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ハッピーエンドを求めて  作者: AiU
一章
2/50

メイドと紳士と

 翌日、マモルは喫茶店『KURO』の前まで来ていた。

 時刻は11時をすぎたところである。

 昨日の帰り際におやっさんが賄いのご飯をご馳走してくれると言っていたのでのこのことやってきたのだ。

 プロレベルのおやっさんが作る料理をタダで食べられると言われたら行かないわけにはいくまい。

 なにせあのシオリの親にして師匠でもあるのだから、料理が下手なわけがない。

 唯一おやっさんの料理に文句をつけるとしたら、たまに遊び心が入ることがあるくらいだ。

 いつだったかも、新作メニューの試食係として呼ばれたときがあった。

 その時に出されたのが『懐かしの学食カレー』というものだ。

 入っている具材も普通で味も悪くない代物だったが、ジャガイモだと思って食べたものがルーの溶け残りだった。

 おやっさんらしくないミスだと思って聞いてみたら、

 「学食のカレーってそんなもんだろ?」

 とのことだった。

 わざわざルーが溶け残るように仕上げるのは大変であったと誇らしげに言っていた。

 (入れるのは遊び心じゃなくて真心にしてほしいものだね)

 そんなことを思いながら歩いていると喫茶店『KURO』に着いた。外から見ただけでも、すでに早めの昼食を摂ろうとしているお客さんで店内は埋まりつつある。

 さすがの人気ぶりに感心しながら扉を開けると、


 「お、おかえりなさいませ、ご主人さま……」


 引きつった笑顔を浮かべた、メイド姿のココロが迎えてくれた。

 「……」

 マモルとココロは見つめ合う。

 この感じには既視感があった。

 しかし、昨日の夜に感じたものはもっと神秘的なものだった気がする。

 片足を上げ、腰をくねらせ、片手を上げてポーズをとっている姿はなかなかつらそうだった。

 青色を基調としたメイド服で、黒いクツに白いソックス、スカート丈はロングでエプロンドレスを身につけ、胸元には赤色のリボン、頭にはホワイトプリムまで装着している。

 コスプレ用の物とは違い、あまりフリフリが付いておらず本格的なメイド服だった。

 マモルは、この滑稽とまでは言わないが場違いな雰囲気を醸し出すココロの頭越しに店内を見てみる。

 すると、カウンターの向こう側におやっさんとシオリが立ち、なにやら話をしていた。

 「やっぱりピンクを基調とした、もっとフリフリしてるやつのほうがココロには似合うわよ」

 「ふむ、それも悪くはないが、アレはアレで需要があるとおもうぞ」

 「ほんとに~?」

 「ああ、ココロを見てみろ。かなり本格的なメイド服を着ているのに、やってることはメイド喫茶でやるような挨拶だ。このアンバランスなところにワビサビってやつを感じるもんなのさ」

 「まぁ、そのアンバランスなことをやらせてるのはお父さんなんだけどね」

 (ずいぶんと勝手なこと言ってるな……)

 ココロのほうに視線を戻す。

 いまだにポーズを取り続けている姿はプルプルと震えだしていた。

 いい加減やめさせてあげないとかわいそうだ。

 そう思い、声をかけようとマモルは手を伸ばした。

 「ここはマモルの男としての資質が試されるな」

 「そうね、ここまで長時間ポーズをとらしておいて、生半可なことを言ったんじゃあココロも浮かばれないわね」

 (さらに勝手なことを言い出した……!)

