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「助けてお母さん」システムのせいで異世界に召喚されたようです  作者: ひよっと丸


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それが1番許せないんですよね

王都にある王宮の、謁見の間。

そこにモラリナ公爵はいた。呼ばれたのは自分だけでなく、他の公爵も来ていた。公爵だけでない、親衛隊の者や、騎士団の者もいる。

どうやら、なにか大変なことが起きたらしい。

考えられるのは、自分の領地にも来た聖教国家の連中だ。まさか、王都で魔女狩りをした?いくら何でもそんな馬鹿なことはしないだろう。そんなことをすれば、いくら絶対不可侵と言えども、国同士の争いに発展するだろう。地方でやるのならそれなりに目をつぶる。神の教えと言うのだから、多少は目をつぶるしかない。の、だが。

「ハルス公爵領で聖教国家の騎士がえらいことをしたらしい」

他の公爵がそっと耳打ちしてきた。

「えらいこと?」

言われた事に心当たりがあった。自分の所でも、聖教国家の騎士が公爵令嬢である自分の娘を、魔女狩りのターゲットにしたばかりだった。




モリアナ公爵から、少し遅れて転移門を使ったトーマくんのお母さんとあきらは、王宮の中を揃って歩いていた。謁見の間で囁かれた話を聞き、ハルス公爵の政務室を探していた。

とは言っても、謁見の間を中心に公爵たちの政務室が円を描くように配置されているのは、ゲームの中とおなじだった。

ハルス公爵の政務室に入ると、控えの間に侍従が2人、壁にそって椅子に座っていた。2人ともかなり顔色が悪い。公爵領で起きたことをしっているからだろう。

隠密の魔法をかけているので、2人には全く気づかれなかった。開ける扉に隠蔽の魔法をかけると、扉が開いたことも気づかないらしい。

「使ったの、初めてなんだけど」

トーマくんのお母さんは、初めて使った魔法の効果に驚いていた。

「ぼくは、ヒロシたちに気づかれないようにしょっちゅう使ってましたよ」

あきらの方がこの手の魔法を使い慣れていならしい。

「この転移門から、ハルス公爵領に行けるんですね」

あきらは、トーマくんのお母さんに言われたことを頭の中で反復した。

「でかい物を入れたことはあると思うけど、水平を保ってやって欲しい」

「分かってます」

「それと……魔女狩りにあったそうだから、その……」

「 大丈夫、心配しないでくださいよぉ、ぼく、覚悟は出来てます。泣いちゃうかもだけど」

そう言って、あきらは鍵を使って転移門を抜けていった。

「 どれほど残酷なんだろうな」

トーマくんのお母さんは、独り言のように呟くと、謁見の間に向かった。


謁見の間では、ハルス公爵が王に許しを願っていた。内容は、聖教国家への進軍。

しかし、聖教国家は絶対不可侵とされている。そこは、国ではあるが、世界の神が鎮座する場所。国を成すのは神官や神父、シスターと言った戦えないものたち。

と、言うのが建前である。

聖教国家に、騎士がいることを誰もが知っていた。しかも、武器は近隣の国々からお布施と称して、最高級の物を巻き上げている。

理由は、「神の鎮座するこの地を守るため」となっていた。

しかし、現実は違う。

騎士と呼ばれるものは、半分以上まっとうな者がいないのだ。神官たちのえげつない趣味を実行するため、普通なら罪人に、なり得る輩を騎士としている。

そう、魔女狩りに同行させるために。


まさに、それをされたハルス公爵は、怒りに顔を染め絶望を口にしていた。

大切な、愛する妻と娘が魔女狩りにあった。と、


王はハルス公爵をなだめたが、そんな言葉は耳に届くはずがなかった。




ハルス公爵の屋敷の中を、あきらは迷いなく歩いていた。邸のマップは、ゲームと同じだったので目的の場所は、初めからわかっていたのだ。

そう、これはゲーム内であったイベントと同じ。

目的地はわかる。

ただ、これから実行することがゲームとは違う。

イペント発生の条件がある部屋に行き、その、発生条件のものを魔法のカバンでトーマくんのお母さんに渡すのだ。ゲーム内では絶対に出来なかったこと。

目的の部屋に入って、あきらは深呼吸した。

ゲームとは違う、現実に向き合う。どんなに綺麗な部屋であっても、どんなに清潔なベッドに寝かされていても、そこに横たわるものは……

ゲームと違う、映画と違う。現実を見ることになる。分かっている。ヒロシたちは、魔物の解体までしているのだ。自分だけ、現実から逃げる訳には行かない。




「おっさん、そんなに言ったって、ここにいる連中には届かないよ」

唐突に、ハルス公爵の背後で声がした。

振り返ると、黒い魔道士が立っていた。

「誰だ、貴様は」

元々、苛立っていたハルス公爵は、ますます激怒した。公爵である自分の背後にたつとは、断りもなく話しかけるとは!

「魔道士殿、なにをするつもりですか」

モリアナ公爵が、慌てて止めに入った。もとより、

「魔道士殿、どうやってここに?」

王宮に行く。とは、伝えてきたが、転移門は自分専用。ならば、ここにいる黒い魔道士は、どうやってやってきたのか?

