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キケサバシリーズ

魔界裁判所にて――

作者: 楠木 翡翠

【作者より】

拙作は『キケサバシリーズ』(https://ncode.syosetu.com/s8255d/)の外伝です。


この作品は本編より少し前のお話です。

正規主人公であるヴィンセントは出てきません。

また、正規ヒロインで相互判定員であるイルザは本編では探偵(インケスタ)ですが、この作品では裁判官(ジャッジ)と設定していますので、あらかじめご了承ください。

 ここはとある魔界裁判所。


 そこに勤めている者達は全員、裁判官(ジャッジ)または探偵(インケスタ)の資格を持っている。

 また、それらの両方の資格を持つ相互判定員も存在している。


 そんな大人が多い中、黒のワンピースを身にまとい、黒髪のツインテール、その上に小さな魔女の帽子をちょこんと乗せている少女がその裁判所内の廊下をバタバタと駆けずり回っていた。

 そのあとを追って黒髪で背広姿の青年が息を切らせながら駆けつける。

 そんな彼らを周囲は物珍しそうな視線で眺めていた。


「早く、早く!」

「キール……速いよ……」

「アルビノさん、ここです!」


 アルビノと呼ばれた青年は「やっと着いた……」と下を向き、息を整えている。

 キールと呼ばれた少女が人差し指である部屋を指差した。


「ギクッ……よりによって、ちょっと前の相棒(パートナー)のところ……」


 彼が顔を上げた途端に少し表情を引きつらせた。


「アルビノさんはイルザさんのことが嫌いなんですか?」

「嫌いというか……僕は彼女が苦手なんだよ……」

「なら、この機会にっ!」


 彼女はその部屋の扉をノックする。

 扉の向こう側から「ハイ」と返事があったため、遠慮容赦なく乗り込んだ。


「「Trick or treat!」」


 元気いっぱいの少女とその少女のノリを合わせた男性の声がその部屋に響き渡る。

 部屋にいた男女がその声に驚き、扉の方を向いた。


「なんだなんだ!? って、イルザ裁判官(さいばんかん)!?」

(やかま)しいではないか!」


 青年の方はアルビノと同様に黒髪で背広姿。

 一方の女性はダークブラウンのストレートヘアの髪を持ち、左目には眼帯をしており、胸元が見えるくらい開けられたYシャツにゆったりと縛られたリボンをし、パンツ姿である。


「イルザさん、お菓子ください♡」

「そんなもの、持っているわけがないだろう?」


 キールはイルザと呼ばれた女性にお菓子を要求するが、残念ながら彼女はそれを持っていないようだった。


「ならば、イルザさんに悪戯(いたずら)しちゃいますよー!」

「ふ、ふざけるな! あ、あはは……く、くすぐったい……」


 彼女はイルザの脇腹や背中をくすぐった。

 キールにとっての悪戯はコレしか方法がない。

 すると、彼女の相棒から「イルザ裁判官は人気ありますねー」と遠い目でその光景を眺めていた。


「貴様、冷やかしにも程がある!」


 イルザはその相棒の右頬に軽く平手打ちし、彼は「痛てー……」と言いながら頬を撫でている。


「ところで話は変わるが、二人揃って何している?」


 彼女はキールの洋服を見、アルビノ達に問いかけた。


「いやー、今日はハロウィーンですよ?」

「そうですよ。今日はイルザさんも楽しまなきゃですよ!」

「僕の相棒のキールみたいにコスプレしなきゃ」


 彼らはそんなイルザにからかい半分で答え、彼女は部屋にかけられているカレンダーは「10月31日」と書いてある。


「その日がハロウィーンであることくらいは私も知っている!」

「知っているならば、こちらの服に着替えてください♡」

「相棒さんももしよろしかったらどうぞ」


 キール達がイルザ達にいつ準備したのか分からないが、謎の大きな紙袋を手渡した。


「「ど、どうも……」」

「……なっ……み、見なかったことにしてもいいか?」

「イ、イルザ裁判官、一応着替えてこようか……あの二人は本気(マジ)だよ……?」

「そ、そうだな……」


 彼女らが別室で着替えている間、彼らはドキドキしながら待っている。


「イルザさん達がどうなるかワクワクしますね」

「そうだねー」



 †



 彼女らを待ち始めて数分後……。

 イルザは「は、恥ずかしい……」と言いながら別室から戻ってきた。


 イルザはメイドに、彼女の相棒は執事にコスプレしている。


「イルザ裁判官、か、可愛い……」

「イルザさん、可愛いですよ! 相棒さんも格好いいです!」

「僕もそう思います!」

「そ、それはどうも……」

「アルビノさんもコスプレすればよかったじゃないですか?」

「僕は準備できなかったから……」

「じゃあ、みなさんでこの裁判所内を回ってお菓子をもらいに行きましょう!」


 キールが張り切って彼女らの部屋を出ようとしたが――――。


「……アーティー探偵……?」

「ハ、ハイ? イルザさん、なんでしょう?」


 未だに恥ずかしがっているイルザがその行く手を阻んだ。


「いくらなんでも仕事中だ!」

「確かに、それは言えてる。仕事が終わったらやるのは分かるんだけどねー」

「「す、すみませーん!」」


 二人に注意され、キール達は彼女らの部屋を出て行ったのであった。

最後までご覧いただきありがとうございました。


2016/10/30 本投稿

2022/02/20 前書き欄修正

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