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とりあえず、使えるものは使いましょう

トーマくんのお母さんが、脳内ひとり反省会をしていると、前に立たされた3人の少年は、その変顔ショーを見続ける羽目になった。

色々突っ込みたいのだけれど、いまこの世界で、トーマくんのお母さんは自分たちの知る限り最強である。

色々知らないことだらけなのだけれど、ネットで調べてある程度は知っている。トーマくんのお母さんが使った雷の魔法は、この世界に存在しない。

存在しない魔法を使える人物なんて、絶対に怒らせては行けない。嫌われてはいけない。それは、子どもの生存本能なのだ。だから、トーマくんのお母さんの機嫌を伺うのだ。


「お前たちは、この世界では孤児の扱いになるだろう。親もいないし家もない。それと、あっちから持ち込んだアイテムは無闇矢鱈に出すなよ。価値が違うんだ」

言われて、ポケットをゴソゴソする。

「これとか?」

出してきたのは回復薬。

「そう、それ」

回復魔法はあるけれど、蘇生魔法がないこの世界、回復はとても大切な行為だ。気軽に無制限に買えるアイテムだったけれど、この世界では?店で一度に99個ください。とかできるわけが無い。値段が分からない、つまり価値が分からない。価値が分からないものを少年が気軽に出したら?しかも、それなりにいい装備をつけている。

たかられるに決まっている。

「町について、この世界の常識が分かるまで、アイテムは出すなよ。つか、お前ら私の言うことを聞け生きて家に帰りたかったらとにかく死なないように、最善を尽くせ調子に乗るな」

とくに、ヒロシ!と指をさされて

「はーい」

と情けない声でへんじをするのだった。

ヒロシだって、自分がやらかしたことぐらい、分かっている。


でも、いきなり変えられないのも事実。

けれど、実力が伴わないお調子者は、この世界では生きては行けない。それを、思い知らされたばかりだ。

重たい空気を察したのか、ものすごーく遠慮がちに、お姫様ことセラスが声をかけてきた。

「魔道士様、お取り込みの所を申し訳ございません」

気品あるお辞儀をして、セラスはトーマくんのお母さんをみた。

「どうかしましたか?」

トーマくんのお母さんは、授業参観なんかで見るような、お母さん特有の笑顔でセラスを見た。

「馬車の用意ができたので、私は公爵領に戻ります。この度は本当にありがとうございました。お借りしました使い魔で父には連絡が行っております。公爵領に立ち寄りましたら、是非屋敷に足をお運びくださいませ。」

にっこりと微笑んで、セラスはその場を立ち去った。

メイドが離れた場所から頭を下げるのが見えた。

セラスを馬車に案内するのは兵士、セラスの後にメイドが続く。

それを見ていると、今度は冒険者たちが声をかけてきた。

「助けてくれてありがとー」

冒険者同士、気さくに話しかけてくる。

とは言っても、魔法使いらしい女子は、剣士のうしろにかくれている。

「あ、あの、わ、わわわ 私たちも乗れる馬車があるのですが、の、乗りますか?」

剣士の後ろから魔法使いが話しかけてくる。

自分たちのギルドで見たことの無い魔道士、しかも強い!に戸惑っているのだろう。なにせ、見たことも無い雷の魔法をつかったのだから。

「あぁ、4人乗れるスペースがあるのなら、お願いしたい」

「大丈夫、馬車って言っても、荷馬車だから」


確かに、案内されたのは本当に荷馬車だった。

既に荷馬車には、先客がいた。

「魔道士の弟子が全員剣士って珍しいね」

先客の1人が声をかけてきた。

賊たちは、物の見事に男だけを殺したらしい。

荷馬車に乗っているのは、全員女。職業も年齢もバラバラだけど、女しかいない。

あちらの世界だったら、浮かれてしまいそうだけれど、少年たちは曖昧に微笑むしかなかった。

これが現実。

受け入れるしかない。


トーマくんのお母さんは、再びマスクをしていた。

ほんっとうに、黒ずくめの人になっている。

唯一、赤いメガネが印象に残る。

見知らぬ景色の中で、そこだけが知っている。不安すぎてどうしようもないけれど、情けないので、膝抱えて座ることで紛らわせる。

それでも、トーマくんのお母さんの顔だけは、安心できる材料だった。


「このまま、町につけるみたいなんだけど」

トーマくんのお母さんは、3人の少年を見ながら話を始めた。

「洞窟でも言ったけど、ゲームとは違う。この世界には、生活している人たちがいる。 それはつまり、経済があるということ。あちらから持ち込んだアイテムはこの世界の経済のバランスを崩す恐れがある。」

何となく、理解出来る。

何とか商店ぐらいの店しかないド田舎に、突然百均の店を建てた。さてどうなる?ってことなんだろう。

「通貨は同じらしいから、使える。が、稼いだ金、ほとんど預けていただろ?引き出せないと思う。ステータスウィンドは開くけど、ギルドカードがない」

言われて、少年たちもステータスウィンドを開いてみた。ゲームの時のステータスがそのまま表示されている。が、1番上に書かれていた所属ギルドが無くなっている。

「ぼくたち、無所属になった?」

ヒロトが不安げな顔をする。

問題にするのそこか?と、こーたが

「つか、レベルとかこーいうのはある訳?マジでやべーじゃんネットないのに、このシステムはあるとか、意味わかんねー」

そう、問題にするのはそこだよ。

「ネットもないのに、ステータスウィンドが開けるって、魔法?ってことなのかな」

「正解」

ようやく、ヒロシがまともに考えて答えに行き着いた。ネットの代わりに、魔法でできてしまうこの世界。

電気の代わりに魔法。エコでいいじゃないか。


なんて、安易なのか?


「町に着いたらどーするの?」

こーたが聞いてくる。

「他の冒険者たちについて、ギルドに行く。ギルドは守秘義務があるから、色々確認をする。」

トーマくんのお母さんの説明では、町に着いたらギルドに行って……この馬車に乗っている他の冒険者たちについて行って、情報を収集。ついでに登録できそうならギルドに登録して、仕事とこの世界の秘密の情報を手に入れる。

1日2日で終わる話ではない。

この世界に飛ばされたのは一瞬だったけれど、元の世界に帰るには?

神様レベルの力が必要だった。


行き着くところはそう、神様はどこ?

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