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 後日、美桜は城の地下の一室に連れて来られた。松明の付けられた部屋で、スキンヘッドの屈強な男が腕を組んで仁王立ちして待っている。

「その娘か」

「はい」

 シメオンが頷く。

「私の剣の師のビュロだ。失礼の無いようにしろ」

「美桜と言います……」

 美桜は頭を下げる。

「ミオか……」 

 ビュロがこちらを見る。彼はとても大きな男だった。おそらく一九〇センチはあるのではなかろうか。

「剣を持った事は無いのだな」

「はい」

「厳しい訓練を耐えぬけるのか?」

「……頑張ります!」

 美桜は強い気持ちで見つめ返す。

「……やる気はあるようだな。良いだろう」

「では、よろしくお願いします」

 シメオンは部屋を出て行く。二人、部屋に残される。彼は、美桜を見下ろして睨んでいる。

「シメオン様の護衛は生半可な覚悟では務まらない」

「はい」

「シメオン様の為に死ぬ気はあるか」

「はい」

 美桜は大きく頷いた。するとビュロが眉を寄せる。

「おまえのような若い女が、何故それ程簡単に命を捨てると言える。一体、何が目的だ」

 美桜は驚く。彼は怒っているようだ。

「た、確かにその通りなのですが……その、好きな方の為に命をかけたいと思うのは普通の事ではありませんか?」

美桜はビュロを睨む。

「あの方に懸想しているのか?」

 美桜は目を伏せる。

「おまえのような下賤のメイド風情が、役にたてば振り向いて貰えると思ったか?」

「いえ、それは……思いません」

 美桜は首を横に振る。

「ただ、私はあの方の役にたちたいだけです」

 美桜はただ、シメオンの命を救いたいだけだった。

(彼が振り向いてくれるかなんて関係ない。私は今度こそ彼の生存の道を見つけるんだ)

「……良かろう。おまえの目には嘘が無い」

 ビュロが頷く。

「これからおまえを鍛える。シメオン様を守る為に地獄に耐えろ」

 そうして、美桜はビュロによる訓練を受けた。

 訓練の内容はまず基礎的な体力を付ける事から始まった。より長く走る事が求められ、重い物を持つ筋力を求められる。次に基礎的な戦い方の型を覚えた。それらはとても辛い訓練のはずだった。城の外の森を走りながら、美桜は息も乱していない。

「はっ、はっ、はっ」

 規則正しく息を吐き、森を走りつづける。すると、途中で草が揺れる。草をかきわけて現れたのは、巨大なクマだった。そのクマは、美桜めがけて飛びかかって来て鋭い爪を振り下ろす。それを美桜は右手で受けて、左手でドンっと腹を打った。クマは呻き声をあげて後ろに倒れた。白い泡を吹いて、事切れる。

「ふぅ……」

 美桜は自分の左手を見下ろす。美桜の身体は自然に動き、この巨大なクマを倒した。

(やっぱり『学習技能』のおかげなんだ……)

 基礎訓練は最初の数日は辛かった。しかし、日が経つ事にどんどん楽になり三ヶ月もしない内にフルマラソンだって出来るくらいの体力がついた。筋力の方も、最初は小麦袋を一つ持ち上げるのがやっとと言う状態だったのに、今では樽三つを軽々持ち上げている。まだ訓練は、半年しか受けていない。なのに、美桜は既にクマを素手で倒せる程の力を得ていた。

「ふっ、ふふっ」

 思わず浮かんだ笑みを手で押さえる。

(これで道筋は見えたわ。シメオン様を救う為に、私は最強の『兵士』になるわよ!!)

 そうすれば、きっと彼を救えるはずである。美桜は笑みを浮かべて、再び走り始めた。今では一日中走っていても息はきれない。大きな岩だって、軽々持ち上げられる。このまま鍛え続ければ、美桜はきっと最強の兵士となるだろう。



つづく


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