険者向けの小さな宿しかないぞ。」
忠成「仕方ない‥強引に押し込むか、外で寝て良いも者は野宿だな。わかった、すぐに向かう。」
時奈「私たちも行こうかしらね。」
忍「ふっ、俺は外でも良いよ。外で眠る美しき僕!」
時奈「はーい、静かにしなさい。後キャラ戻すな~。」
忍「うっ、わ、わかった。」
的確にツッコむと忍は、大人しくキャラを捨てた。
そして問題の宿では‥。
三年女子「ここは男子の男気を見せると気じゃないかしら?」
三年男子「都合の解釈だな‥先の戦闘の功労者を労ったらどうだ?」
三年女子「へぇ~♪まるで私たちがお荷物みたいな言い方ね?」
三年男子「はぁ、面倒だな‥俺は外で良いよ。もし襲撃食らったら外に出れなさそうだからな。」
賛否が別れ、言い合いになっている。
忠成「みんな何している?」
三年男子「あ、忠成!聞いてくれよ!後から来た部隊が宿に入ろうとするんだよ!」
忠成「‥はぁ、俺たちは泊まりに来た訳じゃない。止まりたい気持ちはわかるが、襲撃の際に宿に火をつけられたら丸焦げだぞ?」
三年男子「っ!」
忠成「それにここの気候は暖かい。俺は外でも十分だと思うが?」
忠成の意見に、醜く争っていた同士たちが遠慮し始まる。
忠成「これでパンクの心配はないな。それでも泊まりたいのなら、これ以上止めないが?」
結局宿は風呂用として利用し、
大半の同士たちは道具屋からテントを買い占め野営を張ることにした。
忠成「薬が効きすぎたか‥。」
時奈「何を話したの?」
忠成「いや、襲撃の際に火をつけられたら丸焦げだなって‥言っただけだが?」
時奈「シンプルに恐怖を植え付けてるな。」
忠成「恐怖か‥うーむ、確かにそう言われるとそう聞こえるかもな。」
時奈「自覚なかったのですね。」
忠成「あはは、まあこれでくだらない揉め事が解決したんだ良しとしよう。」
そういう言うと忠成は何処かへと歩きだす。
時奈「ん?何処に行くのだ?」
忠成「さすがに腹が減ったからな、何か買ってくる。」
時奈「あ、それじゃあ私のも頼めるか?」
忠成「あぁ、構わないぞ。」
忠成は街の中心部へ向かった。
しかし、街の中心部は店はやってるも閑散としていた。おそらく帝都が戦場になっていることもあって人が少ないのだろう。
居ても地元民か、義勇軍くらいだ。
忠成「‥本来ならここも賑やかなのだろうな。」
街の寂しさから思わず声を漏らした。
ようやく飲食店を見つけ入ろうとすると、女の子の憤りの声と共に勢いよく飛び出してきた。
突然のことで忠成は避けれず体で受け止めた。
忠成「おっと、すまない怪我はないか?」
?「も、申し訳ありません。」
?「ナーシャ様!帝都へ戻ってはなりません!」
?「っ、あの!不躾ながらお助けてくださいませ!」
忠成「うむぅ‥助けと言われてもな。」
突然の出来事に混乱する忠成。
明かりが少なく、どんな子か分からないが、慎重とツインテールの髪型、話し方、服装を見る限り貴族の出身だと察する。
そしてこの男は‥この子の名前を知り、畏まった佇まい‥執事か護衛か何かだろう。
?「ナーシャ様!これは陛下の命令なのです。リブル公国に一旦避難するだけですから。」
ナーシャ「‥嫌です!私は帝都グレイムの姫なのですよ!お祖父様たちを置いて逃げれません!」
?「‥し、しかし。」
忠成「‥失礼、私を挟んで口喧嘩は止してもらいたいのだが?」
?「っ、も、申し訳ありません。ほら、ナーシャ様。お店に戻りますよ。」
ナーシャ「‥嫌です。」
忠成「‥ふむぅ、何やら高貴な方々とお見受けするが、帝都の関係者でしょうか?」
?「‥それは。」
ナーシャ「そうです。私は帝都グレイム‥シルバー・グレイムの孫娘。ナーシャ・グレイムです。」
?「ナーシャ様!?見ず知らずの人に名乗っては‥。」
ナーシャ「この方を変に巻き込んでしまったのです。名のならければグレイム家に傷がつきます。」
?「‥しかしですね。」
小さいながらも堂々としている姿に忠成は感服した。
忠成「これはこれは帝都の姫君でしたか。私は義勇軍の本田忠成と申します。どうかご無礼をお許しください。」
忠成はナーシャの目線に会わせ片ひざをついた。
ナーシャ「ど、どうかお顔をお上げください!?」
?「義勇軍‥まかさ、日本国の方ですか!?」
忠成「はい、大義によってお力添えに参りました。」
?「おぉ、そうでしたか!それはうれしい知らせです!」
