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ハッピーエンドを求めて  作者: AiU
二章
19/50

暗雲過ぎ去って

 「そうであったか。(みな)よくぞリーモを守ってくれた」

 コロモスは玉座に座ったまま、集まった家臣に向けてそう言った。

 コロモスの隣のにはルルディが立っていて、王に負けないように背を伸ばしている。

 ココロによって想造核を戻されたコロモスはすぐに目を覚まし、ルルディや大臣に事情を聞くと城の者たちに招集をかけた。

 目を覚ましてすぐなので顔色はあまり良くないが、それでも威厳のある居ずまいにマモルたちは畏敬の念を覚える。

 「そなた達にも助けられた。王として、そして一人の父親として礼を言わせてもらおう」

 そう言ってマモルたちに向けられた眼差しには優しさを感じた。

 なるほど、威厳の奥にあるこの暖かさが国民から支持される所以なのだろう。

 「コロモスさん」

 ココロが一歩前に出てコロモスを見上げる。

 「私たち『世界の守護翼』は、この世界の方々と協力関係を築きたくて来ました。ティポスたちの脅威から解放される世界を目指して共に歩んでいただけないでしょうか?」

 「うむ、よかろう。我々リーモ王国は世界の守護翼と手を取り合うことを約束しよう」

 「ありがとうございます!」

 コロモスが大きく頷いたのを見て、ココロはお礼を言うと、安堵の息を吐く。

 これで当初の目的は完遂することができた。

 いろいろと遠回りをした気がするが、今ごろ外でミヅキが連絡してくれてるファーネにも良い報告ができているであろう。

 「それにしても、あのシューメスは何者だったんだろう……」

 マモルが呟くように言うと、コロモスもアゴに手をあてて考えるような仕草をした。

 「ふむ、少なくとも、あの者が一人で動いているようには見えなかったな」

 「やっぱり、そう思いますか?」

 「実際は分からん。話を聞き出す前に我はやられてしまったからな。だが、あの奔放な性格からして、とても一人で全てをこなせるタイプとも思えん」

 感情豊かにティポスを操るシューメスからは、個人的な目的があるように感じられた。

 しかし、ティポスという大きな力は個人で扱いきれるものではないだろう。

 誰か裏で指示を出している者がいてもおかしくはない。

 「また出会うことになるだろうね」

 マモルとココロは顔を覚えられてしまっている。特にココロに対しては感情の変化が顕著であった。

 このまま世界の守護翼として活動していけば遭遇率は上がるだろう。

 「そなた達はこれからもティポスを追いかけるのだろう?」

 「そうですね。そうなると思います」

 「そうか……。つらい旅路となるやもしれぬが、決して挫けるでないぞ」

 「「はい、ありがとうございます」」

 マモルとココロは二人揃ってお礼を言う。

 「ココロ、マモル」

 ルルディが壇から降りてきてマモルたちの前に立った。

 「そなた達にはずいぶんと世話になった。わたくしからも礼を言わせてもらうぞ」

 「はい、どういたしましてです」

 ココロが微笑むと、つられてルルディも微笑んだ。

 「また、会えるか……?」

 「もちろんです。次に会う時はお友だちとして、いろんなお話をしましょう」

 「うん!」

 ココロとルルディが手を握り合う。二人は無言で見つめ合うと、しばらくして名残惜しそうに手を放した。

 すると、ルルディはマモルの方を向いた。

 「マモル、そなたはしっかりとココロを守るのだぞ?」

 「うん、わかってるよ。ルルディも立派な王女様になれるようにがんばってね」

 「ふん、言われるまでもないわ」

 そう言ってルルディは笑って手を差し出すと、マモルはそれを握った。

 この小さな手が大きくなる頃には、王女として素晴らしい人間となっていることであろう。

 「では、メリサ」

 「はい、ルルディ様」

 ルルディはマモルの手を放すとメリサを呼んだ。

