レベル神カリカーラ
ここは鉱山都市リルデウム。
グチョドロの体は髭のドワーフ鉱夫で溢れる公衆浴場で洗った。そう。公衆浴場。体を洗いに行ったのだが、髭を鑑賞しに行ったようなものだったのは伏せておく。本当にこの街、ドワーフが多いんだ。 そして痛んだ胸当ては修理に出してきた。ついでに剣も研ぎを頼んで来たんだ。斃したは良いがあのキャリオンクロウラー、全くの疫病神だった。せっかくの装備品が台無しに……それに鍛冶屋のドワーフ親父の見積もりだと、クエスト報酬も修理代に消えて。あーあ、これでアリサへの鎖帷子計画がまた遅れてしまった。
ま、とにかくだ。あれやこれやで腹も減り、アリサをつれて酒場に入る前にした。だがしかし、俺にはまだやっておかなければならない事がある。
「出て来いレベル神!」
しーん。
俺の叫びは虚空に消える。
あれ? おかしいな。あのダ女神が現れない。
亜空間への扉も現れなければ、怪しい煙も現れないんだ。
おいおいおい、カリカーラ!? どうしたんだよ!?
「出てきやがれレベル神カリカーラ!」
俺は再び……いや、三度叫んだね。
「出て来いこのダ女神!」
あ、今……もくもくと煙が出てきた。何だかドライアイスと言うより湯気っぽいなあれ。
そして現れるどこと無くバブリーなお姉さま。
「煩いわねぇ……誰かと思えばセネシェちゃんじゃない。女はデートの準備に時間が掛かるのよ? 少しくらい待ってくれても男の甲斐性のうちだと思うわ? 全くせっかちな男は嫌われるんだから」
「うるせぇよ」
お約束の煙と共に現れた、豹柄の怪しい布切れを身に付けたレベル神カリカーラ。この女神、最早お馴染みの顔だった。
「あーあ、そんな事口走って良いのかしらセネシェちゃん。アリサちゃんを見習いなさいなアリサちゃんを。呆れてるじゃないの。行儀良く淑やかで母性溢れる女の子なんて、今時ほんと珍しいわよ? そんな娘に愛想をつかされて逃げられたいのかしらセネシェちゃんは?」
「だからうるせぇって言ってるだろうが!」
「えーとね──」
ちょ、このダ女神……俺の言葉なんて全然聞いてないし。
「セネシェちゃんレベルアップおめでとー! 3レベルよ? 良かったわね。あら、酸でベトベトになったから3レベルなのねきっと」
親父ギャグはいらねーんだよ! このダ女神!
「それにアリサちゃん。3ベルおめでとう! あら残念、アリサちゃんはべとべとヌルヌルにはならなかったのね。……残念だったわね、セネシェちゃん?」
アリサがベトベトヌルヌル……ああ、エロいかも。……って! ダメだろうが俺の夢いっぱいな希望溢れる幻想が壊れるだろ!? アリサはお前なんかより断然良い女なんだっての! そんなアリサにあんな事やこんな事──しかもべとべとヌルヌルで──いやいや、俺は紳士だから!
「俺は紳士だからアリサにそんなマネはさせねぇ!」
「あら。あらあらあら。心にも無い強がり言っちゃって。ちょっとだけお姉さんが見せてあげましょうか? それとも、ネンネのセネシェちゃんには少し早かったかしら?」
このダ女神、いつも一言多いんだよ! それでも俺は言い返す。
「何をだよ」
「うふふ、判っているくせに。ほんと嫌らしいわね、セネシェちゃんは! じゃ、あなた達二人を邪魔したら悪いから、そろそろ私は消えるわね。二人ともバイバ~イ」
カリカーラはニヤリと笑い、現れたときと同じく煙と共に虚空に消えた。全く。あれで神族が良く勤まるな?
登場人物紹介
セネシェ Hum-N-Sam 肉体年齢15歳 男性 ソードマスターLv.3
アリサ Hum-G-Pri 肉体年齢15歳 女性 ハイプリーステスLv.3
カリカーラ Goddess 年齢不詳 女性 レベル神




