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不合格生の人生哲学  作者: らむね
7/9

6話「恋愛相談」

文章の位置を調整するのって難しですね。



「誠の恋をするものは、みな一目で恋をする」


ウィリアム・シェイクスピア



〜〜



「「「恋愛相談?!」」」


「ま、百聞は一見に如かずってね」



哲学研究会の皆さんへ


告白しようか、迷ってます。どうすればいいか、教えて下さい。


1ーB 柏谷



「いや。何ですか、コレ」


「断片的過ぎ」


「流石にこれはちょっと…」


「どうせ、下らない悪ふざけだよ。そもそも真剣に恋愛相談する人間が、こんな胡散臭い部活に頼る訳がない」


「沙也加ちゃんは後で、私とお話しようね?」


かつて、ここまで読み手のことを考えなかった手紙があっただろうか。本当に真剣に相談してきてるのなら、この柏谷さんは、哲学を魔法か何かと勘違いしてるに違いない。僕達に、このペラ過ぎる内容から、一体何を読み取れと言うのだ…


「これ。何て返答しましょうか…」


「やめとけ。とかでいいんじゃないですかね」


「そもそも人選ミス」


「うん。分かった!」


「何が分かったんです?部長」


「この投書はね。今世に於ける【恋愛】の在り方について、疑問を呈してるんだよ!」


「いや、普通に告白するかどうかを、迷ってるだけだと思いますけど…」


部長は哲学が絡むと、急に思考回路が変になる。いや、比喩じゃない。本当に変になる。この手紙から、一体どんな読み取り方をすれば、その結論に至れるのか。僕には一生分かりそうにない。もっとも、分かりたいとも思わないが。


「好きだから告白するってのは、思えば一元的な考えじゃない?」


「ヤマアラシのジレンマ的な話だね。確かに好きだから告白しない。それも恋愛の一つの形だと思うよ」


「ヤマアラシのジレンマ?」


「脳内物質の作用を、さも尊いものかのように謳った、意気地無しの言い訳ですよ」


「一体、どんな否定的な解釈をしたらそうなるんだい…」


「ヤマアラシはトゲトゲだから、近づきすぎると怪我する」


「告白しようにも、関係性が悪化しそうで怖いってこと?」


「正解」


ヤマアラシのジレンマ。なるほど。言い得て妙だと思う。近づきすぎると、怪我するかもしれない。でも、遠すぎては、仲良くなりたいという心象に背くこととなる。所謂【友達以上恋人未満】の関係を抜け出れない状態だ。


「で、今回はどうやって回答決めるんです?この間みたく討論ですか?」


「それがベストかな。それじゃあ告白賛成派の人は挙手を」


「……………………」


「じゃあ、告白反対派の人は?」


「……………………」


「察した」


沈黙。三人寄れば文殊の知恵と言うが、無知を寄せ集めても、そこからは何も生まれやしない。つまり、そういうことだ。やめろ。憐れむな。


「そ、そもそも、今回は情報が少なすぎるし、したければ勝手にすればいい話じゃないか」


「それは違いますよ!犬前さん!」


猿梨先輩の鬱センサーは、これには反応しないんだろうか。それとも、抗うつ剤でも服用してたり?


「え、別に個々人の自由だろう?」


「不純異性交遊なんて、青少年保護育成条例に抵触します!もしも、柏谷さんの告白する相手が13歳未満だったら、どうするんですか!」


「いや、常識的に考えてないだろ」


「ありえなくないですよ!俺は幼児趣味なんじゃない。俺が好きなった娘が、たまたま幼女だったんだ!とかかもしれないじゃないですか!」


「いや、常識的に…」


「そもそも、学内での恋愛だなんて、席がたまたま近いだとかの、ボッサードの法則に過ぎません!閉鎖的な環境下で、受験勉強という逃れ難い未来に抱く不安を、恋愛感情か何かと勘違いするんです!」


「いや、話変わっ…」


「この学校には良家の令嬢令息が多いんです!学生の内から、軽はずみに不純異性交遊なんて繰り返してたら、歪んだ人格形成がなされて、将来的に愛人問題とかで、スキャンダルとして取り上げられますよ!」


「だから普…」


「向こうでゲームしてましょうか」


「「はーい」」


「いいですか!皆さんは、自覚が足りてないんですよ!本国に於けるHIV感染者の推移は、古くから血液を媒介とした医療問題を感染の第一原因にしていたにも関わらず、血液製剤の製造に加熱が加えられ、血液採取時の注射器の回し打ちも対策され、諸問題が解決された現在でさえ、感染者は増加傾向にあるんです!これは近年での感染ルートが別に移りつつあることを暗に示しています。それが不純異性交遊!もとい性交渉!」


「いや、純血に恋愛感情だけで…」


「人間は本能的に種の繁栄に寄与せんとするものです!浮かれたパッパラパーの頭でなら、一恋愛感情からエスカレートするに違いありません!」


「それ偏見…」


「そ、そもそも性交渉は愛情の極点であるべきです!そんな享楽的な行為の一環とするなんてのは、人間だけの悪癖ですよ!」


「誰に訴えてるんだい…」


「いいですか?!犬前さんは認識が甘いです!そもそもですね……」


後日、柏谷君は告白に成功し、学内にまたひとつカップルが誕生することになった。我々の回答は、誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。この一言だ。ちなみに、これは「よく分んないから、それっぽいこと書いとけばいい」という部長の案である。柏谷君曰く、この言葉で覚悟が決まったらしい。今朝、返礼として、部に大量の菓子折りが届いていた。なんだか、言い知れぬ罪悪感に駆られたが、まぁ、終わりよければ全て良し。おめでとう、柏谷君。そして末永く爆ぜろ。

ボッサードの法則は、物理的距離に比例して、心理的距離も近くなる。って法則です。※ただしイケメンに限る

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