 せっかく声をかけようとしたマモルの手が止まる。

 「あ、あ、」

 不自然に伸ばされたマモルの手を避けようとして、ココロがバランスを崩す。

 ずっと片足立ちをしていたから踏ん張りが利かないのだろう。

 「きゃっ」

 そのまま尻もちをついてしまう。

 「あーあ、マモルが早く声をかけないからー」

 シオリの揶揄する声が聞こえる。

 たしかに早く行動していれば救えたかもしれないが、情報量の多さにフリーズしてしまったマモルには酷な話である。

 とはいえ、このままにはしておけず、再びマモルはココロに手を差し出した。

 「ココロ、だいじょうぶっ――!?」

 だがその時、マモルは見てしまった。

 膝を立てて尻もちをついているココロの白い太ももの間から覗く下着を。

 下着、パンツである、薄ピンク色のパンツだ。

 「イタタタ……、あ、マモル。ありがとうございます」

 素直にマモルの手を掴むココロ。

 「……よっと」

 平静を装いつつ、そのまま引っ張り立たせるマモル。

 「うぅ、ひどい目にあいました……」

 立ち上がり、お尻のあたりを払うココロ。

 どうやら下着を見られたことには気がついていないようだった。

 「……はっ」

 マモルは顔を上げてシオリたちのほうを見る。

 「?」

 シオリは首をかしげるだけだ。

 「ふっ、青春だな」

 おやっさんは意味深なことを言って奥の厨房に行ってしまった。

 「ほら、いつまでもつっ立ってると邪魔だからマモルはいつも通り奥のカウンター席に行ってね。ココロ、案内してあげて」

 「は、はい!では、こちらへどうぞ」

 「ああ、うん。よろしく」

 ココロに案内されてカウンター席に座る。

 「どう?少しは慣れた?」

 お冷やとおしぼりを持ってきてくれたココロに話しかける。

 「はい、少しずつですけど。シオリとマスターがフォローしてくれるので何とかやってます」

 「そっか、まぁ、楽しそうにやれてるみたいで安心したよ」

 「ココロー、オーダー取ってきてー」

 「はーい!じゃあマモル、また後で」

 シオリに呼ばれ注文を取りに行くココロ。

 「ココロはしっかり者ね」

 シオリがマモルの元へ来た。

 「ココロの調子はどう?」

 お客さんと話をしているココロを見ながら話をする。

 ココロの目は真剣そのものだ。

 「飲み込みが早くて助かってるわ。最初はお盆にのせたお冷やを運ぶだけでもフラフラしてたけど、ものの数時間でコツを掴んでくれたわ」

 「そりゃなにより」

 「オーダーの取り方も理解したみたいだし、もう戦力として数えても十分よ」

 「そっか、じゃあさっきの奇行は慣れてきたからやらせたってことか」

 「言っておくけど、あのポーズを教えたのはお父さんだからね」

 (ってことは、おやっさんもあのポーズをしたのかな……)

 何か恐ろしいものを想像しそうになったところで、マモルは首を振って想像を散らした。

 「おやっさんは遊び心の多い人だからね」

 「遊んでばっかりよお父さんは」

 唇をとがらせるシオリ。

 「シオリー、オーダー入ります」

 「はーい、今行くわ」

 「がんばってねシオリ」

 「ハイハイ、わかってるわ。じゃあマモル、これから忙しくなるから構ってあげられないけど、ゆっくりしていってね」

 そろそろお昼時間である。

 これからお客さんが押し寄せてくるだろう。

 「りょーかい」

 軽く返事をしてシオリを見送るマモル。

 「さて、」

 マモルはスマホを取り出していじり始める。

 とりあえず、ご飯が来るまでじっとしていよう。



 店の中が混んできた。

 休日の昼間なので部活の終わりの学生や子連れの家族など様々な人が訪れる。

 ココロとシオリが忙しなく店内を駆け回っている。

 新人のココロには厳しそうだが、シオリの助けを受けながら楽しそうに働いている。

 その様子をマモルはナポリタンを食べながら見守っていた。

 トマトの酸味と甘味をうまく生かし、マッシュルームとウインナーの食感が絶妙なバランスを生み出すおやっさんの得意料理だ。

 (さすがだね、おやっさん)

