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シメオン付きのメイドになってから九年後、美桜は多くの技能を修得していた。近接戦闘技能・魔法術・癒やしの技・戦術指南・旅芸人・高貴なるもの(言霊)・魔法具作成(発明)・毒師・暗殺技能……などである。
メイド服を着た美桜は彼の部屋を訪ねる。
「失礼致します」
顔を上げれば、白いマントを翻して銀の鎧を着たシメオンがこちらを振り向く。二二才になった彼は、とても美しかった。あのゲームのグラフィック通りの美丈夫がいる。しかし生の彼は、ドットよりも更に麗しい。
「昨夜の暗殺者はどうなった」
「残念ながら、話しを聞く前に毒を飲んでしまいました……」
美桜を眉を下げる。
「ふん、飽きもせずに何度もおくって来るものだ」
彼はつまらなそうに言う。
「まぁ、良い。しばらく遠征に出る」
「遠征ですか?」
「……第一王子カミロが、少し前から城を空けている事は知っているな?」
「はい、存じております。見聞を広げる為に旅に出ているとか」
「それは方便だ。あれは、戦場にいる」
美桜は目を見開く。
「戦場……ですか。穏やかではありませんね、いったいどの国と戦争をしているんですか」
シメオンは口角を上げる。
「異界だ」
「!」
美桜は心臓が跳ねた。
(ついに、ついにこの時が来たんだ!)
ゲーム中の戦争が、いったいいつ起こるのか美桜には全くわからなかった。
「不確かな情報も多いのだが、この国が異界から攻撃を受けている事は確かだ……私は、そこへ行く、おまえも着いて来るか」
「も、もちろんです!!」
美桜は内心ガッツポーズする。
「おまえの働きに期待している」
「はい、頑張ります!!」
この時から、美桜の本当の目的は始まった。
つづく




