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とりあえず、助かったみたいです。

「さて、血がつくと値段が下がるからな、お前らその防具をさっさと脱ぎな」

賊のひとりがそう言って、3人の少年たちに錆び付いた剣をむけた。

少年だか、体はそこまで小さくないので、少年たちの防具は買い手がつきそうな品物だった。

そんなわけで、身ぐるみはいでから殺すことに決めたらしい。

決めたからと言って、少年たちは素直に従えるわけがなかった。

殺されるのだから、


ようやく、ゲームのようでゲームではないことの事態に気がついたらしい。

ヒロシは、死にたくなかった。

目の前て、あきらが殺されたけれど、殺されたくはなかった。

矛盾しているが、矛盾していない。

ゲームじゃないんだから、死にたくない!

が、この状況を回避できるほど、ヒロシは強くなかった。

賊がゆっくりと近づいて、錆び付いた剣先がチラチラと視界を横切る。

抵抗すればすぐに切り殺されるだろう。だが、抵抗しなかったからと言って、殺されない訳でもない。

賊の下した決定は、少年たちの死。

「……たっ、た」

鼻先に錆びた剣を突きつけられて、ヒロシは泣き出す寸前の顔になっていた。逃げられない現実を、足掻いてもがいて打破する力を持っていない。


だから、


「助けてお母さん!」

口から出たのは幼き時に自然と口にしていた言葉。

この呪文を唱えれば、いつでも何でも解決出来たのだ。

が、

「おいおい、この状況でかーちゃん呼ぶのかぁ?ガキだなぁ」

賊は愉しそうに笑いながらさびた剣先をヒロシの眉間に押し当てた。

「それともなんだぁ、お前もそこの公女様みてーにとっても偉いかーちゃんがいるのかぁ」

下卑た笑い声を発しながら、賊が一歩ヒロシに近づいた。

「それなら話は別なんだけどなぁ、お前もいい金になるって」

賊が、さらに一歩ヒロシに近づこうとした時だった


「天雷」


控えめで無機質な声が聞こえた。

声が聞き取れなかったのか、賊が一瞬上を見たその時、

洞窟に無数の雷が落ちてきた。


青白いそれを直視して、ヒロシは咄嗟に目を閉じた。

とんでもない光量が眼前に落ちてきて、その眩しさと恐怖にヒロシだけでなく、その場にいたもの達は目を背け固く瞼を閉じる。

雷をこんな間近で体験するなんて、そうあることではない。


光と音が無くなると、よりいっそう静かに感じる。


静かだ。

何も聞こえない。

あれだけの雷が降り注いだのに、呻き声も、瓦礫の崩れる音も、煙の匂いも何も無い。


タイミングにずれはあるものの、その場にいあわせたもの達は、ゆっくりとまぶたを開けて、その光景を見た。


何が起きたのか。


「…………?」

互いが互いの様子を探る。

生きている。

怪我はない。

「あ、あ あ……」

ヒロシは、目の前の光景に驚愕した。

恐ろしい現実。


黒く焼け焦げたニンゲンがそこにあった。

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