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第一回『発端』

自分自身に関するエッセイ部分には、事実に基づくものもありますが、それ以外は、すべて架空であり、実際の人物や出来事とは何の関係もありません。

 自宅に戻ったぼくは、再び『うつ』の中に沈み込んでいた。

 しかし、あれが本当に現実で、モーツアルトがぼくが用意していた毒薬を誤って食べてしまったことにより亡くなったのだとしたら、『うつ』にならないほうがおかしいだろう。

 ヘレナは、ずいぶん罪作りな女だということになる。

 それも、並大抵な意味ではない。

 


 まだ暑い日が続いていた。ぼくの『書斎』・・・といっても小学生時代からの勉強部屋なのだが・・・にはエアコンがない。

 あったこともあるのだが、結婚後両親と別居していたこともあり、取り外したままになってしまっていた。

 西日が直撃することから、夏場の夕方は焦熱地獄状態に陥る。

 真夜中になると、多少はましになってくるから、活動可能なのはこれから翌日の午前中までである。


 ぼくは窓を大きく開けて網戸にした。

 これで万全かといえば、そうでもない。

 網目の中には、少し緩くなってしまった部分もあり、『蚊さん』は、そこを狙って突入を試みるのだ。

 中には成功する強者も出てくるのである。

 けれども、こちらもそれで「おそれいりました」とは言わない。電気式蚊取機が待っているのだ。それでも立ち向かってくるようならば、強力スプレーをお見舞いする。

 実力行使に出る場合もありうるが、これはなかなか狙いが定まらず成功しないことが多い。

 まあ、蚊さんとか蛾さんが侵入してくることは、まだ想定しているわけだけれども、人間さまが飛び込んでくることは、ふつうあまり想定していないのではないだろうか。

 その晩は、まさに想定外の事件が起こったのである。


 もう、深夜1時を回ったとき、ぼくがもう、かなりぼーっとなっていた頃だった。

 突然、目の前に真っ黒なものが現れた。

「おわっ!」

 ぼくは叫んだ。

 そいつは、真夏だというのに、怪しい真っ黒なマントを羽織り、顔には西洋のお祭りの時のお面を被っていた。

 ピエロのような、そうではないような、目が笑っているのに顔は怒っている。

 赤い縦線と、大きな星マークがお面に目いっぱい飾られている。

「君が、『や・ま・しん』、か?」

 む、ドイツ語で来た。

 ヘレナの術がまだ効いているらしい。

「そうだが、君は誰だ。」

 そいつの頭の髪が、ぼくに対抗するようにチジれているが、ウエーブが緩くてぼくには及ばない。

「気の毒がだ、死んでもらう。天罰だ。」

「は?」

 と、いう間もなく、男は突然ライフル銃を取り出してバンと撃ち込んできた。

「わわわ!」

 ぼくは、机の後ろに入り込んだ。

 男は、いったいどこから取り出すのかわからないが、暗闇の中から次々に新しいライフル銃を引っ張り出しては、めくらめっぽうに撃ちまくる。

 おそらく滅茶苦茶に撃っていて、ほとんど訓練はしていないような感じだ。

「逃げるな。潔く撃たれろ!」

「そんな無茶な。」

 ぼくはとっさに、手元にあった工作用のペンチを投げつけた。

「いて!こいつ。」

 男が一瞬びっくりして銃を取り落としかけたとき、ぼくは次に、古いパソコンのモニターを放り投げた。

「うわ、こいつめ。」

 電気コードがうまい具合にからみついたようだ。

 さすがに近所がざわついてきた。

 向こうからパトカーの音が聞こえる。

「警察が来た!」

「む、やっかいな。ここまで追って来るか。またな、次回は覚悟しろ。」

 男は窓から飛び出すと、すっと消えてしまった。

 いやあな香りが部屋の中に広がっていた。


  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「わたくし、警視省千葉分局の刑事で『津田沼田 白旗』と申します。こちらは相棒です。」

 かっこのいい女性刑事が応じた。

「わたしは、『御弓ヶ池 曽我子』と言います。」

「はあ、いかにも千葉千葉していますねえ。」

「ええ、スーパー千葉ペアと呼ばれております。」

「はあ・・・・。芸名ですか?」

「いえいえ、とんでもない。本名ですよ。」

「信じがたいですね。」

「まあ、事実は真実ですから。」

「はい。それはまあ、失礼しました。」

「ときに。はでにやられましたなあ。相手に心当たりは?」

「まったくありません。」

「特徴を教えてください。」

「お面を被っていたので、顔はわかりません。身長はおそらく165センチより小さいくらいでしょうね。小男で、ずんぐり。小さなたるみたいでした。といって太り気味でもないようです。言葉はドイツ語。」