「ああ、転移門、借りましたよ」

それが何か?と、言わんばかりの口ぶりだった。

「おっさん、あんたがどんなに熱弁したって、ここにいる連中には届かないよ」

黒い魔道士は、ハルス公爵の肩に手を置いた。ハルス公爵は、その手を払い除けようとしたが、その手に触れた途端、黒い魔道士の顔を見て動きをとめた。

「あんたらはみんな、対岸の火事程度にしか思ってないんだろ?」

黒い魔道士が、周りを見ながら口を開く。

無礼者!と言ってしまえばそれまでのことなのだが、話しぶりからモリアナ公爵と何やらありそうな魔道士と分かる。そうなれば無下にできない。この場にいる貴族でない者たちは、公爵の機嫌が大切だ。

「なぁ、おっさん。ここにいる連中はな、あんたが怒り狂ってる理由が分からないんだよ」

「 ------っ」

ハルス公爵は、何かを言おうとして、悔しそうに口を閉じた。その空気は感じていたから。

「ここにいる連中はなぁ、あんたが、なんで、そんなに死んだ女に執心しているかわかんねーんだよ。だってそーだろ?子ども産ませるだけなんだから、違う女を貰えばいいだろう?って、そー思ってんだよ」

黒い魔道士が物凄いことを言ってのけたが、誰も反論しなかった。男の、貴族の、上流階級の、誰もが根底にソレを思っている。口にしないだけで。そーゆー事だ。そーゆー事になっている。


誰もが思っていること、口にしないだけ。


「だが、私はっ!」

ハルス公爵は、黒い魔道士の、手をようやっと払い除けた。重い、重い呪縛から逃れるように。

「でも、無理だよ。こいつらは言葉じゃ動かない。ずっとそうだったから、現実を見ていない」

黒い魔道士は、そう言うと、ゆっくりと歩き出し、謁見の間の、中央に立った。

謁見の間にいた男たちは、黒い魔道士に気圧されていた。黒い魔道士の言葉が嫌でも耳に入ってくる。それはまるで、王の演説のようだった。


「だから、現実を見せてやるよ」

黒い魔道士は、カバンを取り出した。一目で魔道具と分かる。そこから、なにを取り出すつもりなのか?

「準備はいいか、あきら?」

黒い魔道士は、なぜがカバンに向かって話しかけている。

「出来ました」

カバンから返事があった。

見たことの無い現象を前に、謁見の間にいる男たちは狼狽えていた。魔道具から人の声がする。そんなもの、見たことがない。



あきらは、イベントが起きるその部屋で、静かに合図を待っていた。ベッドの上にあるそれを見て、涙が出てしまったけれど、声は殺した。この部屋に漂う声が、あきらの神経を逆撫でした。漂う声は侮蔑だった。あるいは愉悦。不愉快だった。あきらは、こんなに激しい感情を持ったことがなかった。全身の魔力を暴発させて暴れ回りたいぐらいに、その声は不愉快極まりなかった。

だが、いまはまだ、そのときでは無い。

あきらは、静かにトーマくんのお母さんからの合図を待つしか無かった。

「準備はいいか、あきら?」

カバンから声がした。安心する声。

「出来ました」

返事をして、カバンの口を大きく開ける。

ゆっくり、カバンにベッドを入れた。


「終わりました」

カバンからあきらの声がした。

「分かった。ありがとう」

トーマくんのお母さんは、カバンに手を入れると、何かを出そうとした。

謁見の間にいる人々は、ただ黙ってそれを見ていた。何が起こるのか?いま、目の前で何が起きているのか?

ハルス公爵は、予感がして目を閉じた。あの黒い魔道士が、カバンから取り出すものの正体の予想がついているから。だから、心を落ち着かせる必要がある。

「危ないよ」

ちょっとだけ注意を促すと、トーマくんのお母さんは、カバンからとても大きなものを引きづり出した。


それは、天蓋のついた大きなベッドだった。


謁見の間にそれが現れた時、天蓋が大きく揺れ横たわるものがハッキリと見えた。そして、それを見てしまったこの場に居合わせた唯一の女、王妃が声にならない悲鳴を上げて崩れるように倒れ込んだ。

侍従が慌てて王妃を庇う。

崩れるように倒れ込んだ王妃の顔は蒼白だった。話に聞いていた魔女狩り。話に聞いていただけの魔女狩り。それが、目の前に突然現れたのだ。その衝撃で、王妃の心は砕け散った。


崩れるように倒れた王妃を見て、謁見の間にいた男たちは、黒い魔道士を怒鳴りつけようとした。が、口を開きかけて、誰もが声を発せなかった。

魔法にかかったのでは無い。

自分はいま、何を言おうとした?なんて言おうとした?『なんてものを王妃様に見せるのだ』?『なんてもの』とは、なんだ?そこに横たわるものはなんだ?誰だ?それを、なんと言えばいい?それは、あれなのだ。先程まで、熱弁をふるっていたではないか。聞いていただろう。それがそうだ。




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