 心の中で絶賛しながら黙々と食を進める。

 「隣、よろしいですかな?」

 「ああ、どうぞ」

 マモルの隣にお客さんが座る。

 「いらっしゃいませ――あ、アナタは昨日の」

 ココロがお冷やとおしぼりを置きに来たとき、何かに気づいたようだ。

 ココロの声にマモルも隣のお客を見る。

 白髪に白い髭を蓄えた老紳士がそこに座っていた。

 「お名前はたしか……紳士(ジェントル)さん」

 そう、そんな風におやっさんが呼んでいた気がする。

 昨晩、ここ喫茶店「KURO」のバータイムの時間に、おやっさんと謎のやり取りを交わし、翌朝には本格的なメイド服を用意してみせた謎の人物。

 紳士(ジェントル)は名前?を呼ばれるとココロのほうを向いた。

 「どうですかな?その服の着心地は?」

 「ああ、はい、素敵なメイド服をご用意していただきありがとうございます。かわいくて動きやすいです」

 ココロはそう言って頭を下げた。

 「気にいっていただけたようで何よりです」

 紳士は微笑みながらうなずいた。

 「KUROコーヒーを一杯いただけますかな?」

 KUROコーヒーとは黒川家に伝わるオリジナルブレンドコーヒーである。

 豆の種類、配合量などそのほとんどが極秘であり、一子相伝のレシピである。

 しかし、そんな一族の秘技みたいなレシピなのに、普通のブレンドコーヒーよりも安値で注文できることがさらに謎を呼んでいる。

 ちなみに、今まではおやっさんにしか淹れられなかったが、先日、厳しい修業を乗り越えたらしいシオリも淹れられるようになった。

 (その時はシオリも泣いて喜んでいたっけ)

