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トオミミさん6

 カマクラさんって誰だろう。


 突然、ウチキちゃんにそんな名前が飛び出す。

 そんな人物と知り合ったらしい。いつの間に! と遠耳の能力を持つ彼は少し驚く。


 ウチキちゃんの交友範囲は著しく狭かった。元々仲のいい人はいなかったようだし、新しい学校に通っていてもそれほど仲の良い友達はできていないようだった。受験のシーズンであることもあって、友好的な雰囲気が築きにくいようだった。

 だが、もう少しがんばれば卒業。

 その間に、話せる人が少しでも増えるといいねと思っていた矢先のことだった。


 良いことではある。あるが、複雑な気持ちだった。


 ウチキちゃんの中では、カマクラさんが桜さんということになってしまったらしい。

 つまり、オレがカマクラさんだと……


 だけど、ウチキちゃんはカマクラさんという人物には良い印象をもっていないようだった。向こうが会おうというのに、実際会うと、会うのは本意な感じのようで、とてつもなく、理不尽でひどい奴のように思えた。

 なんだそいつ! と。そんな人物に思われるのは心外であった。

 もしかすると、あの家関係の人物かもしれない。

 そんなヤツ、知り合いだったら説教してやる、と思う。

 っていうか、そんなヤツ別れてしまえー! と思うが、それでもウチキちゃんの数少ない知り合いだもんなー。

 なかなかままならないものだった。気が付けば、恋愛や結婚を経験する過程を通り越して、年頃の娘を心配する父親の気分になっている。と別な気持ちにはわざと気付かない振りをする。

 まだそんな年じゃないのに! まだ成人過ぎてちょっとしたくらいだ。

 身分上は大学生ということになっている。が、真面目には通っていない。勉強する意欲がないというよりも、任務の方を優先するように言われているからだった。彼にとってはどこにいても講義は聴けるし。


 彼の任務は「異能力者を探すこと」であった。

 ほとんどの場合、異能力は親から子へ代々継承されていく。なので、それぞれの家ごとに管理されていく。

 だが、たまに、家の外で生まれてしまうことがあった。本家も知らないところで。能力も、そのコントロールの仕方も。

 さとりちゃんのように。


 異能力を持っているとどうしても孤立していってしまう。能力があるということは同時に、人と同じではいられないということなのだった。マジメガネのような物理系であれば、所かまわず意図せずに人を傷つけてしまうし、共感系であれば、人に傷ついてしまう。

 さとりちゃんのように。


 基本的に異能力者は群れない性格が多い。家同士も対立まではいかないものの、ほとんどかかわり合いがない。だから、異能力を持っているが、その狭く閉鎖的なコミュニティから漏れてしまったら、生きていくのが困難なことが多かった。

 そこで、遠耳の家では、そういう者を拾い上げて、元の家に戻したり、家が既になければ似たような能力の家を紹介したり、斡旋のようなことをしていた。()()()()()()には打って付けの能力なので。


 段々と調整役のようなことも担うようになっていた。 

 そういうこともあって、特定の人に感情移入したり、肩入れするのは良くない、と思っていたのに。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


 ある日、とうとう恐れていた話が耳に入る。


(早くないか)

 とため息が出る。


 だが、家の話となるならば、こちらから横槍を入れることはできない。

 結婚の話など。

 それは、うちきちゃんの見合いの話だった。

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