忠成「そう言ってもらえると、こちらも嬉しいです。」
お礼を返すと、護衛の男は気まずそうに頼み事をお願いした。
?「‥それでえっと、ここまで来てもらって申し訳ないのですが、どうか、ナーシャ様をリブル公国と言う国まで護衛してもらえないでしょうか?」
忠成「リブル公国‥ですか。」
ナーシャ「っ!ハルバ!私はリブル公国には行かないですよ!」
ハルバ「ですが、私一人ではナーシャ様をお守りすることも難しいです。」
二人が戦火から逃れるために行動してることはわかった。だが、姫様は逃げるのが嫌なようだ。ここで使える平和的解決は‥。
ハルバと言う男の意見を取るしかない。
姫様の言っていることは立派だ。
しかし、戦で役に立てるとは思えない。
無駄に死ぬのが落ちだ。
忠成「姫様、恐れながら私も安全なところへ逃げた方が良いと思います。」
ナーシャ「えっ、ど、どうしてですか‥やっぱり足手まといになるからですか?」
鋭い勘に思わず動揺してしまいそうになる。
忠成「こほん、俺が言えたものじゃないですが、幼い姫君が命を落とすのは見たくありませんからね。」
ナーシャ「‥そう‥ですか。」
忠成はひどく落ち込む姫の姿に罪悪感を覚えた。繊細な年頃の女の子に余計なことを言ってしまったと。
忠成「気持ちを汲んでやれんで申し訳ない。すぐに仲間と相談して護衛につかせます。」
ハルバ「ありがとうございます。この恩は忘れ‥。」
忠成「ハルバ‥殿?」
突然言葉が途切れるとハルバの体は前へと倒れ込んだ。
背中には短剣が刺さっていた。
ナーシャ「は、ハルバ!?」
忠成「くっ!」
忠成はナーシャを抱え急いでその場を後にした。ナーシャは泣き叫びハルバの名を繰り返す。
忠成「姫様静かにしてください!泣いても結末は変わりません!」
方向から推測するに、店から投げ込まれた可能性が高い。もしそうなら、じりじりと迫ってくる変態系暗殺者だ。この手口は、姫様を一人にして死の恐怖と絶望を味会わせて快楽を得る変態タイプだ。
忠成はとにかく走った。
すると次は、無数のナイフが背後から迫った。
忠成「ちっ、やるしかないか!」
忠成は走るのを止めると、ナーシャを後ろに回し、愛槍を構え仁王立ちした。
だがそこへ、御影が現れ迫り来るナイフを全てクナイで応戦し弾いた。
御影「よっと、まだ一人残ってたようね。」
忠成「御影‥やっぱり亜種族が紛れてたか?」
御影「いいえ‥亜種族じゃないわ。私たち忍の裏切り者よ。」
忠成「っ!やっぱり裏がいたか。」
御影「むしろいない方が変化もね!」
御影は一本のクナイを投げ込むと、火を纏い鳥の姿となり、犯人の脳天をとらえる。
御影「手応えあり‥これで全部ね。」
忠成「すまん、助かった。」
御影「別にお礼はいいわよ♪それより、その子をどうするの?」
忠成「‥リブル公国ってとこに送るか迷ってる。」
ナーシャ「あ、あの!助けて頂きありがとうございます!」
御影「クスッ♪小さいのにしっかりしてるわね♪」
ナーシャ「‥えっと‥。」
続けて何か言いたそうにしていると、
御影は人差し指でナーシャの唇に当てる。
御影「大丈夫よ♪お姉さんはわかってるから♪忠成?この子も帝都に連れていくわよ?」
忠成「‥まあそう来るよな。ハルバ殿には悪いが姫様を守る意思だけでも継いでやるとするか。」
ナーシャ「そ、それでは!」
忠成「‥本田忠成。命を懸けてお守りいたします。」
こうしてナーシャは三年義勇軍と出会った。
しかし、飯を買うことを忘れ時奈たちの所に帰ると‥軽蔑した視線を浴びることになった。
時奈「‥なるほど忠成の主食は幼女なのだな。しかも、私と○Pとは‥ここが異世界でよかったな。」
忠成「ご、誤解だ!?姫様を助けるのに夢中で買うの忘れただけだ!?」
時奈「‥見たところすごく懐いてるようだけど?もう調教したのか?」
忠成「だ、だから違うって!?」
とまあこんな感じで周囲から少しの間軽蔑されたのだった。
ほとぼりが冷めると、
ナーシャは時奈たちに事情を説明した。
戦地に連れていくことに抵抗はあったが、大人顔負けの堂々としたナーシャの姿に心を打たれ時奈たちは了承した。だが、これが逆に良い方向へ進み、顔パスで街で飼われているドラゴンを借りれたのだ。
しかし、定員がが限られているため、
重要な者を優先に、帝都へ乗り込むことになったのだ。