 マモルはその時のことをしみじみ思い出していた。

 「KUROコーヒーですね、少々お待ちください」

 注文を受け、厨房へ行くココロ。

 紳士はその様子を顎に手を当てながら見守っていた。

 「ふむ、性格はひたむきで立ち振舞いも悪くない。見た目も清純で華奢(きゃしゃ)だ。やはりあの色で間違いありませんでしたね……」

 「あ、あの……」

 ぶつぶつと呟いている紳士にマモルが声をかけようとする。

 すると、紳士はマモルのほうへ振り返った。

 「そうは思いませんか、マモル様?」

 「いやメイドさんについてはあまり詳しくは――って、僕のことを知っているんですか?」

 突然名前を呼ばれたマモルは不意を突かれたようだ。

 「ええ、あなた方のことはマスターなどからよく聞いております」

 「ああ、おやっさんが……」

 納得するマモル。

 「あんまり良い話じゃないでしょう?」

 「いえいえ、そんなことはありませんよ。話の内容もそうですが、何よりマスターがアナタたちの話をするとき、とても楽しそうに話してくれる。まるで宝物を自慢するように」

 「おやっさん……」

 なんだか気恥ずかしくなって頭を掻くマモル。

 「私はね、そんなマスターの話を聞きながら、ここでお酒を飲むのが好きなんですよ」

 「お待たせしました。KUROコーヒーです」

 ここで、ココロが注文されたKUROコーヒーを持ってきた。

 紳士の前へ置き、持ち手が右にくるようにする。

 「ああ、ありがとう」

 「ごゆっくりどうぞ」

 頭を下げ、戻っいくココロ。

 紳士はコーヒーに何も入れないまま口に運び、一息ついた。

 「それにしても、あの()はずいぶんと流暢に話しますね」

 「ココロのことですか?」

 「はい、外国の方と仰っておりましたが、こちらに来て長いのですかな?」

 「ああ、いえ、僕もココロと知り合ったのはつい最近でして。詳しいことはあんまり知らないんです」

 「おや、そうだったのですか」

 以外そうな顔をする紳士。

 「ずいぶんと親しげにされているので長い付き合いなのかと思いました」

 紳士はまたコーヒーを飲む。淹れたてだから熱いだろうに飲むペースが早い。

 「まぁ、親しくなるのに必要なのは時間ではなく密度と言いますし、若い皆さんならばすぐに友達になれるのでしょう」

 「ハハハ……」

 たしかに密度といえば、一晩であるがマモルとココロは窮地を乗り越えた仲である。

 だが、ティポスのことや想造力(イメージ)のことなど話す訳にもいかない。

 マモルには、笑ってごまかす以外のことはできなかった。

 「こちらからも質問していいですか?」

 替わってマモルが質問する。

 「ええ、どうぞ」

 「率直に聞きますけど、アナタは何者なんですか?アレほどのメイド服を翌朝には用意してしまうとはただ者ではないでしょう」

 話をするかぎり、悪い人には感じられなかった。

 なのでマモルは、疑いを持つというよりは純粋に興味が湧いたのだ。

 「ふむ……マスターはなんて?」

 「いえ、おやっさんは何も教えてくれませんでした」

 「そうですか……ふふ、あの人も人が悪い」

 軽く微笑むと紳士は残ったコーヒーを飲み干した。

 「ならば、私はただの紳士(ジェントル)です。若者たちが頑張る姿を見るのが好きなだけのね」

 そう言って紳士は席を立つ。

 「お話にお付き合いいただきありがとうございました。またどこかで」

 「あ、ちょっと」

 マモルの制止の言葉も聞かず、紳士は会釈をすると会計を済ませ店を出ていってしまった。

 「紳士(ジェントル)……、いったい何者なんだ……」

 マモルの呟きに応える者はなく、空になったコーヒーカップだけが残されていた。



 「ふーん、じゃあ紳士さんがどんな人かわからないままなのね」

 「うん、別に気にするようなことではないと思うけど」

 ランチタイムが終わり、お客さんがほぼいなくなったところでココロとシオリがお昼休みをとりにきた。

 マモルのいたカウンター席からテーブル席に移動し、ココロとシオリの分のナポリタンが置かれている。

 「まぁ、お父さんの知り合いみたいだから変な人かもしれないけど悪い人じゃないわよ」

 ナポリタンをクルクル巻きながらシオリは言う。

 「それよりも、今日は行くんでしょ?」

 「そうだね、今日の夜からティポス退治だ」

 二人はココロのほうを向く。

 ココロは目を輝かせながら一心不乱にナポリタンを食べていた。

 「……はっ」

 二人の視線に気がつくとフォークを置いてコホン、と咳払いをした。

 「よろしくお願いします」

 「……食べ終わるまで待とうか?」

 「……お願いします」

 マモルが気をつかうと、素直に応じるココロであった。

 

 「じゃあ改めて、今夜のことを話そうか」

 食器を片付けたシオリが戻ってきたところで、マモルが切り出した。

 「その前に、リキヤはいないんですか?」

 ココロは周りを見ながらそう聞いた。

 「午前中からずっと見かけませんでしたが」

 「リキヤはたぶん、別のところで筋トレ中じゃないかな」

 学校もバイトも休みの時にマモルたちのところに来ない時の大抵の理由は筋トレだ。

 リキヤが昔ヤンチャしてた時に出会った人たちが、今は筋トレ仲間になっているようだ。

 「後で連絡しておくから夜には来ると思うよ」

 「そうですか、なら、このまま話を始めますね」

 ココロは姿勢を正すと、マモルとシオリの方を交互に見た。

 「昨日話した通り、ティポスは夜の時間に活発化します。なので夜の学校に侵入し、ティポスを見つけしだい倒して回ります」

 「学校の中を巡る基準は例の七不思議の場所でいいのよね?」

 シオリの質問にココロがうなずく。

 

