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 シメオンに気に入られた事で、美桜は彼の専属メイドとなった。彼の身の回りの世話をする。しかし彼は、極力自分の事は自分でやるタイプの人間だった。朝は起こす前に早くから一人で起きて書き物をしている。着替えを手伝おうとしたら、断られた。

「私は、老人ではないからな」

 そう言って、自分でシャツを着て、タイを締める。食事を持って来ると、彼はスプーンを美桜に差し出す。

「毒味をしろ」

 美桜はスプーンを受け取って、一口ずつ料理を食べる。美桜の毒味が終わると、彼は料理を食べ始める。トーストをちぎり、バターとジャムを塗って食べ、紅茶を飲む。美桜はその様子を、少し離れた場所から見る。

「私は自分の事は自分で出来る。メイドの手を借りる事は少ないだろう」

「はい……そのようで」

「おまえには、別の仕事を頼みたい」

「別の仕事ですか?」

「おまえは、私の立場を理解しているか?」

 美桜は瞬きする。

「シメオン様は、カラタユート王国の第二王子です……」

「そうだ、しかしそれでは情報が足りない……」

 美桜は押し黙る。

「私は妾の子だ、しかし妾の子供は他にもいる。だが、その中で私だけが王に認知され、第二王子としての立場を得た。理由はわかるか」

「……わかりません」

「……私が優秀だからだ。王は妾の子達の中からもっとも優秀な者を第二王子にすると言われた。そして私が選ばれた」

「そう……だったのですか……」

 ゲームの中では出て来なかった設定である。

「しかし、『第二王子』と言う席を取り合って妾の子達は争いを始めた。十三人居た子は、今や私を含めて三人しか残っていない」

「それは……どうしてですか……?」

「簡単な事だ。暗殺されたのだ」

 美桜は驚いた。実は二年前にとある貴族が城の中で毒殺されて料理番の召使達が厳しく、注意を受けた事があった。

「残った妾の子の名はケンドルとウチコフ。あいつらは今も私の命を狙っている」

「そんな……!」

 シメオンの命の危機は戦場だけではないのだ。

「わ、私がシメオン様をお守りします!!」

 思わずそう言うと、シメオンが片眉をあげて美桜を見る。

「その細腕では、とても守れるようには見えないがな……」

「き、鍛えます!!」

「ふっ……」

 彼が笑う。

「おまえに頼みたい事とは、何か怪しい者を見たら知らせて欲しいと言う事だったのだが……少し、方針を変えてみるか?」

「怪しい奴がいたら捕まえて倒します! だから私に、戦い方を学ばせてください!!」

(凄いナチュラルに、言えたと思うけど、どうかな!?)     

 美桜はシメオンをじっと見る。

「よかろう。確かに、私の側にいるのなら戦い方は覚えておいた方が良いな」

「はい!」

「私に剣を教えた師がいる。その者に話を通しておこう」

「ありがとうございます!! 私、頑張ります!!」

 美桜は心の中でガッツポーズした。

(よしっ、これで戦い方が学べる!! 頭角を表して、あの戦いが始まったら一緒に連れて行って貰おう!)

 一先ず、一歩前進した事を喜んだ。



つづく


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