第百四話 帝都ノ変(12) 腐虫と駆除
帝都攻防戦から一夜明けた周辺各地では、血気盛んな学生ら義勇軍が亜種族部隊と交戦していた。
戦局は義勇軍らの優勢、
亜種族はただただ蹂躙されていった。
桃馬「朝から血気盛んだな‥。」
桜華「三組の皆さん強すぎますね。」
ジェルド「戦闘に特化しすぎだな。」
晴斗「あはは、特化と言うよりは、みんなこの日を待ちわびていたんだよ。」
桃馬「待ちわびていたか。何か皮肉だな。」
晴斗「確かに平和を望んでおきながら、胸の内では異世界での戦いを望んでいる‥皮肉と思われても仕方がないね。」
晴斗の言う通り、異世界の魅力はその生活ライフや恋愛、冒険だけではない。
何かを守るための戦いも然りである。
特に両津直人は戦場に酔いしれていた。
怒濤の勢いでゴブリン、オーク、オーガを斬り伏せていた。
直人「邪魔だ腐虫どもが!大将どこだ!相手になってやる!」
奏太「やけに今日の直人はやる気あるな?」
葵「まあ三人の嫁がいるんだ。良いところ見せたいんだろうよ。」
奏太「そう言う葵も相当だな。」
葵の片手には大将キングゴブリンの首を手にし、亜種族の屍を積み重ねていた。
桃馬「‥あいつら普通に危険人物だな。」
桜華「えっと‥それはあまりツッコまない方が。」
ジェルド「いや‥今はツッコんでもいいだろう‥。」
戦場では爆発と爆発で死屍累々を重ね。
桃馬たちは相手に同情するくらいであった。
だが賞賛する者もいるわけで‥。
シャル「ぬはは!よいぞよいぞ!目覚めの良い清々しい朝なのだ!」
ギール「‥騒々しいの間違いだろ。」
シャル「それにしても豆太とディノもこれを見れないとは勿体ないのだ!」
ギール「まだ寝てたからな‥。それより教育的に見せたくはないが‥な!」
亜種族「ぐへあっ!?」
亜種族「うぐっ!」
後方から忍寄った亜種族を察知し、ギールはこれを切り捨てた。
シャル「むっ?」
ギール「戦場で油断するなシャル。」
シャル「そんなの余も気づいていたのだ。ギールが先に対象すると信じてたのだ。」
ギール「ったく、仕方ない妹だな。」
妹ばかの兄は、デロデロに甘やかす。
相手が指一本でも触れれば、相手が何者であろうともギールは許さないであろう。
その頃戦場で舞う美女たちは、
あまりにも張り合いのない戦いに不満を漏らしていた。
リール「むぅ、全然張り合いがないよ―。」
エルン「くっ、直人たちが張り切りすぎて良いところが見せられないな。」
リグリード「そう手柄を焦るな二人とも。一端の剣士であるなら堂々と構えているのだ。」
不満に思う二人を宥めるが逆効果を招いた。
リール「むう、そうも言ってられません!」
エルン「そうです!直人に守られっぱなしは嫌ですからね!」
リグリード「う、うむ‥そうか。(全く、ライバルは手強いな。)」
リフィル「さすがシェリルちゃん♪ワルキューレ紅薔薇騎士の名は伊達ではないね♪」
シェリル「う、うるさいリフィル!?私はまだゴブリンを五体くらいしか倒せてないのだぞ!」
リフィル「まあまあ、葵さんが守るように暴れてるから仕方ないよ♪」
シェリル「何っ!?では、わ、私はおこぼれを退治してるのか!?」
リフィル「そうなるかもね♪でも、葵さんだけじゃなく男子全員前線にいるから、わざと調整してる気がするけど。」
シェリル「くっ、女扱いして‥でも‥葵‥かっこいい。」
