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ドワーヴン・ウォーリア ユーノ

「ぷは~。お酒が美味しいのです!」


 俺とアリサの目の前には空になった数多の皿と、エールのジョッキをあおるドワーフっ娘がいる。ここにいるのは糸玉の中にいたドワーフの生き残りの一人だ。いや、正確には息があった生き残りは彼女だけだったのだけれども。見たところ彼女は戦士。今は己の体よりも大きな戦斧(バトルアックス)を手にし、大振りな丸楯(ラウンドシールド)を担いでいる。


「その意気や良し! そう言うことでしたらこのユーノに任せるのです! 魔王でも何でもバッチ来いです!」


 ドワーフっ娘の金髪ツインテールが大きく揺れた。赤い板金鎧(プレートメイル)を着込んだ小柄なドワーフ娘が胸を張ってみせたのだ。だが悲しいかな●学生が無理して背伸びしているように見えなくも無い。はぁ……どうしよう。

 先ほどから俺の目の前に突きつけられている冒険者カードにはユーノ、ドワーフ、女性、ウォーリアLv3とある。確かにステータスは並を少しだけ超えている。特に筋力と体力、そして精神力にはは自信がありそうだ。だけど、時々漏れ聞こえる発言が……。


「今時魔王を斃そうなんて、お腹いっぱい夢いっぱいな事を考えている大人物に出会えるとは感激なのです!」


 またまたご冗談を。酒に目が眩んで単身、大蜘蛛(ジャイアントスパイダー)に戦いを挑んだは良いが、見事に捕まり食われる寸前だったのに?


「ぜひ、このユーノを魔王討伐のパーティに加えて欲しいのです! 歓迎の料理はもうお腹いっぱい食べさせて貰ったのです!」


 どこからどう見ても、ちょっとお頭が弱そうな娘だった。俺のパーティの楯として使えるか? との問いにはYESだろう。だけど、ちょっと不安だ。試験をしてみよう。


「なぁ、ユーノ。お前がもう一度あの大蜘蛛(ジャイアントスパイダー)と戦うときにはどうする?」


 笑顔がニパッと輝いた。


「もちろん突撃あるのみなのです! ユーノの<<ウォークライ>>が()えるのです!」


 ──ぉ、おう……。では次の質問。


「前回はどうやって負けたんだ?」

「名乗りをあげて突撃する前に糸で絡められたのですあの卑怯者! 今度会ったら許さないのです!」


 俺は軽いめまいに襲われた。こいつが今まで生き残ってきた理由を知りたい。凄く知りたい。モンスターに名乗りを上げてどうする。騎士の決闘じゃないんだぞ?


「アリサ?」


 俺は同じく溜息をついていたアリサに話を振ってみた。


「ねぇユーノちゃん?」


 その言葉にユーノのツインテールが逆立った。


「自分より年下の子にちゃん付けで呼ばれる筋合いは無いのですが、アリサは可愛いので特別に許すのです!」


 アリサの目が丸くなる。そして、優しく俺に微笑んだ。


「セネシェ。パーティに壁役が居れば、セネシェはもっと魔法詠唱に時間を取る事ができるのでは? もちろん、セネシェの剣技は信頼してますけれど。最大火力と言う点ではどうでしょうか」


 ──最大火力ね。確かに俺が魔法に集中したほうが、まとめて<<火球(ファイヤーボール)>>を連続打ち出来たりも……。あと、細かい芸当も可能になる。居ないよりは居た方が……。




 ◇ ◇ ◇



 思い立ったら直ちに実施試験あるのみ! 俺達は今、街近く、森の中でのゴブリン退治に来ている。試しにその仕事を引き受けたんだ。


 枯れ枝を折る音が、いつもより一人分多い。果たしてユーノ、彼女はどのくらい使えるのか……。ある意味ワクワクのドキドキでもある。そんな仲、そして俺達はゴブリンの一団と遭遇したんだ。


「ユーノ! 右手のゴブリンどもを引き付けろ! ホブゴブリンは俺が殺る!」

「<<こっち(ウォークライ)て>>!」


赤い稲妻が先頭のゴブリンを楯で殴りつけていた。良し良し、その調子だ中々やるな、ユーノ!


「<<魔力付与(エンチャントウェポン)>>」


これは打撃強化の魔術だ。俺達三人の武器に光が宿る。仲間の武器が、ほんのりと残光を得る。


「おら、行くぞデカイの!」


 俺はホブゴブリンに切り込む。ゴブリンとは動きが違い、その上位種とは言えやはり遅い。いや、どうした事か、やはり俺には敵の動きが読めるらしい。これは後の先でも取るチート能力なのだろうか? 良く判らないが、便利だから迷うことなくその恩得に預かろう。とにかく俺は、流れに乗りつつ丸楯(ラウンドシールド)でホブゴブリンの棍棒を受け流すと脇から長剣(ロングソード)で切り上げた。悲鳴を上げるホブゴブリン。返す刀で第二撃を食らわせる。

 崩れ落ちるホブゴブリン。殺った──アリサとユーノは?

ユーノは楯で防戦、ゴブリンを三体を一手に引き付けていた。それをアリサのフレイルが一体づつ片付けていて。上手い連携だ。もちろん、俺も応援に駆け出す。

 充分合格点だ。俺とアリサは賭けに勝った。良い仲間を見つけたようだ。




 ◇ ◇ ◇



「ぷは~。今日もお酒が美味しいのです!」

「ですね」


 アリサの笑顔が光る。今、俺とアリサの目の前には空になった数多の皿と、エールのジョッキをあおる金髪ツインテールのドワーフっ娘がいる。今までとは違う、三人で囲むテーブル。それは花も実もある開けたテーブルだった。

登場人物紹介

セネシェ  Hum-N-Sam 肉体年齢15歳 男性 ソードマスターLv.3

アリサ   Hum-G-Pri 肉体年齢15歳 女性 ハイプリーステスLv.3

ユーノ   Dwa-G-Fig 年齢不詳   女性 ウォーリアLv.3

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