 「二人を城の外まで送っていってやれ。くれぐれも粗相のないようにな」

 「もちろんです。ルルディ様と接するように、一切の失礼のないように振る舞いますゆえ」

 「どの口が言うか……」

 「むしろ粗相と言えばルルディ様のほうが――――」

 「ああああ! 黙れこの変態が!」

 ルルディが叫びながらメリサを追いかける。

 そんな光景をこの場にいる者たちが優しい目で見守っていた。

 「はぁ、はぁ、はぁ。まったく、もういいわ! とっとと行ってこい!」

 「かしこまりました。では、マモル様、ココロ様。参りましょう」

 「ああ、うん」

 「よろしくですメリサ」

 メリサが先導して歩きだすと、マモルとココロが後に続く。

 「皆の者!」

 すると、コロモスが玉座から立ち上がり城の者たちを見回す。

 「リーモ王国を救いし英雄たちの旅立ちだ! 敬意を持って見送ろうぞ!」

 コロモスの号令により、兵士たちが扉への道に整列する。

 その光景にマモルとココロは息を飲んだ。

 「どうもどうもー」

 「ありがとうございましたー」

 兵士の間をペコペコしながらマモルたちは歩いて行く。先ほど倒した人たちの顔なんかもあって、なんだか申し訳ないやら気恥ずかしいやらである。

 「ココロー!、マモルー!」

 扉を出たところでルルディに呼ばれて振り返る。ルルディはマモルたちへ大きく手を振っていた。

 「また、遊びに来てねー!」

 「はい! また会いましょうルルディ!」

 ココロがそう答えると、二人で大きく手を振り返す。

 そのやり取りは、扉がゆっくりと閉まるまで続いたのだった。



 「あ、マモル先輩にココロさん。お帰りなさい」

 正面玄関を出て少し歩いたところ、崩れた城門にミヅキはいた。すでに城門はほとんどガレキの山となっており、ミヅキはその上に座ってトランシーバーをいじっているようだ。

 夜もどっぷりと更けてしまっていて、辺りは真っ暗である。所々に焚いてある燭台の火が唯一の光源だ。

 ミヅキはマモルたちに気がつくと、ガレキから降りて近づいてくる。

 「首尾はどうでしたか?」

 「うん、うまくいったよ。コロモスさんも納得してくれたし、とりあえず協力関係は築けそうだね」

 「それは重畳。がんばったかいがありましたね」

 「そうだね」

 「皆さま、本当にありがとうございました」

 話を聞いていたメリサが深々と頭を下げる。

 「立場上、皆さまにはご迷惑をおかけしましたが、これからは仲良くしてくださると嬉しく思います」

 「もちろんですよ、メリサ」

 ココロがメリサと向かい合う。

 「メリサも大切なお友だちです。これから仲良くしてください」

 屈託なくココロが微笑むとメリサの頬が紅潮していく。

 「ああ……天使だ……。私は天使と会話している……」

 「あー、完全にトリップしちゃってますねこの人」

 ミヅキがメリサの顔を覗き込む。

 その顔は恍惚としていて、とても幸せそうだった。

 「……ふぅ。それでは、ルルディ様も待っておられるので、私は失礼いたします」

 正気に戻ったメリサがそう言うと、ココロがそれを受ける。

 「今後、改めて世界の守護翼のメンバーが来ると思います。先ほどマーキングした鏡から来ますので、どこか転移場所を用意しといてください」

 「かしこまりました。コロモス様にはそのようにお伝えいたします」

 「よろしくです」

 これで世界の守護翼とリーモ王国の橋渡しは完了した。あとはファーネが上手くやってくれるだろう。

 「では皆さま、失礼いたします」

 メリサは深く一礼すると、ガレキの山を一瞥し、城へと戻っていった。

 「どこまでも不思議な人だったね」

 「ですね」

 マモルとココロは、去り行くメリサの背中を見ながらそんな感想を言った。

 「よし、行ったな?」

 その時、積み重なったガレキの奥からヴノの声がした。

 「はい、もう大丈夫ですよ」

 「よっこらせっと」