ちらりと奮戦する葵の姿を見ると、可愛らしい乙女になるくっころ騎士様であった。
リフィル「クスッ、さてと♪私の憲明はどうしてるかな~♪」
リフィルも愛する憲明を探す。
そして見つける。
オーク(女)「お兄さん!私たちと良いことしましょう!」
オーク(女)「この世の娯楽と言うものを教えてあげるわ!」
憲明「いやー!?なんで俺だけ!?」
憲明は亜種族ではなく、宿からストーキングしていたオーク(女)に襲われていた。
そんな地獄の光景にリフィルはオーク(女)たちに麻痺魔法をかけた麻痺矢を見舞った。
オーク(女)たちは戦場で倒れ込み麻痺っている。
リフィル「よっと、憲明大丈夫?」
憲明「は、はひひっ‥。」
運悪く背中に一本の麻痺矢が刺さっていた。
リフィル「あっ、あはは♪ごめんごめん♪」
悪びれもなく麻痺矢を抜いた。
そして倒れた憲明を見るなり、変なことを思いついた。
リフィル「‥えい。」
憲明「あぁあぁぁっ!!」
穴へ解毒矢の挿入であった。
桃馬「あの二人戦場で何してるんだ。」
桜華「リフィルちゃんぶれないわね。」
ジェルド「クンクン、安心しろ桃馬!オークは近くにいないぞ!」
尻尾をぶんぶん振り回し、可愛らしくも自己安全アピールをしている。
桃馬「俺からしてみれば、ジェルドも大して変わらないがな。」
桃馬の余計な一言にジェルドは飛びかかる。
桃馬「うわっ!?な、何しやがる!?」
ジェルド「俺は安全だよ?桃馬のためならなんでもしてやるよ。」
桃馬「なら直ぐに離れろ!?」
ジェルド「ふっ、ぺろっ。」
桃馬「ひっ!?」
"そんな命令聞けるかよ"と言わんばかりに、笑みを浮かべて首筋を舐める。
桜華「は、はわわ!?」
いつもの事だとはいえ、慣れない桜華は赤面し手で顔を隠す。そして、隙間から覗く。
晴斗「全く、こんな時でも発情してるのか?」
ジェルド「はぁはぁ、朝のスキンシップがまだだったからな‥ここまできたら既成事実を‥。」
桃馬「駄犬もいい加減にしろよ!?なんで健全なもふもふからディープな行為に走るんだよ!?」
ジェルド「はぁはぁ、知ってるか桃馬?狼は主に忠実なんだ。だから、その主もそれなりのことをしなくちゃいけないんだ。」
桃馬「そんなの知るかよ!てか、お前の主になった覚えねぇし、朝のスキンシップってやつをしないだけで穴の危機っておかしいだろ!?土日とかどうしてるんだよ!?」
ジェルド「‥ふっ、等身大桃馬の抱き枕があるからな。」
桃馬「ぐっ!?」
衝撃の告白に、桃馬は勢い任せでツッコンだことをひどく後悔した。
この駄犬が土日にどんな日々を過ごしているのか。想像するほど気持ちが悪いが‥なんとなくわかった。
晴斗「‥はぁ、二人とも?ここでするのはいいけど、自己責任だよ?」
桃馬「誰がするかよ‥晴斗も剥がすの手伝えよ!?」
晴斗「こほこほ、今日は体調悪くてね。」
桃馬「や、やろう‥。」
ジェルド「さぁ、桃馬‥はぁはぁ、やろう。」
餓えた狼の様に迫るジェルドに桃馬は、尻尾に手を伸ばし強く握った。
ジェルド「きゃふっ!?」
ビクンと体を跳ねさせ、桃馬はその隙に戦場へと逃げた。
ジェルド「あ、桃馬~!?」
晴斗「桜華さんも大変だね。」
桜華「あ、あはは‥。」
その後、周辺の亜種族を全て討伐すると、
昨日の帝都攻防戦の情報が入った。
落城は免れ数日は持つこともあり、
二年義勇軍は帝都へと向かった。