2話
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「えっと、哲学…?」
「そう。哲学研究会!」
一馬は後悔した。必ず、この邪智暴虐の自己啓発セミナーから脱却せねばならぬと決意した。
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母曰く、「幸運を呼び寄せる魔法ノ壺」的なものを買わされそうになるイベントが人生に一度は起こるらしい。きっかけは、友人から、同僚からと、顔見知りからが多いらしいが、ふと、街中で声をかけられる場合も少なからずあるそうだ。今回のケースを分類するのなら、それは後者ではあるが、流石に高校の部活動勧誘で壺はねーよ。と脳内で、ツッコミが行われたのは、僕が常識人であることの証明に違いない。しかし、哲学研究会とかいう、いかにも怪しいものに現在進行形で勧誘されているのだから、郷に入っては郷に従えの法則的に、僕が間違っていることになる。「現実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものだ。ちなみに、そんな現実の僕といえば、絶賛挙動不審である。隣の美少女のおかげも相まって、制服じゃなかったら御用改められていたことだろう。改めて、コミュ障が憎い
「哲学部ってどんなことするんですか?」
「百聞は一見にしかず。ってね」
うるさい脳内に比べて、通夜の様相を呈してきた沈黙に、どうにか、気の利いた質問でもしようと脳を巡らした結果がこれである。悩んだ末の原点回帰という体のいい言い訳を今日ばかりは、ありがたく思う。さて、今回の僕の反省点は間違いなくここだ。なまじ緊張した状態で質問なんてするから、明らかにはぐらかされていることに気付かず、呑気にも、あざと過ぎるジェスチャーに悩殺されるのである。もう、それ以降は何も覚えていない。まぁきっと、鼻の下を伸ばしていたに違いないのだが、性犯罪者にしか見えない絵面をわざわざ想像したくもないので、辞めておくこととする。僕はこの日の教訓として、「大人になっても、キャバクラには行かない」ことを誓った。こんなに自分がチョロいとは…。人の優しに疎いボッチの悲しい性である。よくも、僕の純情を弄んでくれたな。等とツッコム勇気を持ち合わせていないのは言うまでもないだろう。
「おー。5人揃ったね」
「えぇ。これで存続できます!」
「初対面の人が怖い。鬱だ。死のう」
「活動始まった…ダルい…」
「いや、まだ入るとも言ってないですけど」
「もう、入部届けなら提出しておきました!」
「え」
記憶があるのはここからである。部室に入って、軽い説明を受けていたら、鞄から学生書を抜かれて入部届けを記入、提出されていた。何を言ってるかわかんねーと思うが。というやつである。もっとも、この場合は、催眠術でも超スピードでも恐ろしいものの片鱗でもなく、個人情報保護法を無視する非常識な訳だが、それは一先ず置いておくとしよう。
この後は、壺は買わされなかったが、新歓と称してジュースを奢らされた。歓迎される側がお金を出すシステムは如何なものかと思うが、壺よりも安上がりで済んだのだから、良しとしておくべきだろう。