トオミミさん4
オレは桜から神に進化した!
もちろん違うよ! 人間だよ! 異能力者だけど。
ウチキちゃんは結局、例のあの家に行ったようだった。
つまり、ウチキちゃんが人の心を読むタイプの異能力者であることは、ほぼ間違いないようだった。それから、懸念していた通り、あんまり良い環境ではないようである。自分が関わったことなので、多少心が痛む。
とはいえ、あのまま、親戚の家に行くのも、あまり良い状態ではなかったようだった。そっちが好ましい状況だったら、見つけなかったことにしたのになぁ、とため息が出る。
だが、今回わかってしまったということは、どの道見つかっただろうと思う。
つまり、そういう運命なのだ。
そんな訳でもう関わらないと決めたつもりなのに言い訳しながら、ウチキちゃんは元気にしているか、ついつい聞き耳を立ててしまうのだった。
今のところは、元気にいびられ、元気にそれをスルーしているようだった。あの家の場合、異能力者を道具にしか思ってないようで、前当主であったじいさんも相当面倒に思っていたようだった。
他人から見れば便利すぎる能力だからねー 心を読めるなんて。
そもそも、こんな状況になったのは、じいさんの息子が付き合ってた女性と別れた後、子どもがいたことが発覚したかららしい。「自分は能力ないから大丈夫だと思った」と主張してた。
それも本当か疑わしいけどねー。てか、時期かぶってんじゃん、と。
聞き耳を立てながらツッコミを入れる。もちろん、現場でも同様の指摘が入るが、「むしろ、婚外子に能力があったのだから良かったのではないか」という寝言をほざいていた。そんな発言を現場では「それもそうか」と受け入れてしまう。
ありえねー と呟き、暴言を吐く。この能力が相互ではなくて良かったと心から思った。
ウチキちゃんの、桜さんに会いたかったなぁという言葉に関してはとても複雑な想いを抱いていた。
てかそっちも大変なんだから気にすんなと思い、ついウチキちゃんが席を外した時に、こっそりとカバンの中に「困ったら助けを呼んで」という手紙を入れてしまった。入れて、すぐその場を離れてから、うわーと後悔する。ストーカーっぽいと。行動範囲がわかるとこういうことしてしまうから嫌だったのに、と思いつつも、回収もできないし、と悩む。
異能力者だから会わなかったけど、向こうが異能力者でもやっぱり会わなくて良かったと思ってしまう。
特に、考えていることがわかったり、声が聞こえるような、共感系の能力同士は会うのはリスクが高かった。特に、心読む側の。
こっちも大量に情報を受信しているので、その情報を相手に与えてしまう可能性があるから。かつて、そのようなことがあったのだ。
だから、自分だけは会うわけにはいかないのだった。
けど別な能力なら、と思い、そうだ、と思いつき、マジメガネを呼び出す。
「兄さん、今度は何ですか。」
呆れ気味に聞かれる。
「ウチキちゃんの件なんだけど。」
「またですか…」
ため息をつくように言われる。そんな高頻度で面倒事を持ち込んでるように言わないで欲しい。と思ったが、思い返したら割と高頻度でかつ面倒事であるような気もしてきた。気にしないことにする。
この件には、あんまり人を関わらせたくないこともあり、マジメガネに頼ることになるのだった。
「会ってみたくない?」
と言うと、
「会ってみたくありません」
と答える。
「なんでだよー」
と言うとその問いには答えず、
「そんな気になるなら兄さんが会えばいいでしょう」
真顔でいう。
「そう、できればいいんだけどなー」
と呟くと、
「わかりました、今回だけですよっ」
と引き受ける。
「おー よろしくなー」
色んな伝手を使って、面会の場を整える。