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港湾都市 王都カッシャーム

 二日後。俺達ののんびりとした旅も一区切りだ。俺達三人は王都カッシャームの門を潜っていた。この街のことを知るユーノによると、門の名は赤銅門。北の鉱山都市リルデウムから精錬後の銅が運ばれてくることから付いた名前らしい。(いち)の立つ商業地区の向こう、大聖堂と呼ばれている青い屋根の向こうには大きな城、おそらくは王城が見える。数多くの尖塔が天を突いて(そび)える、荘々たる街並みだ。


「凄い人の数だな」


俺はつい言葉を漏らす。


人間(ヒューマン)で溢れてるのです!」


と、元気にユーノ。赤い板金鎧(プレートメイル)がガチャガチャと鳴っている。


「他の種族の方もちらほらと見えますね。さすが王都と呼ばれるだけはあります。賑わいが違いますね」


とはアリサの評。今日も黒髪が映えていた。


「そうだな」


 同じ賑わいでも、右も左も髭髭髭の光景が懐かしい。

とりあえず俺達が向うのは冒険者ギルド。ここ王都カッシャームのことを色々と教えてくれるはずだ。

 広場に隣接した大きな白い建物。それがこの街の冒険者ギルドだった。




 ◇ ◇ ◇




「えーと、セネシェさんたち三人は魔王討伐……まおーとうばつぅ!? 冗談でしょ?」


 失礼な。受付嬢の言葉が裏返る。ちなみにこの子は人間(ヒューマン)だ。


「夢は大きく、志もでっかくって奴だ。あまり気にしないでくれ」


そ。

俺は大人だから(体はチビでも心は大人!)、軽く受け流す事にした。


「しかし、いくらなんでも三人組みでは厳しいと思います。特に、盗賊技能を扱える方がおられないのは致命的ですね」


 受付嬢の眼が泳ぐ。まともに取り合ってもらえていないようだった。まぁ、それは俺が思っていたことでもある。罠の解除や斥候(せっこう)など、全部魔法頼みの現状だし?


「ああ、世界平和に貢献したいとのことでしたら、ちょうど妖魔討伐の依頼があるんです。受けられてはいかがでしょうか?」


 完璧に作り笑顔と判るそれでニコニコと差し出されるその羊皮紙。それに目を通した俺は──。ぇ? 俺は文字ぐらい読めるって!




 ◇ ◇ ◇




 城壁の外、森の手前に奴らは居た。森の近くの街道沿い。こんな街の近くにまでオーガやゴブリンが出現するのも魔王の存在ゆえなのだろうか。俺とアリサを拾い上げてくれた爺様に託された世界。「この世界を救ってくれ」。それがあの爺様の願いだった。義理は必ず果たして見せるぜ爺様!

 とにかくアレだ。あの巨人、人食い(オーガ)が今日の敵だ。ゴブリンを連れている。おそらく奴隷兼食料としてだろう。何の事はない。いつもどこでも食うか食われるか。俺達はいつもと同じ事をやるだけだ。


「取り合えず<<火球(ファイヤーボール)>>! 食らってろオーガ!」


 <<火球(ファイヤーボール)>>が炸裂した。オーガを中心に集団を形成していたゴブリンどもが宙に舞い上がる。


「セネシェ、結局はこうなるのですね?」

「ごめんアリサ。受付嬢のねーちゃんの言うとおりだ。この街でも仲間を募ろう。それまでは討伐仕事中心になる」

「はい」


 アリサの返事。アリサはどこまでも優しかった。


「セネシェ、がんばるのです! オーガごときに遅れを取っていては、魔王は遠いのです!」

「そうだな。ユーノは取り巻きのゴブリンを頼む」

「了解なのです!」


 ユーノにも素直に謝る俺。


「オーガは俺が殺る」

「今は耐えましょう。千里の道も一歩からですよ」

「残りのゴブリンなら任せるのです!」


 炸裂音を合図に三人で突撃する。

 オーガが簡単な図形を宙に描き出す。まさかの魔法!? オーガが魔法!? 冗談だろ!?


「魔法が来るぞ、全員耐(たい)ショック!」

「セネシェ、あなたに来ます!!」


 アリサの言うとおりだ。続いた光の矢に、俺の丸楯(ラウンドシールド)が吹き飛ぶ。畜生、腕が痛いじゃないか! だけど魔法ばかりは避け得ない。あの<<魔法矢(マジックミサイル)>>は回避など不可能だ。「食らってろ」と言いつつ、俺自身が食らっていては世話が無いが仕方ない。

 俺はコマ送りで見えるオーガの棍棒をかわしつつ、奴の懐に飛び込んだ。この間合い、殺った! 俺はオーガの汚れた喉笛に長剣(ロングソード)を滑らせる。赤い血を勢い良く噴出しつつ、驚愕の瞳で俺を見るオーガ。


「おとなしく経験値になりやがれ!」


 止めとばかりに俺はオーガの背に第二撃。噴出す返り血と共に、俺は勝利を確信する。どう、と倒れ伏す音と共に、勝負はついたのだ。しかし、オーガが魔法とは……この世界、どうなっている!? ただのゲーム的ファンタジー世界だと油断していたのかもしれない。俺の考えが甘すぎたのか? 俺は、もっとこの世界について知る必要がある──。


「うらーーーーーーーーーー!」


 奇妙な叫びはユーノの雄叫びだ。戦斧(バトルアックス)が乱れ飛び、アリサの連接棍(フレイル)も鈍くきらめいた。その度にゴブリンが一匹一匹と沈んでゆく。俺も負けじと切り込む。考えるより早く足が動いていたのだった。もしゴブリンが魔法を唱えたら? そんな事、考えたくも無い!


 とにかく頑張れ俺! 俺はあの召喚師の爺様から世界を託されたのだから!

登場人物紹介

セネシェ  Hum-N-Sam 肉体年齢15歳 男性 ソードマスターLv.3

アリサ   Hum-G-Pri 肉体年齢15歳 女性 ハイプリーステスLv.3

ユーノ   Dwa-G-Fig 年齢不詳   女性 ウォーリアLv.4

受付嬢   Hum-?-??? 年齢不詳   女性 冒険者ギルドの受付嬢のお姉さん

爺様    Hum-N-Mag 享年85歳   男性 故人 ウォーロックLv.不明

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