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大きな三角帽子をかぶった魔道士ハンネスは、美桜を見下ろす。
「おまえがビュロの言っていたメイドか……」
美桜はメイド服を着て、城下にある彼の家を訪ねていた。
「はい、その通りです」
「……全く、面倒事を……まぁ、さっさと終わらせるぞ」
彼は美桜を家に入れて、水晶玉をテーブルに置く。
「手をかざせ。魔力があれば、これが反応する」
「一度お手本を見せてくれませんか?」
彼は水晶に手をかざして、水晶の中に光を映す。更に、映像が映った。そこには城下の様子が見えた。
「そら、やってみろ」
手を離せばすぐに映像は消える。美桜は、水晶に手をかざす。
「……」
すると手がほんのり温かくなって来る。先程見たイメージを頭の中でしっかりと思い描く。
「む」
男の声に目を開くと、水晶が光っている。美桜は更に、水晶を睨みつける。すると、水晶の中に映像が見える。城が映り、廊下が映り、そしてシメオンが映った。美桜は笑みを浮かべる。彼は窓辺で本を読んでいる。
「もう、十分だ」
美桜は顔を上げて、水晶から手を離す。
「よもや、最初から映像を映すとは思わなかった」
ハンネスは美桜を値踏みするように見る。
「これは面白い、拾い物をした」
彼は笑みを浮かべた。美桜は正式に彼の弟子となったのだった。
一年後、美桜は魔道士ハンネスから全ての技を習い、更に彼の師匠の大魔導師から大魔術を習って半年かけて修得した。大魔導師となった美桜は彼らに別れを告げて、次は城で諜報員の訓練を受けた。その訓練も一年で終えると、次は聖職者になり癒やしの技を覚えた。そうして、次々とジョブを変えて技を習得していった。一度覚えた技は身体が覚えていて、忘れる事はなかった。
つづく




