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 異世界の魔物達との戦争は、長く続いていた。魔物達の進軍は繰り返し行われ、壁が作られてからは激化した。無尽蔵に湧いてくる恐ろしい魔物達を前に兵士の士気は低下した。多くの兵士も失った。そんな中、第一王子カミロは自らの意思でこの戦場にやって来た。第一王子の戦争への参加で、兵士達の士気は向上した。そして、第二王子シメオンもその様子を見て戦闘に加わったのだった。

『王族のみっともない姿を兵士達に晒すわけには、いかないからな』

 と言うセリフを彼は加入後、言うのだった。彼がこの戦争に参加した本当の理由はゲームをプレイしてもわからない。

 ・第一王子に対抗して戦争に参加したのか?

 ・王の命令を受けてやって来た?

 ・本心では国を守る為?

 美桜はゲームをプレイしながら、そんな風な予想をしていた。

 前を歩く、第二王子シメオンの後ろ姿を見る。戦争後だと言うのに、彼は少しも武装が汚れていない。あれ程多くの敵を切ったのに、帰り血すら浴びていないのだ。彼の内心は、美桜にはわからない。

 壁で囲まれた門の地点は【最重要攻略地点クベロ荒野】と呼称されている。そこから少し離れた場所に、兵士達の寝泊まり用に拠点が作られている。シメオンと美桜は今、その一つのテントの中にいる。

「お疲れ様でした、シメオン様」

 美桜は彼に紅茶を差し出す。それを彼は受け取って、飲む。

「……ミオ。戦争の勝敗を決める大きな要因は何か知っているか」

「……兵站です。例え弱い兵ばかりの軍隊でも、それを支えるバックの兵站がしっかりしていれば、長く戦う事が出来、長い目で見れば兵站の劣る戦力的には強い兵を打ち負かす事が出来ます」

「その通りだ」

 シメオンは頷く。

「だか、これを見ろ」

 彼は周囲を見る。

「みすぼらしいテントだ。兵士達のテントはもっと酷いだろう。これでは、長期的に戦争など続けられるはずがない」

「同意いたします」

「王は現状を理解していないのか……?」

「報告が滞っているのでしょうか? きちんと今の現状を伝えて支援をいただかねば、我々の軍が負ける可能性もあります」

「……そもそも王はこの異界との戦争を、秘密裏に行っていた。カミロは、偶然それを知り参戦したわけだが……。このまま秘密にしたまま、戦争を続ける事は出来ない。カミロから、王へ報告書を出させるか。それで、王も正式に支援を送るようになるだろう」

「えぇ、それが良いと思います」

 美桜は頷いた。


 後日、拠点に次々と物資が運びこまれた。カミロの要請を受けた王が、手厚い支援を行うと決めたらしい。テント横に巨大な砦が建設される。兵達を看護する為の医療品、食料、武器等も十分な量が届けられた。荷馬車から下ろされる積み荷を遠目に見ていると、カミロ王子が歩み寄って来る。

「兄上の助言のおかげです。父上は、報告書を読み現状を理解してくださったようです。これで万全に戦えます!」

 カミロが笑顔になる。

「兵站が整えば、次は兵の鍛錬だ。ざっと見たが、最前線にいるにしては若い兵が多いな」

「あ……実は、俺がココに来る前から戦争は始まっていて、熟練の兵士達は既にその時に大半を失ってしまっているんです……ここにいるのは急遽徴兵した新米ばかりで……。それに他国との戦争を長くやっていませんでしたから、騎士団も実戦を知らない者が殆どで……」

「平和におごっていたな……国の最終防衛地点を守る兵士が新米ばかりとは……先が思いやられる……」

 シメオンは小さくため息をついた。

(そういやゲーム中でも兵士はだいたいレベル一からのスタートなんだよね、特に説明無かったけど、そう言う事だったんだ?)

 後ろで話しを聞きながら美桜はなるほどと、内心頷いた。その時、シメオンと話していたカミロと目が合う。彼は数秒目を合わせた後、慌てて目を反らした。その反応がよくわからず、美桜は首を傾げた。



つづく



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