表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不合格生の人生哲学  作者: らむね
6/9

5話「間違いとは」

試験的にタイトル入れてみました。

〜〜



「一馬君どうでしたか?」


「いや、どうって何ですかアレ」


猿梨先輩はニコニコと質問してくるが、どうだった?と聞かれても何もかもが唐突過ぎるし、ツッコミ要素が多過ぎて反応に困る。強いて言うなら、仁井が饒舌になったときは、多重人格者なのかと本気で疑った程度である。いや、人を本気で多重人格かと心配するとか、普通は人生に一度あるかの珍事だ。危ない。既に思考が毒されつつある。


「ま、普通そーなるよね」


「逆に満点の回答はなんですか?」


「すげぇ!俺もやってみてぇ!とかかな。それじゃあ、敗者の沙也加ちゃんは斎藤君に、ウチのルールを説明して下さい!」


「僕は、いよいよ部長の人間像が分からなくなってきましたよ」


「敗北者早く説明」


「敗北者…?」


「長くなるんで、取り消して下さい」


仮に十分な説明されても、理解できる気がしないことは口に出さないでおこう。


「それじゃあ、説明させてもらうけど、その前に一つ。君は哲学を何だと思ってる?」


その目は真剣だった。


「曖昧な回答になるけど、その人にとっての生きていく理由だとか、矜恃だとかを突き詰めた学問かなと」


「うわっ。痛っ」


「斎藤君。いい趣味してるね!」


「あぁ。鬱だ。死のう」


「あ、それ私の決まり文句です!」


「先輩メタい」


真面目に回答した結果がこれだ。穴があったら入りたい。いや、縄があったら首括りたい。こっちの方が状況的には、合っているのかもしれない。まぁ、どちらにせよ、恥死しそうだということに変わりはないのだが。


「あはは。半分は冗談だよ」


「もう半分は何なんですかね…」


「まぁまぁ。尖ってないってないと哲学者は務まりませんし」


「いや、別に哲学者に成りたいって訳じゃないですから」


「さて、さっきの質問。哲学とは何か、だけどね。正解は【そんなものに答えはない】なんだ」


「もう、哲学って学問自体が、胡散臭い気がしてきたんだが」


「妥当な反応だね。でも、そんなインチキ臭くて、不明瞭な学問であるからこその利点もあったりするのさ」


「お前さ。実は哲学嫌いだったりするだろ?」


「いやいや。僕は大好きだよ?哲学」


「否定しておいて、どの口が言うんだ」


「この口だね。それに僕は清濁併せ呑めとて、信者ではないのさ。哲学がインチキ臭くて、不明瞭なのは事実なんだから、それはハッキリそう言うよ」


「単なるネガキャンじゃないんだな」


「7割程はね。さて、続きだ。続き。哲学とは何か。さっき僕は、そんなものに答えはない。そう答えたね」


「あぁ。そうだったな。それがどうかしたのか?」


「ここで一つ問題だ。一体、答えのない学問の向かう場所はどこなんだい?」


「いや、何処もなにも、答えが終着なんだから、それがないなら彷徨うしかないじゃないか」


「そう。その通りだよ。答えがないから、彷徨い続ける。つまりそれは、どんな時代の、どんな形態のものであれ、哲学であるなら、等しく【間違いではない】この事実の裏付けなんだ」


「それは、流石に論理の飛躍だろ。必ず間違いじゃないなんて、どうして言い切れるんだ」


「なら問おう。正解が分からない学問に於いて、誰が間違ってることを証明出来るんだい?」


「それは…っ…」


「ヘンペルのカラス的な話だよ。そんな証明は、誰にも出来やしない」


「いいや。いるさっ!ここにひとりな!!」


「そしてそれが、ここでのルールでもある」


「こ、こいつ無視しやがった…」


「いいかい。哲学に間違いはないんだ。だからこそ、他人の意見を【否定する】ことは御法度中の御法度。もし、しても見ろ。お前は死ぬより辛い目に合う」


「死ぬより辛いって、なんだよそれ…」


「まぁ、そのうち分かるだろうさ」


「なんかその発言、ババアっぽ…」


「何か言ったか?」


「決してババアっぽい。等とは言っておりませ…ハッ?!」


「残念だったな、トリックだよ」


「てめぇ、なんて怖く…ちょっと、どこから、その鉄パイプ持ってきたの?」


「フッ。いい台詞だ。感動的だな。涙ものだな。だが、無意味だ」


「冷酷!無慈悲!冷血漢!」


「何とでも言うがいい。ただし、僕は女だ」


「男装してるじゃないか」


「だが、女だ」


「髪も短いし」


「だが、女だ」


「む、胸もないし」


「だが、女…〇すぞ」


「仕方ないだろ、カンペ、カンペを読んだだけなんだ!」


「カンペで許されたら、警察は要らないんだよ!」


いや。そもそも、カンペで許されるって何だよ。とツッコミ前に、拳が飛んできて、そこで意識は途切れたしまった。後日談だが。それは、それは見事なラビットパンチだったそうな。鉄パイプを使って殴られなかったのは、彼女のひと握りの優しさなんだろうか。いや、意識不明はニュースで報道されるレベルの重体であることを考慮すれば、間違いなく犯罪者予備軍だろう。彼女の将来に一抹の不安を抱いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