「ドイツ語?ですか?」

「ええ。」

「じゃ、外国人?」

「そうですねえ。多分そうでしょう。」

「海外に行かれたことは?」

「ありますが、ドイツとかオーストリアは、もう三十年以上前です。オーストラリアとニュージーランドも十五年は前ですし。」

「最近はない?」

「ええ、まったく。」

「かつて恨みを買うようなことしてませんか?」

「そんな記憶はございません。」

「ふうむ。ちょっと現場を検証しますよ。」

「ええ、どうぞ。」

 二人の刑事と、そのほか結構たくさんの警察官が、CDとレコードだらけの家の中を、ぐちゃぐちゃと調べて回った。

「弾、見つかってます。これはしかし、まあ珍しいですなあ。」

「ふうん。なんだこれは?」

「いやあ、博物館に行かないと無いような鉛の玉ですなあ。ま、持って帰ってよく調べます。」

「頼むよ。やまちゃん。」

「あの方は、やまちゃんですか。」

「ああ、あなたも、やまちゃんですなあ。職場では”やまちゃん”でしたか?」

「確かに、そうです。」

「なるほど、で、すみませんが、ちょっと署まで一緒に来んちゃってください。そのほうがお話ししやすいですし。」

「ええ、ええ、いいですよ。これじゃもう寝られませんから。ときに、あなた千葉の方ですか?」

「いえいえ、時々里言葉が混ざってしまいまして。ははは、いやあまったく、迷惑な話ですなあ。」

 ぼくは刑事さんとは別に、自分の車で警察署に向かいたかったのだが、まだ危ないかもしれないということで、パトカーに同乗させられてしまった。

 ご近所に説明するのが、また大変になるな、と思った。


 銃弾の中には、戦争での使用が確か禁止されているダムダム弾とか、着弾時に分裂するものとか、非常に危ないものがあるらしく聞いている。

 しかし、僕の部屋でぶっ放されたのは、現在は使用されない、古風な丸い球だったようだ。

 そうそう、分裂といえば、小学一年生のころだったか、算数の試験が思い出される。 

『ここに、あめだまが六こあります。半分にしたら、何個になるでしょうか?』

 という問題だった。

 正解は、まあ三個なのだが、ぼくはこう解決した。

 まず飴玉を六個、試験用紙に書いた。(書いてあったかもしれない。)

 それから、ひとつづつ真ん中に線を引いて、ばらばらに分裂させ、それから飴の数を数えたのだ。

 答えは、『12個』である。

 ほかの問題は覚えていないが、結局0点だった。

 アニメの出来の悪い主人公と同じように、ぼくは先生から返された答案の『0』の横に『10』を書き加えて、さらにおもちゃ箱の底に隠したのである。

 まあ、こういうものは、すぐに発見されるのが常だ。

 慌てた両親は、まだ白い紙は高価だったからだろう、わら半紙をたくさん買い込んで、ぼくに算数の問題を大量にやらせようとした。

 気持ちはよくわかる。ここでやらないと、大変だ、と判断するのは当然だ。

 その先どうなったかまでは覚えていないが、もしあの時、先生から、なぜこれは間違いなのかをきっちり説明してもらえたら、ぼくの算数嫌いは、違ったかもしれないと、多少は思う。

 幼稚園児のころから、ぼくは千ページ以上ある童話の本を一人で読んでいた。

ひとりっ子のぼくは、言葉の習得はとても早ったのだ。その一方で社会性はなかなか身につけにくかった。(兄は、位牌だけは残っているが会った事もない。)

 はっきりとは言えないが、説明さえしっかりしてくれたら、いかにおバカさんのぼくでも、わからないこともなかったであろう。

 こんなへそ曲がりにもならなかった可能性だって否定はできない。

 もし可能ならば、0点だけは、今からでも撤回してほしいものだ。

ただ、推測するに、授業ではそれなりに教えてくださっていたのだろう。


 で、ぼくは、警察署でいろいろ聞かれた。

 病気のことも。うつとか、強迫神経症(最近は、強迫性障害とも言うが)とか、腎臓の病気とか、耳鳴りとか、そんなことも。

 ぼくは、こうしたことが、日常生活でも、仕事上でも、何かと自分に不利に働く可能性があるのではないか、と常々気にはなっていた。

 これは、ある意味矛盾する事柄でもある。

 要は、結果的になんでもきちんとできれば、問題はない。

 けれども、確かにつまらないことだと自分で思う事柄で、実際引っかかってしまうことはある。

 例えば、道路上で何か小さな石を踏んだりした場合、いつもではないが、気になりだしたら、もういてもたってもいられなくなることがある。

 その犯人が何なのか、確認するために何度もそのあたりをぐるぐると巡ることになってしまう。

 昼間は簡単だ。

 しかし、夜だとか、高速道路上だと、結構大変なことになる。

 なにしろ、回っているうちにほかの石とかを、また踏んでしまうことも多いからである。

 深みにはまると、家に帰れなくなってしまう恐れさえある。

 こうした場合、本人は、もうあほらしいことだと、分かってはいるのだ。

 にもかかわらず、一方では必死に心配もしている。

 そこが理屈通り行かないから、困ってしまうのだ。

 おまけに、周囲の誰かがじっと見ていて、怪しいやつがいると思われている(ふつうそんな暇な人は、なかなかいないだろうが)に違いない、とか感じ始めると、これがまたやっかいなのである。

 どこかで、自分にけりがつかないと、永遠に終わらない。

 と言って、永遠に終わらなかったことはないけれども。


 幸いというか、銃撃の時は、ものすごい音がしたので、ぼくの妄想ではないことは明らかである。

 自宅はくまなく捜索されたが、銃など出てくるはずもなかった。

 出てくるのは、LPレコードとCDと、ラジオと『ごみ』ばかりだ。

 でも、弾丸は存在していた。まあ、博物館から持ち出したような文字通りの玉だが。

「いやあ、鑑識さんが言うには、確認はこれからだけれど、18世紀ごろに使われたライフルなら、あんな感じになるよなあ、とか・・・ですなあ。どこかの収集家が、からまっているかもしれませんなあ。」

 警察署で、津田沼田刑事が言った。

 一方で、もう一つ刑事さん二人が不思議がっていたことがある。

 侵入者の足跡が残されていたのだ。

 部屋の中と、スレートの屋根の上に。

 ところが、屋根の上の足跡は、右足の一歩だけで、次は、もうなかったのだ。

 その下の地面の上にも、なにも見つからなかった。

 犯人は、空中で消えたのであった。

 こんなおかしなことが可能なのは、もうヘレナしかいないだろう。

 ぼくは、電話をかけた。


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内容的に、書き続けるには問題点があり、当面このお話しを継続することは、中止することにいたしました。どうか、お許しください。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・作者























 


 






























































 








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