 1 美術室のモナリザの目から光が出る


 2 誰もいない音楽室のバンドチーム


 3 屋上から見下ろす少女の霊


 4 文化部棟のトイレの花子さん


 5 全力疾走する人体模型


 6 資料室の奥にある大鏡があの世への扉


 7 剣道場に響く竹刀を打つ音


 改めて説明するとこんな感じだ。

 「とりあえず、今夜は七不思議の中の一番目と二番目から当たってみます」

 「っていうことは、美術室と音楽室か」

 美術室は校舎の西側の3階、そして音楽室はその上の4階に位置している。

 巡る順番としてはちょうどいいだろう。

 「七不思議の内容からして、『モナリザ』と『バンドチーム』っていうのが気になるけど、ティポスがそれに化けてたりするのかな?」

 マモルの疑問にココロは答える。

 「正直に言ってしまうとわかりません。ティポスの考えていることはよくわかっていないのです」

 「ココロが戦ったティポスはどんな感じだったの?」

 シオリが聞く。

 「私が戦ったティポスはその世界の動植物に似せて変化して怪物の姿になったり、ティポス自身が武器に変化して他のティポスが使って戦ったりしてました」

 「すごいねそれは」

 自身より強いモノに変化したり武器を使ったりできる。

 思ったよりは、知識や知恵のようなものがあるのかもしれない。

 「そういったティポスは他の個体と比べて進化しているものだったりします」

 「じゃあ、出たとこ勝負ってことになるのか。厄介だね……」

 「はい、毎回敵の見極めが大切になります」

 モナリザは絵のモデルだし、バンドチームと言っても楽器を表しているのか奏者を表しているのか、考えていても埒が明かない。

 「じゃあこれ以上は話してもしょうがないわね」

 シオリが話題を変えるように声を上げた。

 「ねぇココロ、うちでのバイトどうだった?」

 「そうですね、初めてのことばかりでしたけど楽しかったですよ」

 ココロもシオリの話題に乗っかる。

 「シオリもマスターもフォローしてくれましたし、なにより、お客様が拙い私の仕事ぶりにも寛容でしたし」

 「このあたりはうちの高校のおかげで外国人が多いからね。海外から来て働いている人に慣れているのかしらね」

 マモルたちの高校には国際科がある。ここでは主に海外についての文化や外国の人を通して日本の文化について学んでいる。

 国際科の生徒については、日本を知るためにバイトを推奨しているのだ。

 「それに、商店街の息もかかっているしね」

 この町の商店街には多くの店が入っている。

 店のほとんどが組合に入っており、町の平和維持に貢献している。

 町で問題が起きれば、すぐさま集まり、解決へ取り組んでいくのだ。

 町の連帯感はとても強固である。

 「この店でオイタをしたらすぐに町中から有志が集まってきて問題を解決してくれるわ」

 「わぁー、それは心強いですね」

 (なんだか、そこだけ聞くとヤ◯ザみたいだ)

 マモルは口に出すことなくツッコミをいれる。

 「それに、このメイド服も見た目以上に動きやすいんですね」

 そう言うとココロは立ち上がってクルリと回ってみせた。

 「うんうん、それに可愛いしね」

 シオリが目を光らせる。

 「重要なんですかそれは……」

 ココロが戸惑いの目でシオリを見る。

 「当たり前よ、今日はココロのおかげでいつもの三割増しでお客さんが入ったもの」

 「そんな、今日から始めたのに分かるわけないじゃないですか」

 「お父さんがお店の中と外に貼り紙出して宣伝してたからね」

 言われて店内を見回すとたしかに貼ってあった。

 「『メイドはじめました』。なんだか冷やし中華みたいだね……」

 おやっさんのセンスが光る。

 「よって!」

 シオリがココロを指差す。

 「ココロには看板娘の素質があります!」

 「そ、そうだったのですか……!」

 「あ、真に受けてるね」

 紳士(ジェントル)はココロのことを清純と言っていたけど、清純というよりは純朴という表現をしたほうが合ってるかもしれない。

 「同じ看板娘として、喫茶店『KURO』を盛り上げていきましょう!」

 「は、はい!がんばります!」

 といったところで昼休みが終わり、二人は業務に戻っていった。



 二人が仕事に戻ると、マモルも一度自宅に帰ってきた。

 夜に向けて準備するためだ。

 「っていっても、準備なんてすることは限られてるけど」

 敵であるティポスのことがわからない以上、できることは自分を知ることだけだ。

 「イメージ……!」

 片手を突き出し、盾を具現化させる。

 昨日よりもスムーズに具現化させることができた。

 「できる限りのことはしなくちゃね……」

 盾を握りしめ、振り回す。

 時間はある。

 約束の時間まで、自分ができることを模索するべく、マモルは自己研鑽に励むことにした。

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