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クエスト『洞窟に巣食うゴブリンロードを斃せ!』

 鉱山近くの洞窟に、俺とアリサはやって来ていた。何でも、近頃ゴブリンの集団が住み着いて悪さを始めたらしい。困ったドワーフ鉱夫連中からの依頼だった。何だかこの前も同じような依頼を受けた気もするが、まぁ気のせいだろう。


アリサが叫ぶ。


「右、狙われてます! ゴブリンアーチャー!」


 小楯(バックラー)で矢を弾く。

飛んでくる矢の軌道すら判ると言うか、予想できる。

とんでもない強さだな俺。


「うぉおおお!」


 オレはそのまま突っ込み、ゴブリンアーチャーの喉笛を切り裂いた。返す刀で隣のゴブリンを袈裟懸けに切りおろす。赤い血が飛び、身に付けた革鎧を汚す。自分でも驚くこの俊敏さ。勝手に体が動くんだ。まさに熟練の戦士のそれだった。

 とにかく後は四匹、残るゴブリンロードとザコ三匹!


「アリサ、援護を!」

「はい! <<我に(フォース)を>>!」


 アリサの祈りはゴブリンロードの頭を激しく砕いた。<<気弾(フォース)>>の魔法だ。アリサ、見た目と反対で実は武闘派なのか? やるねぇ。今のはクリティカルヒットって奴なのだろう。ロード種とはいえゴブリン、たいした強さではないとはいえゴブリンロードの頭を一撃で砕く、か。俺もアリサにエロい事をするときは注意しないと。下手に怒らせて頭を砕かれてはたまらないからな。うん。心に決めた。……今決めた!

 さて、頼みのボスが倒れて戦意喪失、逃げ出すものも出てきたが……誰が逃がすかよ。みんな(まと)めて経験値になれ!


「葬送だ。<<魔力矢(マジックミサイル)>>」


 虚空から現れ出た三本の光の矢は、逃げ出した三体のゴブリンに命中、二体は胴体、もう一体は足に命中してくれた。絶対命中の保障されたホーミングミサイル。それがこの<<魔力矢(マジックミサイル)>>だ。


「悪いな、コレで終わりだ」


 俺は脚を抑えて何やら喚いているその一体に止めを刺す。他の息のある奴にも止めを刺して回る。

誰だって、当然ゴブリンだって生きたいんだ。気持ちは判るが容赦はしない。みんな纏めて経験値になれ。大切な事だから二回繰り返して言いました。


「ゴブリンにゴブリン。この世界はゴブリンだらけなのか? コイツら、本当に多いのな」

「この地域ではオークやコボルドの目撃例もあると聞きました」

「そうだったな。アリサ。さっきはありがとう。助かった。戦利品を回収してくれないか?」

「はい。セネシェ、それよりお怪我は?」


 もちろん怪我はないが、アリサはいつも俺の心配してくれる。良く出来たやつだ。……しかも可愛いし。今も小首をかしげて長い黒髪を揺らし、オレの状態を見てくれていた。


「怪我はないよ。大丈夫だ」

「良かった」


 アリサと視線が絡み合う。アリサはそっと目を伏せ俯いた。




 ◇ ◇ ◇




 今回の戦利品はなんと言ってもゴブリンロードが持っていた丸楯(ラウンドシールド)だろう。コレはオレが貰っておく事にした。他の錆びた短剣やらなにやらは鉄屑屋に売り払い、全て金に換えておく。


「順調ですね」

「そうだな。レベル神の奴も良い顔して迎えてくれたしな?」

「はい、セネシェ」


 バブリーなダ女神レベル神カリカーラはレベルアップを告げてくれた。当然だ。残り1ポイントでレベルアップだったのだから。とにかくコレで俺とアリサのレベルが2になった。チートな俺達の強さではまだまだいけると思うが、油断は大敵。序盤は無理して強い敵と戦う必要はないんだ。無理したら死ぬ。ここで死んではあの爺様の努力にも悪い。それに可愛いアリサやこの素晴らしい世界ともおさらばなのだから。ぇ? 元の世界? 今さらあんなブラックな会社で働くかよバカらしい。それこそ冗談きついんだっての。

 熟練度の上がりも上々、またもあの受付嬢を驚かせることになった。だけど、スキルの獲得はまだ待っておく。もう少しじっくり実力を確かめてからでも遅くはないのだから。

 ただ、金は稼いでアリサの防具を買ってやりたい。鎖帷子(チェインメイル)あたりが欲しいのだけど。

 そう、アリサなら何を着せても似合いそうなんだよな……。




 ◇ ◇ ◇




 その晩、酒場での話だ。


「最近いきがっているセネシェって奴はアンタかい? ようお嬢ちゃん。可愛い顔してるね。うちのパーティに入らないか?」

「人のツレをナンパしてんじゃねぇよ!」


 この男、酒場で良く見るヒューマンのこの男。その盗賊めいたこの男はムカつく事に俺の大事なアリサに声をかけやがった。許せん。何より飯が不味くなる。妙齢の綺麗どころの女性ならともかく、どうしこの俺がこんな男と言葉を交わさなくてはいけないのか。


「あ? 新人さんよ、せっかくこうして先輩の俺が話しかけてやってるのに、詰まらない事いってるんじゃ───」


 聞くに堪えない。


 ──ベキ。


 体のほうが先に動いていた。ああ、手が痛い。俺はたった今男の顔面を殴りつけてやったところだ。


「テメェ!」

「男が俺に話しかけるんじゃねぇ! それにアリサは俺の女だ! 変な粉かけてるんじゃねぇぞ!?」

「黙れこのヒヨッ子が!」


 ああ、男の怒りの拳の軌跡が見える。実にスロー。難なく交わし、俺は膝を男の腹に叩き込む。『く』の字に曲がった男の後頭部へ握り締めた両の拳を一発。あっけなく男は床に沈んだ。

 この男、俺よりレベルは数段と上のはずなのにと、ふと疑念が残る。ザコは幾らレベルを上げてもザコのまま──すなわち、俺のチートスキルがこの男の努力と才能を上回ったのだろう。才能のない者がいくら努力してレベルを上げても、才能あるものには超えられない──それがこの世界の摂理のようだった。


 召喚師の爺様の言葉が蘇る。

『お主は最強の可能性を秘めておる。お主でなくては魔王を倒せぬ! 是非その力で我らを救って欲しいのじゃ!』

 ──きっと、そう言うことなのだろう。俺の素質。それにあの爺様は世界を賭けたんだ。


 ああ、チートって素晴らしい!


「だ、大丈夫ですか」


 俺がそういった考察を終えた頃、食事も程ほどにアリサが男に<<小治癒(キュア)>>を施していた。そして恨みがましく俺を見る。……そんな……俺はアリサ、君を男の魔の手から救ってあげたのに。


「ここまでしなくても良かったと思います! 勝負は最初から見えてました! セネシェさんはもっと優しい人だと思ってましたのに!」


 アリサから詰られて、ちょっと凹む俺。

 アリサは暴力沙汰が嫌いなようだ。覚えておこう……。


 ──でもアリサ。そんな君はマジ天使……。

登場人物紹介

セネシェ  Hum-N-Sam 肉体年齢15歳 男性 ソードマスターLv.2

アリサ   Hum-G-Pri 肉体年齢15歳 女性 ハイプリーステスLv.2

爺様    Hum-N-Mag 享年85歳   男性 故人 ウォーロックLv.不明

カリカーラ Goddess 年齢不詳   女性 バブリーなダ女神。レベル神

盗賊風の男 Hum-E-Thi 年齢不詳   男性 見知らぬ冒険者(盗賊)

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