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始まりの街、鉱山都市リルデウム

 俺は黒髪ロングの神官アリサを侍らせて、何の感慨も無く街の門を潜った。目に入るのは、三つ編み、ツインテール、ゼブラと蒼々たる髭髭髭。しかも酔っ払った髭オヤジしか目に入らねぇ……。


「ここは鉱山都市リルデウム。辺境の街です。近くの銅山から産出される銅と、交易により多少賑わっている中規模都市……ですね」

「え? なんだってアリサ? 」

「いえ、独り言です」


 髭顔ドワーフを良く見かける。鉱山と酒をこよなく愛する憎めない種族。それがビヤ樽ドワーフ小人達だ。この街には銅山があるため、自然とドワーフを良く見かけるのだろう。

 まぁ、日の入りにはまだ早いものの、俺達がやってきたのは冒険者協会リルデウム支部。もとい、ただの酒場兼宿屋だ。そう。俺達は戦利品の処理と、飯を食いにここに来た。


 えっと、その前に。


「出て来いレベル神!」


俺は力の限り叫んだね。


「あーらご挨拶ね『あ』ちゃん。このカリカーラ様に何か御用かしら」


煙と共に亜空間から突如現れ出たのは出てきたのはボンキュッボンで豹柄の危ない布切れを羽織ったねぇちゃんだ。バブル。そう、昭和の匂いがする。派手な扇を持ったこの女はカリカーラ。なんと人間を導く『女神』だ。大きくはだけた胸の先が見えそうで……見えない。実にあざとい!


「オレの名前は『あ』じゃねぇよ。爺様から『セネシェ』と名乗れと名前を貰った」

「そうだったわね、二万六千五百飛んで二人目の勇者候補の『あ』ちゃん」


 そう。あの爺様は召喚術師(ウォーロック)で、勇者を求めて二万六千……なんだっけ、とにかくその数の召喚儀式を行なったらしい。そりゃ成就と一緒に成仏するわな。老体にはさぞ苦行だった事だろう。


「『セネシェ』だ」

「わかってるわよセネシェちゃん。お姉さん、少し遊んであげただけじゃないの。それにしても不思議ね。前世の名前を使わないなんて」

「あのなぁ……」


 目のやり場に困るしなを今も作っているコイツの戯言に付き合っている暇は無い。俺はさっさと要件を済ませることにする。


「えーと、セネシェちゃんはそうねぇ、後1ポイントの経験が必要ね。アリサちゃんも同じく1ポイント次のレベルには足りないわ。次回のお楽しみ、ね?」


 俺は紳士なので今すぐその辺の町人を惨殺して一ポイント加点したい欲求に襲われたが我慢することにした。


「えっと、熟練度が溜まっているわね。冒険者協会にでも行ってスキルを所得する事をお勧めするわ。じゃあね、ボウヤ?」

「うるせぇよ。用が済んだらとっとと消えろ」

「釣れないわねぇ……でもそんなツンツンしたところ、お姉さんは好きよ?」


ダ女神は現れたときと同じく、ウインクを残して亜空間に消えた。


「セネシェ。後1ポイント……」


わかる。わかるよアリサ。かく言う俺もその気持ちは良くわかる。だけど犯罪者の赤ネームだけは御免(ごめん)なんだ。


「まぁまぁ、次の楽しみに取っておこうぜ。魔王討伐の旅は始まったばかりだ」

「……そうですか。でもありがとうございます。セネシェの冗談を聞いていると私、疲れも不安も薄れます。本当にありがとう。あなたが仲間で良かった」


 ──そうボソボソと口にするアリサの横顔。来るね、これは来る。実にグッドだ。俺好みでいい感じの仕上がりと言えた。これでもう少しデレさせることが出来れば……ま、それはダ女神の言葉じゃないけれど、後日のお楽しみとしておこう。




ん、で。

俺達は冒険者協会の扉を潜る。




「じゃあお二人とも、冒険者カードを見せてくれま──」


受付嬢たるロリっ娘ドワーフのねぇちゃんはそこで固まった。

ん? 俺達は爺さんから貰ったカードを見せただけだぞ?


「何ですかこのありえないステータスは! この熟練度の伸びもありえません、ありえませんよ! あなたセネシェさん、ズルしたでしょう、ズル! それとも、レベル神様に賄賂を贈ったとか脅したとか……ちょっと、聞いてますセネシェさん! あ、ええとアリサさんもお話し聞いてありますよね!? あなたがた、冒険者協会を舐めてませんか!?」


 受付嬢のロリっ娘ドワーフが喚く喚く。仕舞いには髭の上司を呼びつけヒソヒソ話を始めて……やれ隠れステータスだの、隠しレアスキルだの……。だが、その受付嬢のロリっ娘ドワーフはやがてがっくりと肩を落として受付カウンターに戻って来た。

 これはゴブリン退治の報酬を受け取りにカードを提出した後に起こった騒ぎだった。なんでも、俺達の筋力体力時の運……その他ステータスが群を抜いて高かったらしい。何だよそれ、と思わなくも無いのだが。


 ついでにそのカード、俺のはファイターとソーサラーのスキルが光っている。アリサのカードでもファイターとプリーストが光っていた。熟練度が溜まってランクアップと言う事らしい。何でも、新しいスキルを習得可能だとか何とか。

 今も俺達に応対してくれているのは先ほどの喧しいロリっ娘だ。熟練度が~などと喚いていたはずのロリっ娘だが、流石に大声を出し過ぎては疲れ、少し落ち着いたらしいロリっ娘だった。


 実にお仕事ご苦労様です。


 爺様の話を思い出す。あの白髪よぼよぼの爺様の話を──お主は最強の可能性を秘めておる。お主でなくては魔王を倒せぬ! 是非その力で我らを救って欲しいのじゃ!──確かあの爺様、そんな事を言っていた。死しんだオレの魂を一本釣りで釣り上げたらしいのだが、調子に乗ってアリサの魂も釣り上げたことで(つい)に力尽きたらしい。年寄りの冷や水とはよく言ったものだ。

 らしい、と言うのは俺達を召喚したのを最後に、その爺様が力尽きて間も無く天に召されたから。だから俺、結局『魔王を斃してくれ』以外の詳しい話を一切聞けていないんだ。


 だけど、俺にもなんとなくわかる。

こんなエセRPG風の異世界に釣り上げられたのだということが。これが前世で中二病をこじらせた結果だとは思いたくも無い現実だが、認めるほかは無い。


 ──ん? と言う事は……この可愛いアリサも中二病!?


登場人物紹介

セネシェ  Hum-N-Sam 肉体年齢15歳 男性 ソードマスターLv.1

アリサ   Hum-G-Pri 肉体年齢15歳 女性 ハイプリーステスLv.1

爺様    Hum-N-Mag 享年85歳   男性 故人 ウォーロックLv.不明

カリカーラ Goddess 年齢不詳   女性 レベル神

ロリっ娘  Dwa-?-?  年齢不詳   女性 冒険者協会の受付嬢

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