 ミヅキがそう答えると、辺りを(うかが)いながらヴノが出てきた。

 「あ、ヴノさん。こんなところにいたんだ」

 「おぅマモル。さっきぶりだな」

 コロモスとの謁見の時も見当たらなかったが、どうやら外にいたようだ。

 「てっきり、コロモスさんに直接雇ってもらえるように言うのだと思ってたのに」

 「いや、それがよ、メリサの奴に先手を打たれちまってな。これを見てみろ」

 そう言ってヴノは手に持っていた紙を差し出してくる。それをココロが受けとると読み始めた。

 「えーと、『この者、リーモ王国を襲撃せし危険人物なり。見つけ次第ただちに通報せよ。通報者に謝礼あり(リンゴ一つ)』。……手配書ですね」

 手配書には、先ほどココロが読み上げた文とヴノの似顔絵。そして、その下にリンゴの絵が記載されていた。

 「こんな短時間によくもまぁ用意できたね」

 「感心してる場合じゃねぇぜ!」

 マモルがそんな感想を言うと、ヴノが怒って反論する。

 「何がムカつくって報酬がリンゴ一個ってところだ。バカにしすぎだろ!」

 「でも、ここのリンゴ、おいしいですよ」

 「いや、そうかもしれねぇけどよ……」

 素直なココロの反論に調子を崩されるヴノ。

 「まぁ、じゃあ、それはいい」

 「いいんですか」

 ミヅキがすかさずつっこむが、ヴノは気にせず続ける。

 「ともあれ、俺の居場所はここにはないようなんでな。そんなわけで、お前らについて行くことに決めたぜ」

 「えっ、一緒に来てくれるんですか!?」

 「おぅよ! 俺が仲間になってやるんだから百人力だよな!」

 「はい、ヴノなら大歓迎です!」

 「がっはっはっはっ、ココロは素直だな!」

 目を輝かせたココロに、ヴノが豪快に笑ってこたえる。

 「とりあえず、ファーネさんには確認済みです」

 話を聞いていたミヅキが補足をする。

 「ファーネさんは何て?」

 マモルがミヅキに訊ねる。

 「一通りの報告をしたら、強い人は歓迎するって言ってました」

 「話の早いやつで助かるぜ」

 ヴノがうなずいて相づちをうつ。

 「あと、今日はもう遅いから、詳しいことは明日にしましょうって言ってました」

 「そっか、たしかにもう良い時間だろうからね」

 時計がないからわからないが、体感からして深夜前くらいだろうか。

 もう連休も明けるので、マモルとミヅキは翌日には学校がある。

 「休めるところも用意しといてくれてるみたいなんで、一度『ビャコ』支部に行きましょうか」

 「お、それはありがたいね。じゃあヴノさん。改めてよろしくね」

 「ああ、任せとけ! がっはっはっはっ!」

 「あんまり騒ぐと見つかりますよ……」

 豪快なヴノの様子にミヅキがため息を吐く。

 リーモ王国をシューメスの魔の手から救いだし、新たな仲間も加わったマモルたち。

 初の異世界冒険はここで終わる。

 「さて、それじゃあ帰ろうか。ココロ」

 「はい、じゃあ皆さん近くに寄ってください」

 ココロからポシェットから青く輝いくライゼストーンを取り出す。

 「さすがに疲れたですね、帰ったらゆっくりやすみましょう」

 ミヅキがそう言いながらココロに近づいていく。

 「そうだね、僕ももう寝たいよ」

 「俺はもう一杯やりてぇな」

 マモルとヴノがココロへと近づく。

 「じゃあ出発します。転移先は世界の守護翼ビャコ支部です」

 皆が集まったのを確認すると、ココロがライゼストーンに想造力を込めていく。

 すると、化学準備室の時と同様に淡い光がマモルたちを包み込んでいった。

 (疲れたけど、楽しかったな。また、こんな冒険ができるといいな)

 リーモ王国の景色がぼやけていくなかで、マモルは最後にそんなことを思った。

 だか、マモルのそんな思いはすぐに叶うこととなる。

 マモルたちはまだ知らない。初めての異世界冒険はここで終わるが、次の冒険がすぐに始まることを。

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