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 酸性スライムは、魔法兵がいない部隊の配置された場所で大きな猛威を奮った。けれどどうにか、全て駆除して壁を壊されずにすんだ。スライムの駆除後は、壁は至急補修された。石材は補充されていたので、十分足りた。酸性スライムの攻撃は脅威だったが、手足を溶かされた者は美桜が治した事で大事は無かった。ただし、欠損した手足を修復する癒やしの魔法は大魔法の部類に入る。倒れていた兵達には治療後幻覚をかけて、手足が無くなった事は夢だったと思い込んで貰った。そうしなければ、また面倒な事になる。

 美桜は強いが、『ケムプフェンエーレ』は最大限に育てた兵一人で戦えるようなゲームでは無かった。あくまで、沢山の兵士達と協力して防衛するゲームなのである。だから美桜は自分の能力を周りに悟られ過ぎてはいけない。疑って追放されるのも困るが、頼られ過ぎて彼らの成長を止めるのも困るのである。


 美桜は砦の中の倉庫を歩き、物資がちゃんとあるか確かめた。戦争に物資の確保は重要である。カミロ王子から物資を記録した紙を貰っているが、下の兵士がそれをちょろまかして帳簿を誤魔化す可能性もある。また粗悪品が届く可能性も十分にある。物資の在庫と、質のチェックは重要な仕事だった。

「ねぇ」

 子供の声に振り向くと、ユンバが耳をピコピコさせて美桜を見ている。ヒールは対象者の生命エネルギーを前借りして使う魔法である。後から反動でしばらく寝込む事になる。ユンバもしばらく寝込んでいたはずだ。

「こんにちはユンバ」

「ねぇ、お名前教えてよ」

 そう言えば、教えていなかった。

「私は美桜よ」

「ミオ! 僕、覚えたよ!」

 ユンバがぴょんぴょん飛ぶ。

「ねぇ、コレを受け取ってよ!」

 差し出されたのは、小さな花束だった。野に咲く花を摘んで来たのだろう。

「ありがとう。いいの?」

 花束を受け取る。

「助けてもらったお礼!」

「そんな、私は大した事してないわよ」

「溶けて無くなった手を治してくれたよ!」

 美桜は驚く。ユンバにも、後から幻覚をかけて治療した。手が溶けた事は記憶に残らないようにしていたはずなのだ。

「どうしたの?」

「あ、いえ……」

 美桜はユンバのステータスを思い出す。

(そうだ、獣人にはステータス低下魔法が聞きづらいスキルがあったわね……)

「でも変なんだ! 一緒に居た兵士達、みんなミオの事を覚えてない! みんな、僕が幻覚でも見たんだろ! って言うんだ!!」

 美桜は小さくほほ笑む。

「ユンバ、出来ればその事は内緒にしておいて貰えるかしら」

「どうして?」

「私にとって都合が悪い事だから……」

「そっか、ミオ困るのか……わかった! 僕、内緒にしとくよ!」

「ありがとう、ユンバ」

「えへへ、ミオは命の恩人だからね! 何か困った事があれば、いつでも僕の事を頼っていいよ!」

 長い尻尾を振って笑う少年に、美桜も微笑んだ。



つづく



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